次期型GT-Rに求められる戦略とは? どうやって戦っていくべきなのか【ニッサンGT-R NISMO試乗・後編】

clicccar

2018/11/18 18:03


前編では、元某メーカーのシャシーエンジニアの端くれだった筆者が考える『GT-R NISMOの公道での楽しみ方』をご紹介しました。

今回の後編では、このGT-R NISMOの公道での楽しみ方を引き続きご紹介するのとともに、筆者の『次期型GT-Rに向けた願い』を、お伝えできればと思います。

【GT-R NISMOの楽しみ方③スイートゾーンにはまったときの「走る・曲がる・止まる」】

ワインディングで「自分のスキルの範囲内でコーナリングを楽しんでみよう!」と試みました。

GT-R NISMOの加速力は、まるで「ロケット花火が着火した瞬間」のよう。恐怖を感じる程の加速力で、筆者は、アクセルペダルは50%も踏むことができませんでした。この「恐怖」を感じる前に、「ドンッ」とブレーキを踏めば、思いのほか柔らかく減速Gが立ち上がり、スピードは落ちていきます。

そして、車速を落としつつ、コーナーに向けステアリングを切ってアプローチすれば、クルマは「ビタッ」とコーナー内側のラインに沿って、路面へ張り付くように曲がっていきます。

レーサーでもなく、超熟練のテストドライバーではない筆者であっても、一連のコーナリングの流れが、自身のスキルの範囲内で「スイートゾーン」にぴったりとはまると、なんと気持ちの良いことか。

もちろん「GT-R NISMO」ですから、アクセルやブレーキ、ステアリングの運転操作をラフに扱ってしまえば、クルマは手を付けられなくなってしまいますが、自らを律してドライビングをすれば、その「面白さ」は、公道であっても存分に感じることができます。

【GT-R NISMOの楽しみ方④「心地良い疲労」を全て受け入れる】

GT-R NISMOに乗ると、上記の様に心地よくなる反面、とてつもない「疲れ」を感じます。これはもはや、「筋力トレーニング」に近いものがあります。絶えず路面から受ける上下の振動や、左右方向に振られた際にシートから受ける「バシバシ」といった強めの「突っ込み」が常に乗員を襲います。

そのため、「公道を軽く流す」なんていう運転のように、長時間乗り続けることは少なくとも筆者にとっては体力的に難しく、たまに停車してクルマを眺めてはまたクルマに戻る、といったことをする必要がありました。

2014年のマイナーチェンジで音振対策が織り込まれ、改善されているようですが、それでもキャビンに侵入してくる大き目のロードノイズと特大のギアノイズは、「疲労」をさらに増大する要因のひとつとなっています。

これらを許容し、あたりに負けない「体力」を持ち合わせたオーナーこそが、この「プレミアム・スーパースポーツ」ことGT-R NISMOには似合うのかもしれません。

「GT-R NISMO。ワークスチューンでしか到達できない速さと歓びがここにある」という、日産のカタログの世界を体験しようにも、本領発揮はサーキットのような所でしかできませんし、たとえサーキット走行ができたとしても、私を含む一般ドライバーのスキルでは、このクルマの本領は到底引き出すことはできません。

それでも、今回の公道試乗を通して、その「歓び」の片鱗は垣間見ることができました。「冷や汗」をかいた後にドッと出る「アドレナリン」を、これまで乗ったクルマの中では一番強く感じることができました。

その反動で、試乗後は、緊張のためか、身体中に疲労がたまり、ぐったりとしてしまうくらいでしたが、もし、またお借りできるのであれば、「身体が疲れきるまで乗り倒してみたい」と思います。

ちなみに、今回の試乗コースは、一般道が8割、ワインディング走行2割、総移動距離170kmに対して給油量が26Lですから、今回の実燃費は6.5km/L(GT-R NISMOのカタログ燃費は記載なし)。同じ時期に同じルートを走行したフェアレディZは6.7km/Lですから、ほぼ同じような数字になりました。

R35型のGT-Rが登場したのは2007年12月。すでに発売開始から11年が経とうとしています。毎年、少しずつリファインがなされていて、内外装デザインやエンジンチューニング、ミッション、足回りなど、その瞬間の需要に合わせて、開発が継続されてきました。

R35の立ち上げ当時、水野和敏氏の陣頭指揮によって、日産社内でも抜きんでたエンジニアが招集され、「自ら動ける曲者集団」に育て上げられた彼らは、そこらのエンジニアとは一線を画す『別世界』のエンジニア集団でした。私の先輩もそのチームへ呼ばれていきましたが、「必要ない」と判断されると、即日、チームをクビになって戻ってくるくらいに厳しいものでした。

今ではそこにいた精鋭達は散り散りになってしまったでしょうが、当時のGT-R開発メンバーは、「クルマを作るにはヒトを育ててから」という水野氏の言葉の通り、各々のエンジニアが自信にあふれて見えたのを覚えています(※当時、筆者も新車開発エンジニアでした)。

さて、「次期型GT-R」は登場するのか……。仮に新型GT-Rを登場させたとしても、世間をどよめかせるほどのインパクトを持たせられるのか。筆者は「今のままではできない」と考えます。

ご存知の通り、日産にはフェアレディZとGT-Rという2台のスペシャリティカーがあります。

両者は「過去の栄光を大切にする古典的FRスポーティーカー、フェアレディZ」と「速さ=正義とするハイパフォーマンスカー、GT-R」として、その位置づけは明確に分けられており、そのクルマ開発に求められる「エンジニアリングの質」は大きく異なります。

スケジュールに従って黙々と開発作業を行う『サラリーマンエンジニア』集団では、フェアレディZは開発できても、「皆の期待に応えられる新たなGT-R」は完成しないのではと思います。

個人的な見解ですが、今は「GT-Rブランド」の体力を温存すべき、と筆者は考えます。日産には不思議なもので、数年毎に「ブレークスルー」が起こります。そのタイミングに備え、「GT-Rを一時生産終了」する、もしくは、「年間生産台数を制限して限定販売制にする」方が良いかもしれません。

日本を代表する「GT-R」を自然消滅させないためにも、こうした英断も一つの方法だと考えます。

(文:吉川賢一/写真:鈴木祐子、藤野基就)

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