ムエタイで”地獄”を生き抜いた男! 刑務所最狂...。絶対、タイで悪さはしません<連載/ウワサの映画 Vol.62>

Walkerplus

2018/11/30 08:00

あぁ、本気でしんどかった…、イギリス人ボクサーの実話を映画化した「暁に祈れ」。タイの刑務所の実態を映す弱肉強食の極限世界が、想像を超えるボディブロー効果なのよ…。主人公のアウトローっぷりも激しいもんだから、過剰な共感や同情に邪魔されず、善悪の次元での思考も停止。ひたすら”観て受け止める”ことに集中させる、意外にもぜいたくな映像体験です!

主人公は、人生の再スタートを切ろうとタイにやって来た、イギリス人ボクサーのビリー・ムーア(ジョー・コール)。しかし彼は、自堕落な生活を送るうちに麻薬中毒に。ある日、警察から家宅捜索を受けたビリーは逮捕され、悪名高いチェンマイの刑務所に収監されてしまいます。そこはレイプ、殺人、汚職が横行するこの世の地獄のような場所! 死と隣合わせの日々を過ごすビリーでしたが、所内で活動する「ムエタイチーム」との出会いが彼を変えていきます。レディボーイのフェイムとひと時の恋に落ち、外国人選手として初めて刑務所内で行われる全国大会への出場も決定。しかし、彼の肉体は長年の不摂生により蝕まれ、さらに牢名主・ゲンがファイトマネーを目当てに借金の取り立てにやってくる…。戦わなければ命はない状況の中、大会当日、ビリーは全てを賭けてリングに立つのですが…。

リアリティへのこだわりこそが本作の勝因! 主要キャストを除く出演者は、元囚人(ほとんどが殺人か麻薬所持で10~20年の刑期)やムエタイの世界チャンピオンたち。彼らが本物の刑務所に集結して撮影してるんです。すし詰め状態の監獄で汗ベッタベタの体を密着させて眠る囚人たち、再出発の機会を自ら葬るかのように刑務所でタトゥーを入れまくる囚人たち(演者のタトゥーは自前!)…、すべてが実録。レイプされたりで自殺者も出る修羅場を、中庭の仏像(セットじゃないよ)が見守る光景がシュールすぎるわー。そんな中で、不良の更生手段となるなど社会的役割も大きいムエタイが、スペシャルな”光”キャラになってます。

外国人が異国で刑務所送りになる…、よりによってタイで(泣)。 言葉がわからないからルールもわからず、人間扱いもされない…。字幕の少なさや、生死の境で研ぎ澄まされる感覚にフォーカスした演出(特に音響)が、そんな不安と恐怖を最大級にあおってきます。視線や身体から実体験の重みを発散してる元囚人陣も迫力あるし、もう、観てるだけで疲労困憊…。

我々にビリーの”ギリギリ感”を体験させるジョー・コール君の、ドキュメント調の展開を飽きさないパフォーマンスも見事! くすんだ世界で異質感を放つ生白くて強靭な肉体、碧くうるんだ瞳、紅い唇…。セリフも少ない中、”存在”そのもので勝負してる。役柄と同じくアウェイな撮影現場で ”この役を生きた”ような感情&肉体の変化は、終盤の壮絶なファイト・シーンに結実! 残虐さと脆さを抱えるビリーの矛盾に胸が潰れるかと思った。久々のサンドバックに何かをぶちまけてすがる姿は、ズルいくらいに人間味にあふれてたなー。

お経が響く導入シーンの厳粛さとは正反対の、衝撃的なタイの混沌…。神秘性をも宿した世界観を、ぜひ”本能”で味わってほしい。ラスト数秒、ビリー・ムーアご本人の意味深な役での登場に米粒みたいな希望を感じ、米粒程度は心が軽くなった(笑)。とにもかくにも…、タイで捕まるのだけはゴメンだわ。【東海ウォーカー】

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!  最近のお気に入りは「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(12月28日公開)の三浦春馬!(東海ウォーカー・おおまえ)

https://news.walkerplus.com/article/170595/

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