コメディからシリアスまで 変幻自在の実力派俳優・太賀「誰しもが誰かにとってのかけがえのない人になれる」

AbemaTIMES

2018/11/16 10:30


 ドラマ『今日から俺は!!』で演じる紅高のツッパリ・今井勝俊の強烈な姿が印象深い太賀。11月4日に放送された第4話の直後には、「今井さん」がTwitterのトレンドワードのトップ10に入るほどの人気ぶりも見せた。監督を務めた福田雄一とは『50回目のファーストキス』に続いてのタッグとなり、コメディパートの太賀の卓越した演技に、涙が出るほど笑わされた観客も多いだろう。しかし、彼の真髄は最新主演作『母さんがどんなに僕を嫌いでも』で表現した、瞳の奥底に哀しみをたたえた演技にある。愛に飢えた青年の絶望、怒り、一縷の望み、強さを表現した太賀の表現力を堪能できる、渾身の一作だ。

歌川たいじによる実話原作を映画化した本作は、幼い頃より母親(吉田羊)からの容赦ない家庭内暴力に遭い、17歳で家を出たタイジ(太賀)が、やがて初めて心を許せる友人と出会い、母との新たなる関係を築くまでを描いた。迫真の演技で鬼の形相を見せる吉田を始め、軽やかで温かみのある演技の森崎ウィン、唯一救いの存在である木野花ら、実力派キャストの真ん中にしっかりと立った太賀の存在感が際立つ。「誰しもが誰かにとってのかけがえのない人になれる」と優しい眼差しで語った、本作に気持ちを込めた太賀のインタビューをお届けしたい。

悲しみを乗り越えようとする強い気持ちを描いた物語
――辛い涙、温かい涙の両方が流れるような作品でした。太賀さんはオファーを受けたとき、迷いはなかったのでしょうか?

太賀:  はじめ、台本を読んだときは「どうしようかな」というか、ものすごく壮絶な歌川さんの人生を「僕が演じきれるのかな」という思いがありました。割と不安な要素のほうが強かったんですけど、参考として原作も読ませてもらうと、歌川さんの描いた絵のタッチがものすごく温かくて、優しくて。活字だけで読むと、とても悲しい物語のように思えていたのに、原作を読むとそうじゃなくて、この悲しみを乗り越えようとする強い気持ちを描いた話なんだな、と思えたんです。だったら、自分が演じる糸口もあるかもしれないというのもあって。

――逡巡しながら、お引き受けになったんですね。

太賀:  そうですね。クランクインギリギリくらいまで、プロデューサーさんや監督と「どうしよう、どうしよう」となり、1回話し合いました。そこで役への向き合い方、どういうふうにこの原作を映画として成立させるのか、というところのお話をさせてもらって、すごく安心したというか。その会があったので、思い切れました。

こだわった「現実世界より10センチ浮いたような世界観」
――実際、現場に入って演じてみて、気持ちの面での難しさはありましたか?

太賀:  難しかった点で言うと、監督が常々「いわゆる現実世界より10センチ浮いたような世界観で、この映画を描きたい」と言っていたんです。それは、ある種ポップさとも言うし、リアリズムでいかないというか。「どちらかと言うと、漫画寄りの世界観でいきたい」と。これまで、僕自身はリアリティーを持って演じることを大事にしてきたので、なかなかその「10センチ」というものを埋める作業が難しくて。監督の演出のもと、いろいろ試しながらやっていき、無事撮影を終えました。

いざ完成してみたら、その10センチがものすごく重要だったんだな、と気付いたんですよね。というのも、物語自体はやはり壮絶なことを描いているのもありますし、それを乗り越える力みたいなものは、10センチがないとなかなか描き切れなかったというか、リアリティーだけでは埋まらなかったような気がして。やっぱり監督の言っていたことは正しかったんだな、と安心しました。

――あえて聞きますが、リアリティーと10センチの差は、言葉で表すとどういった感じなんでしょうか。すごく難しい表現になると思うんですが。

太賀:  どう違う、なんですかね…。演じていて、明確に「この動きは普段やらないと思うんですけど」ということを、「ここはあえてやってほしい」というようなことですね。そこで自分が生きていて、自分が考えて感じた感情では「こうはならないよな」というところと、監督のやってほしいことの違いがあったから、それをどうやって埋めようか、というか。ディスカッションしていく中で、折り合いをつけていって、あえてやってみることの正しさみたいなものは、完成作を観て思いました。もしかしたら、監督と僕ぐらいしかわからないような微妙な違いかもしれないんですけど。

――今回、タイジの幼少期を演じた小山春朋さんも絶妙なお芝居をされていて、太賀さんと合わせたのかなと気になりました。現場でご覧になったりしましたか?

太賀:  1日だけ行きましたね。あとは特に観ているわけでもなく、(芝居を)合わせるとかもしていませんでした。顔合わせで小山くんとお会いしたときに、本能的に「あ、いけるな」って(笑)。

――当事者同士には、ピンとくるものがあったんですね。

太賀:  はい。僕なりにあったので、意図して寄せるとか、寄せてもらうことはなかったですね。小山くんのお芝居は、笑顔が本当に素敵だなと思いました。とにかく。やっぱりその笑顔で救われるときも、グッと胸を締めつけられるときもあるし。その笑顔のバトンは何か引き継げられたらいいな、とは思いましたね。

母親役・吉田羊との壮絶な対峙「なんとしてでも、目の前にいるお母さんとつながりたいと思わせられた」
――タイジは吉田さん演じる母と凄まじいやり取りを繰り広げるわけですが、吉田さんとのお芝居は、いかがでしたか?

太賀:  素晴らしい女優さんだと改めて感じました。対峙していて、自分が家で台本を読みながら考えていた感情だったり、気持ちみたいなものの何倍も何十倍も引き出してもらえたと思います。羊さん自身が100%、…いや、120%で来てくれたので、それに応えなきゃ、という気持ちもありましたし。なんとしてでも、この目の前にいるお母さんとつながりたいなと思わせられたというか。逆を言えば、本当に傷ついたというか。当時はしんどい作業でしたけど、今思えば羊さんとそうやって一緒にやれたことが、幸せな時間だったなと思いますね。

――辛いシーンも多いですけど、それと同じくらい、心温まる要素も多い映画だと思います。特に仲間との海辺のシーン、おばあちゃんとのシーン、最後の場面あたりは忘れがたいです。

太賀:  そうですよね。タイジが悲しみを乗り越えることができたのは、やっぱり友人がいて、おばあちゃんがいて、そうやって寄り添ってくれる人たちがいたからこそ、お母さんと向き合うことができたっていう、やっぱり温かい話なんですよね。今日(※取材日)も完成披露があるから、朝、原作本をもう1回改めて読んで、本当に心温まるなと思ったばかりでした。そういう人と人が寄り添うことの大切さだったり、誰しもが誰かにとってのかけがえのない人になれるっていう。そういうことを描いた作品だと思います。

 映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』は11月16日(金)より公開

取材・テキスト:赤山恭子

撮影:You Ishii

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