突然の”三国志談義”にもスマートに対応! サクッとわかる『三国志』入門講座

日刊サイゾー

2018/11/21 17:00


 日本人が大好きな歴史マ

ンガの代表作といえば、なんといって横山光輝先生の『三国志』、通称“横山三国志


すよね。『三国志』こそニッポンのビジネスマンの嗜み、とばかりに日経新聞が“横山三国志”をネタにしたCMを展開したりしており、知っている人には笑えるが、知らない人にはなんのことやら、という状況になっております。

僕自身の経験でいえば、飲み屋で同僚たちが急に熱い三国志談義を始めて、『三国志』を知らない僕は置いてけぼり。一人でエイヒレをつまみながらハイボールをひたすら飲むという状況に陥ったり、いきなり孔明のLINEスタンプを送りつけられて困惑するなどの経験をしています。こういった“三国志デバイド”な悲劇をこれ以上生まないためにも、今回は誰でも簡単に『三国志』を理解できるようになるための解説をしたいと思います。

そもそも“横山三国志”とはなんなのか? “西川三国志”もあるのかというと、そんなものはありません。中国には魏・呉・蜀(ぎごしょく)の三国時代(西暦184~280年)について書かれた「三国志(正史)」という歴史書がありまして、その正史をベースに蜀の皇帝・劉備(りゅうび)を主人公とした「三国志演義(えんぎ)」という小説が存在するのです。

日本では、この「三国志演義」にインスパイアされた作品が多く、吉川英治先生の小説『三国志』や光栄(現・コーエーテクモゲームス)のシミュレーションゲーム『三國志』などが人気となるわけですが、小説版『三国志』を元に、子どもでも楽しめるようにマンガ化して圧倒的支持を得たのが、横山先生によるマンガ版『三国志』なのです。とりあえず“横山三国志”さえ読んでおけば、三国志関連の知識はなんとかなります。

そうはいっても単行本が60巻、初心者が全巻そろえて読むにはかなりハードルが高い作品です。今回はその“横山三国志”を挫折せず楽しむために必要最小限の、上っ面の部分をご紹介していきたいと思います。以降、本稿では『三国志』=横山三国志のことです。

まず『三国志』のストーリーを非常に大ざっぱに説明しましょう。主人公は劉備(りゅうび)。母と2人暮らしで筵(むしろ)や草履(ぞうり)などを作っては売って生計を立てる底辺層の青年でしたが、当時民衆を苦しめていたヒャッハーな悪い奴ら、黄巾賊を倒すために立ち上がります。そこで出会った関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)という超絶ケンカが強い2人の豪傑と意気投合し、3人で義勇軍として闘っていくうちに、戦国武将としてメキメキと頭角を現し、三国のうちの一国「蜀」を建国。そして、その後になんやかんやで蜀が滅亡するまでを描いたマンガです。

■とりあえず知っておきたい、三国志の主要登場人物9人


 三国志には無数にキャラが登場します。当然ながら、覚えれば覚えるほどドップリと三国志ワールドに浸れるのですが、今回の目的はあくまでも世間に話を合わせるためのにわか知識をつけることが目的ですので、とりあえず最重要な9人だけを押さえておきましょう。

劉備…ご存じ、本作品の主人公にして絶対的センター。ほかの武将に比べて、武力も知謀も秀でているわけではなく、出世欲もそんなになく、いまいちパッとしない感じですが、民衆思いで、仁義を重んじ、裏切りや卑怯な行いを絶対やらないというスタンスを貫くため、劉備を慕って三国志を代表するスター武将たちがどんどん集まってきます。このカリスマ性こそが劉備の持つ特殊能力なのです。

張飛…「桃園(とうえん)の誓い」によって義兄弟となった、劉備・関羽・張飛の桃園三兄弟の末弟で、劉備のカリスマ性に最初に気づいた人物。酒癖が悪く短気で、問題行動が多いのですが、いざ戦いになると一人で千人分の力があるといわれる「一騎当千」状態になります。とにかく信じがたい強さを見せる三国志最強武将の一人です。

関羽…桃園三兄弟の次男。張飛と同等レベルの強さを持つ上、頭脳明晰な人格者で、暴走機関車のような張飛をいさめられる数少ない男ということで、トータル的には張飛よりも高評価されている武将です。劉備は初期の段階で、関羽・張飛という三国志界有数の最強武将2人を部下にできたことが超ラッキーといえます。こんなご都合主義な展開は、ジャンプのマンガでもあんまりないです。

曹操(そうそう)…劉備にとって、最強にして最大のライバルといえば曹操。アムロに対するシャア、ケンシロウに対するラオウみたいな存在です。若い頃から戦術の天才と呼ばれ、三国のうちの一国「魏」を建国。常に中華統一の野望でギラギラしており、スキあらば劉備を潰してやろうと思っています。性格的には劉備とは真逆で、冷酷非道でズル賢いイメージがあり、作品中でもヒールとして扱われています。

呂布(りょふ)…三国志前半の最強キャラ。張飛や関羽でさえ、全盛期の呂布には勝てませんでした。とにかく鬼のように強いのですが、オツムのほうはめっぽう弱めで、文官にそそのかされて軽率に行動しがちです。劉備をはじめとする自分を助けてくれた恩人に対してもすぐに裏切る、超スーパー裏切り者キャラでもあります。最後は貂蝉(ちょうせん)という三国志を代表するハニートラップ美女にハメられた挙げ句、曹操に殺されます。

孔明(こうめい)…劉備率いる蜀軍の軍師として活躍する人物で、三国志における事実上の2代目センター。その存在は、ほぼネ申といえます。なにしろ、孔明の考えた作戦はほぼ100%成功し、敵に壊滅的な被害を負わせる上、誰々がいつ頃死ぬ、みたいな予言までできてしまうので、敵味方含め、みんな孔明の神業にビビりまくり。

それまでは、「力こそパワー」みたいな武力によるバトルが中心だった『三国志』が、孔明の登場を機に、頭を使って作戦で勝つという頭脳戦中心に変わっていくため、作品としてもがぜん面白くなっていきます。『三国志』の前半を読んであまりハマれなかった人でも、孔明が出てくる21巻ぐらいまでは頑張って読むことをオススメします。

趙雲(ちょううん)…劉備率いる蜀軍で、張飛・関羽に次ぐ第三の最強武将が趙雲。張飛・関羽だけでも十分最強なのに、さらにもうひとり最強武将が追加されるという恐るべき層の厚さ。プロ野球で言ったら、バース・掛布・岡田がいた頃の阪神タイガースみたいな感じでしょうか。この趙雲は、張飛や関羽が年老いてだんだん出番が少なくなってくる中盤から後半にかけて輝く存在です。

孫権(そんけん)…三国のうちの一国「呉」の皇帝となる人物。呉のイケメン軍師、周瑜(しゅうゆ)率いる水軍を使った攻撃が得意です。劉備や曹操に比べると脇役っぽいポジショニングですが、3人の中では一番長生きしたのが孫権でした。

孫権を覚えるついでにといってはなんですが、孫権の父・孫堅や兄・孫策も三国志における重要キャラクターですので、まとめて覚えておいて損はありません。

司馬懿(しばい)…作品後半に出てくる魏の軍師。最強すぎて神状態だった孔明に唯一、対抗できたのが司馬懿です。劉備や曹操が病死した後、蜀は孔明、魏は司馬懿が率いることになるのですが、孔明と司馬懿の頭脳対決は『三国志』後半の最大の見せ場といえます。

正直なところ、司馬懿も孔明の神がかった戦術にはやられっぱなしで、3:7ぐらいで孔明が圧勝しているのですが、孔明が途中で病死してしまうため、最終的に試合に負けて勝負に勝つ感じで、美味しいところを持っていく存在となります。

こんな感じで独断と偏見で9人だけに絞り込んでしまうと、三国志好きの面々からは、なんだよ、董卓(とうたく)や于禁(うきん)を知らないのかよ、モグリだな! などと批判されてしまうかもしれません。そんな時は、「ああ于禁、アニメ版ではなぜか女だったあの于禁ね!」とかテキトーなトリビアを混ぜつつ相槌を打っておけば、なんとかなるでしょう。

■三国志好きが言いがちな有名イベント、用語


 三国志談義にいっちょ噛みするためには、人物だけでなく、ある程度の有名イベントや用語を理解しておく必要があります。とりあえず下記のキーワードを覚えておくと、ちゃんと『三国志』読んでる感が出せるのでおすすめです。

桃園の誓い…劉備が関羽、張飛という超絶ケンカに強い2人の豪傑と意気投合し、「桃園の誓い」という「オレたちの絆は一生、死ぬ時は一緒」みたいなブラザー感あふれる義兄弟の契りを交わした『三国志』初期の有名イベントです。

この契りは、3人の義兄弟の固い絆を示す美しいエピソードとして語られることが多いのですが、作品後半で関羽が死んだ後、張飛や劉備は冷静さを失い、後を追うように死んでしまうことから、個人的にはむしろ、何かの呪いの一種なんじゃないかという気がしないでもないです。

三顧の礼…劉備が天才軍師・孔明を自分の軍にスカウトするために、何度も孔明の家に出向き、一度目は不在、2度目も不在、3度目になってようやっと孔明に会うことができたのですが、孔明はわざわざ3回も会いに来てくれた劉備に感激して仲間になってくれたというエピソードです。ビジネス書なんかを見ると、「三顧の礼」の精神こそ究極の営業術だ! みたいなことが書いてありがちですが、今はスマホもありますし、ちゃんとアポを取って会いに行くべきだと思います。

赤壁(せきへき)の戦い…基本的に『三国志』は、最大勢力である曹操の魏軍をいかにやっつけるか、劉備の蜀軍や孫権の呉軍がいろいろと頭を悩ませる話ですが、最強であるはずの曹操が、一度完膚なきまでにやられてしまう有名エピソードが「赤壁の戦い」です。

曹操率いる魏軍が、呉軍の火計によってボッコボコにやられてしまうのですが、その決め手となったのが、孔明が儀式によって呉軍に有利な「東南の風を吹かせる」というものでした。実際には、孔明はこの時期に東南方向に強風が吹くことを知っていたのですが、わざわざ祭壇で儀式をやって、さも孔明が神風を起こしたように思わせたのです。こんなスーパーイリュージョンを見せられたら、誰もが孔明のことを神だと思っちゃいますよね。

孔明の罠…中華全土の武将や軍師たちを戦慄させるのが「孔明の罠」です。とにかく孔明は敵の作戦の裏の裏の裏の裏ぐらいまで読んだ上で、トリックを仕掛けてくるので、敵はほぼ100%の確率でまんまと孔明’sトラップにやられてしまうのです。孔明に対峙する相手は、何度も罠にハメられているうちに疑心暗鬼になってしまい、“孔明のことだから絶対何か罠を仕掛けている”と考えて身動きが取れなくなってしまうのです。

ちなみに、後半に出てくる孔明の最大のライバル、司馬懿の「待てあわてるな、これは孔明の罠だ」というセリフはLINEスタンプになるほど有名です。

「ジャーンジャーンジャーン」「むむむ」「げえっ」…この3つは『三国志』の頻出フレーズです。「ジャーンジャーンジャーン」というのは、敵に攻撃を仕掛ける際に、ドラを一斉に鳴らして相手を混乱させる時の音です。「むむむ」と「げえっ」は作品中の有名武将たちがこぞって言うセリフで、用途としてはそのまんまなのですが、ネタとして「むむむ」と「げえっ」がやたらに多いマンガだということは知っておいたほうがよいでしょう。

■劉備玄徳? 諸葛亮孔明? 呼び名の謎


 ネット上の三国志関連の記事を見ていると「劉備玄徳」とか「諸葛亮孔明」という表記を見かけます。劉備が名字で玄徳が名前だから当然でしょ? と思うかもしれませんが、実はこれは間違いです。

当時の中国人の名前は「姓・名・字(あざな)」と分かれているのが一般的で、「劉・備・玄徳」や「諸葛・亮・孔明」のように分割されるのですが、TPOに合わせて「姓&名」か「姓&字」の組み合わせで呼ぶのがルールなのです。

『三国志』では特に解説もなく「劉玄徳」とか「諸葛孔明」「諸葛亮」などの呼び方が出てくるので、誤植かな? と思ってしまうのですが、実はこれが正しい表現なのでした。「劉備玄徳」とか「諸葛亮孔明」とか得意げに言っちゃってる人は実は間違っているので、心の中でほくそ笑んでやるのがいいと思います。

というわけで、時間がない人が上っ面だけ知るための、横山光輝『三国志』入門講座でした。これで、突然の同僚の三国志談義にもバッチリ対応できるはず……なのですが、曹操が主人公のマンガ『蒼天航路』の話をされると全然通用しないことが先日判明しましたので報告しておきます。こういう時は「孔明の罠」だと思ってあきらめるしかありませんね。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

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