料理家のキッチンと朝ごはん[1]後編 調理実習台が主役。道具・器は長く使えるいいものだけを集めた

SUUMOジャーナル

2018/11/16 07:00

料理家のキッチンと朝ごはん[1]後編 主役は調理実習台。道具・器は長く使えるいいものだけを集めた
スタイリングもこなす料理研究家として、雑誌や書籍でさまざまなお菓子のレシピを提案している桑原奈津子さん。前回は、定番の朝ごはんとそのつくり方についてお聞きしました。今回は、桑原家のキッチンと、愛用している調理道具や器について、お話を伺います。【連載】料理家のキッチンと朝ごはん
料理研究家やフードコーディネーターといった料理のプロは、どんなキッチンで、どんな朝ごはんをつくって食べているのでしょうか? かれらが朝ごはんをつくる様子を拝見しながら、美味しいレシピを生み出すプロならではのキッチン収納の秘密を、片づけのプロ、ライフオーガナイザーが探ります。
築55年の戸建をリノベーション。月日を経て味わいを増すキッチン

「工場や学校っぽい雰囲気が好き」だという桑原さん。キッチンツールや家具なども、無駄な装飾を省いた業務用のものが好みだそうです。けれども、桑原さん宅のキッチンは「業務用」という言葉からイメージされる無骨さとは無縁の、あたたかみのある雰囲気。
窓枠には、自家製の梅干しやフルーツのシロップ、空き瓶や保存容器などをディスプレイするように並べて収納。インテリアとしてキッチンになじんでいます(写真撮影/嶋崎征弘)
窓枠には、自家製の梅干しやフルーツのシロップ、空き瓶や保存容器などをディスプレイするように並べて収納。インテリアとしてキッチンになじんでいます(写真撮影/嶋崎征弘)
あたたかな日が差し込むダイニングスペースには、雑種のキップル(左)、ハチワレ猫の小鉄(右)、黒猫のクロ(出演拒否)のふかふかベッドが仲良く並んでいました(写真撮影/嶋崎征弘)
あたたかな日が差し込むダイニングスペースには、雑種のキップル(左)、ハチワレ猫の小鉄(右)、黒猫のクロ(出演拒否)のふかふかベッドが仲良く並んでいました(写真撮影/嶋崎征弘)

12年前にリノベーションした築55年の一戸建ての窓枠や柱などを、当時のまま残していることが、ぬくもりを感じさせる一因のようです。そこに、てらいのないスタイリングを得意とする桑原さんの手が加わることで、甘すぎないけれども穏やかでほっとする、独自の世界観が築き上げられていました。
「クリナップ」の調理実習台。大勢で使うことを前提でデザインされたシンクは、手前からでも横からでも洗い物ができる仕様。作業台下の収納スペース奥側にはボウルなどの調理道具、手前には「無印良品」の密閉ボックスを並べ、小麦粉や砂糖のストックを収納(写真撮影/嶋崎征弘)(写真撮影/嶋崎征弘)
「クリナップ」の調理実習台。大勢で使うことを前提でデザインされたシンクは、手前からでも横からでも洗い物ができる仕様。作業台下の収納スペース奥側にはボウルなどの調理道具、手前には「無印良品」の密閉ボックスを並べ、小麦粉や砂糖のストックを収納(写真撮影/嶋崎征弘)

桑原家の家具やキッチンツールの大半は、素材がステンレスもしくは木、色は白でそろえられています。すべてのものを同じタイミングで集めたわけではないのに、素材感や色が統一されているから、ものを出しっぱなしにした「オープン収納」を取り入れていても、キッチン全体がすっきりと、まとまって見えます。
ステンレス製キッチンと調和する、淡いグレーの背面カウンターは「校庭にあった水飲み場のイメージ。小石を混ぜて固めたセメントを、職人さんが手作業で研ぎ上げてくれました」。使い込むほど味の出る素材です(写真撮影/嶋崎征弘)
ステンレス製キッチンと調和する、淡いグレーの背面カウンターは「校庭にあった水飲み場のイメージ。小石を混ぜて固めたセメントを、職人さんが手作業で研ぎ上げてくれました」。使い込むほど味の出る素材です(写真撮影/嶋崎征弘)

「調理台にも背面カウンターにも引き出しが少ないので、新たに引き出し付きのワゴンを買い足しました。仕事場っぽい雰囲気にしたかったので、家具より工具入れが合うのではないかと思って、ネットで探しました。キッチンまわりの細々としたものを整理するのにとても便利ですよ」
「トラスコ」の「エースワゴン」にスパイスやカトラリー、トングなどを収納。同行のカメラマンさんいわく、「フォトスタジオでもよく使われているスチールワゴンです。ぼくもほしい」そうです(写真撮影/嶋崎征弘)
「トラスコ」の「エースワゴン」にスパイスやカトラリー、トングなどを収納。同行のカメラマンさんいわく、「フォトスタジオでもよく使われているスチールワゴンです。ぼくもほしい」そうです(写真撮影/嶋崎征弘)

最初にリノベーションを行ったのは12年前ですが、その後も少しずつ手を加え続けている桑原家。「収納スペースの中に取り付ける予定だった固定式の棚板は、あえて2年ほど設置しなかったんです。実際に使ってみて、ここだと確信できてから取り付けを依頼しました」。3年前には、本格的な修繕工事も実施。当時予算の都合などもあり、建築家と相談のうえ後回しにしていた外壁や屋根などに手を加えたそうです。
ウォールナットのダイニングテーブルは190 x 100cm。テーブルに合わせた6脚のチェアはすべてデザイン違い。アメリカの工場用の照明は、アンティークショップで見つけたもの(写真撮影/嶋崎征弘)
ウォールナットのダイニングテーブルは190 x 100cm。テーブルに合わせた6脚のチェアはすべてデザイン違い。アメリカの工場用の照明は、アンティークショップで見つけたもの(写真撮影/嶋崎征弘)
ダイニングテーブル背面に置いた白い飾り棚は、桑原さんが大学生のときに買ったもの。「薬棚のようなたたずまいが気に入っています」。前面がガラス扉なので、美しいコーヒーカップやティーポットなどを飾りながら収納(写真撮影/嶋崎征弘)
ダイニングテーブル背面に置いた白い飾り棚は、桑原さんが大学生のときに買ったもの。「薬棚のようなたたずまいが気に入っています」。前面がガラス扉なので、美しいコーヒーカップやティーポットなどを飾りながら収納(写真撮影/嶋崎征弘)
気に入ったものを長く大切に使うことで、自然と生まれた”統一感”

前回、桑原さんが朝ごはんをつくる際に使用したキッチンツール一式はこちら。「気に入ったものは長く使うほうです。ゆで卵をつぶすのに使ったザル、野菜の水切りに使ったサラダスピナーは、わたしの実家で使っていたものを譲り受けました。20~30年以上前のものなので、残念ながらメーカーや商品名は分かりません……」
画像の上、2本は「ウェンガー」のブレッドナイフとスナックナイフ。右のゴムベラは、継ぎ目のない一体型を愛用。中央の小さなボウルは調味料や食材をちょこっと入れるのに便利なので、たくさん持っているそうです(写真撮影/嶋崎征弘)
画像の上、2本は「ウェンガー」のブレッドナイフとスナックナイフ。右のゴムベラは、継ぎ目のない一体型を愛用。中央の小さなボウルは調味料や食材をちょこっと入れるのに便利なので、たくさん持っているそうです(写真撮影/嶋崎征弘)

朝ごはんに合わせる水出しコーヒーは多めにつくって、冷蔵庫にストックしているとのことでしたが、「紅茶も多めに淹れて、冷蔵庫にストックしています。水出しコーヒーと同じように、アイスで飲みたいときはそのまま、ホットで飲みたいときは電子レンジで温めればいいだけなので手軽ですよ」。
コーヒーは「KINTO」のジャグに、紅茶は「HARIO」のティーサーバーにストック。コーヒーはストックを切らさないようジャグを2本使い、「1本がなくなりそうになったら、もう1本つくるようにしています」(写真撮影/嶋崎征弘)
コーヒーは「KINTO」のジャグに、紅茶は「HARIO」のティーサーバーにストック。コーヒーはストックを切らさないようジャグを2本使い、「1本がなくなりそうになったら、もう1本つくるようにしています」(写真撮影/嶋崎征弘)

水出しコーヒーは「iwaki」のウォータードリップサーバーで抽出しています。「サーバーの大きさが400mlちょっとなので、1本のジャグに2回分入れています。1回の抽出に4時間、2回だと8時間。時間はかかりますが、放っておくだけでできるので手間はかかりません」
お取り寄せしているコーヒー豆を、その都度「Bodum」のグラインダーで挽いて水出ししているそうです。時間をかけて抽出するため、苦みやエグみの少ない、さっぱりとまろやかなコーヒーが淹れられます(写真撮影/嶋崎征弘)
お取り寄せしているコーヒー豆を、その都度「Bodum」のグラインダーで挽いて水出ししているそうです。時間をかけて抽出するため、苦みやエグみの少ない、さっぱりとまろやかなコーヒーが淹れられます(写真撮影/嶋崎征弘)

「業務用」のキッチンツールのなかにも、桑原さんのお気に入りアイテムがあるそうです。例えば、あちこちで少しずつ集めたステンレスのメジャーカップは「計量するだけでなく、水分の多いものをすくったり、小さなボウル代わりに使ったり。多用途に使えるので便利です。無駄のないデザインで、見た目がシンプルなところも気に入っています」
お気に入りのメジャーカップの奥にあるスケールも業務用。「感度が高いので計量スピードが早く、精度も高いんですよ。業務用なので丈夫で、とても古いものですがまだまだ現役。壊れる気配はありません」(写真撮影/嶋崎征弘)
お気に入りのメジャーカップの奥にあるスケールも業務用。「感度が高いので計量スピードが早く、精度も高いんですよ。業務用なので丈夫で、とても古いものですがまだまだ現役。壊れる気配はありません」(写真撮影/嶋崎征弘)
砂糖・塩を入れている容器も業務用です。ステンレスふたの内側にある凸部分を本体ケースにひっかけると、ふたを開けたままにできるというスグレモノ(写真撮影/嶋崎征弘)
砂糖・塩を入れている容器も業務用です。ステンレスふたの内側にある凸部分を本体ケースにひっかけると、ふたを開けたままにできるというスグレモノ(写真撮影/嶋崎征弘)

工場や学校っぽい雰囲気が好きだとは言っても、「実用的なもの」ばかりではない桑原さんのキッチン。トースターの上に置かれた木製トングは、「はさみ型なのでトーストしたパンをはさみやすいんですよ。トングでトースターから取り出したパンは、木製トレーの上に置くと、溝にパンくずが落ちて散らからない仕組みなんです。かわいらしくて、いいでしょう(笑)」と、おちゃめに語ってくれました。
トーストだけでなく、お菓子やサラダをはさむのにも使いやすいという木製トング。よくあるステンレス製のトングよりあたたかみがあるので、テーブルにそのまま出してもスタイリングの邪魔になりません(写真撮影/嶋崎征弘)
トーストだけでなく、お菓子やサラダをはさむのにも使いやすいという木製トング。よくあるステンレス製のトングよりあたたかみがあるので、テーブルにそのまま出してもスタイリングの邪魔になりません(写真撮影/嶋崎征弘)
大好きな器を大事に収めるために設計した、天井まである大型収納

料理研究家という職業柄、桑原さんはたくさんの食器やグラス、スタイリング小物などをお持ちです。にもかかわらず、そういったものが出しっぱなしになっていないのは、シンク横に造り付けた大型タワー収納のおかげ。よく使う食器や調理道具はシンクのすぐ横の棚にまとめ、あまり使わない雑貨類は上の棚に保管しているそうです。
使用頻度の低いお菓子の型や木製トレーなどは、左側の棚に。スタイリング用に保管しておきたい小物のほか、あまり使わないホットプレートやたこ焼き機などは上段に収納。明確にゾーニングされていました(写真撮影/嶋崎征弘)
使用頻度の低いお菓子の型や木製トレーなどは、左側の棚に。スタイリング用に保管しておきたい小物のほか、あまり使わないホットプレートやたこ焼き機などは上段に収納。明確にゾーニングされていました(写真撮影/嶋崎征弘)

冷蔵庫のサイズに合わせて造り付けているため、収納スペースの奥行きは約70cmと深めです。奥行きが深いと食器棚としては扱いづらいものなのですが、桑原さんは手前に使用頻度の高いもの、奥側に使用頻度の低いものを収めることで、使い勝手をよくしていました。収めるものの高さに合わせて、棚板の幅が微調整されていることも、ものの探しやすさ、出し入れしやすさに直結しています。
グラス、マグ、平皿、小鉢、汁椀など、ジャンルごとにざっくり分類。お皿は似たサイズごとに重ねて収納しています。ココットや小さいグラスなど、こまごましたものはプラスチックのかごにまとめて取り出しやすく(写真撮影/嶋崎征弘)
グラス、マグ、平皿、小鉢、汁椀など、ジャンルごとにざっくり分類。お皿は似たサイズごとに重ねて収納しています。ココットや小さいグラスなど、こまごましたものはプラスチックのかごにまとめて取り出しやすく(写真撮影/嶋崎征弘)

「収納スペースがいっぱいなので、以前ほど食器を買わなくなりました。最近はお気に入りのショップに出かけても、見るだけのことが多いです。今使っているものが割れたり、欠けたりしたら、その分は買っていいことにしているんですが、食器って意外と丈夫で長持ちするんですよね(笑)。うちにあるものは、気がつくとどれも長いこと使っているものばかり。使い込むうちに愛着が増すように感じます」
「食器はまとめてそろえず、一枚ずつ集めてもいい」という桑原さん。おすすめは、「お皿なら、白い陶器のもの。磁器よりもあたたかみがあり、使うほどに味がでます。パスタでもカレーでも、おでんでも煮物でも、フルーツでも合いますよ」(写真撮影/嶋崎征弘)
「食器はまとめてそろえず、一枚ずつ集めてもいい」という桑原さん。おすすめは、「お皿なら、白い陶器のもの。磁器よりもあたたかみがあり、使うほどに味がでます。パスタでもカレーでも、おでんでも煮物でも、フルーツでも合いますよ」(写真撮影/嶋崎征弘)
グラスのおすすめは、「うすはりほど薄くないシンプルなタンブラーや、背の低いロックグラスのようなタイプが使いやすいと思います。ビールでもワインでも、お茶でもジュースでも、違和感なく使えます」(写真撮影/嶋崎征弘)
グラスのおすすめは、「うすはりほど薄くないシンプルなタンブラーや、背の低いロックグラスのようなタイプが使いやすいと思います。ビールでもワインでも、お茶でもジュースでも、違和感なく使えます」(写真撮影/嶋崎征弘)

よいものを長く大切に使いたいという想いが深い桑原さん。お母様から譲り受けたもの、大学生のころに買ったもの、アンティークショップで出合ったもの。桑原さんのキッチンには、時間をかけて集めたお気に入りがあふれていました。そのアプローチは、何年にもわたって手をかけ続ける家づくり、キッチンづくりにも表れています。

桑原さんのキッチンや愛用品を拝見し、そのお話を聞くにつれ、改めて「家づくりは急がなくていい」「いきなりゴールを目指さなくていい」のだと感じました。少しずつ積み重ねながら、時とともに味わいを増していく桑原家。ここから紡ぎ出される、素朴ながらも研ぎ澄まされたおいしいお菓子のレシピを、これからも楽しみにしています。
●前編はこちら
料理家のキッチンと朝ごはん[1]前編 オープン収納で取り出しやすく。桑原奈津子さんのサンドイッチレシピ●取材協力
桑原奈津子さん
広島市生まれ。幼少期をベルギーで過ごす。大学卒業後、カフェのベーカリー・キッチンを経て、大手製粉会社に入社。製菓・製パンメーカーへの試作・商品化に数多く携わる。その後、外資系の加工でん粉メーカーで研究職に従事。2004年独立、フリーの料理家に。著書に『小麦粉なしでかんたん、やさしい。お菓子とパン』(主婦と生活社)、『いっぴきとにひき』(大福書林)など多数。
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