TDLがパワハラ訴訟起こした女性キャストに「情報管理」口実の口止め要求! ディズニーの秘密主義がいじめを生む

リテラ

2018/11/15 17:20


「休むには代役を自分で見つけることが決まりだったので休みを取れず仕事を続けてきた」
「雨が降って着ぐるみが重くなっても、冬でも熱中症で倒れそうになっても続けてきた」
「グリーティングで指を反対に曲げられて怪我をしたが、上司からは『我慢しなきゃ』と言われた」
「過呼吸になり相談したら、『次倒れたらやめてもらう』と言われた」

“夢の国”での過酷な「過重労働」と「パワハラ」の実態が、法廷で語られた。

東京ディズニーランド(TDL、千葉県浦安市)でキャラクターコスチュームを着用してショーなどに出演していた契約社員の女性2人が、運営会社オリエンタルランドに対し、計約755万円の損害賠償を求め提訴したいわゆる「TDL着ぐるみ訴訟」。11月13日、千葉地裁で開かれた第1回口頭弁論において原告の2人が意見陳述を行った(オリエンタルランド側は請求棄却を要求)。

キャラクターの着ぐるみを着てショーやパレードに出演していた女性契約社員のAさん(29)と、勤務中にパワハラやいじめを受けていたとして、もう一人の女性契約社員Bさん(38)の原告2人は同日、千葉地裁での第1回口頭弁論に合わせて、会見を開いた。

Aさんは、キャラクターの着ぐるみを着てショーやパレードに出演していた。着ぐるみは重く(弁護団によると重いときで30キログラム)、十分な休息も取れない過密なスケジュールだった。2017年1月に「胸郭出口症候群」と診断を受け、同年8月、過度な業務による障害だとして労災認定された。症状が落ち着いてから職場に戻ったが、「まず謝れ」などと言われたという。そのため数日間は出勤したものの、出勤しようとすると涙が止まらなくなるなどし、現在は休職中で心療内科に通っている。

「自分では働く基準がわからず、大丈夫と思っていた業務量と内容で、過重労働と認定されました。再発の不安もあり、何度も会社側に交渉で改善を求めましたが、責任はないということでした」(Aさん)

一方、もうひとりの原告のBさんも、ディズニーで働くことが小さいころからの夢で、着ぐるみを着てパレードで踊るなどしていたが、2013年1月、ゲスト(来場客)により故意に右手薬指を反対側に折られたために負傷。しかし上司からは「君は心が弱い。エンターなんだから、それぐらい我慢しなきゃ」などと言われた。2016年1月6日、ショーの打ち上げの飲み会では、病気の相談をしたところ、ユニットマネージャーから「病気なのか。それなら死んじまえ」「30歳以上のババアはいらねーんだよ。辞めちまえ」などといった暴言をはじめ、上司や同僚らからいじめや暴言などを5年間にわたり受けてきた。

「毎日悪口が飛び交い、いじめに耐えられず辞めていく同僚もいます。そういうことが許されてしまっている職場環境で最高のパフォーマンスができるのかと疑問に思いました。最初は、ゲストの夢を守るために裁判を起こすことを本当に躊躇しました。しかし、何度上司に相談しても変わらず、いじめはひどくなっていきました。このまま耐えるだけでは、なにも変わらない。私はこの仕事が大好きでディズニーが大好きでこの先もずっと続けていきたいと思っている。現在も続いているいじめをなくし安心して働ける職場になってほしいと裁判に踏み切った」(Bさん)

2人の所属する労働組合「なのはなユニオン」は2017年1月から計6回の団体交渉で、休業補償の検討などを求めてきた。昨年9月、12月、今年1月の交渉では、原告への謝罪や治療費の支払いのほか、演技と演技の間に30分ほどのクールダウンの時間を設けることや、復職プログラムの提示、業務の質量の改善、衣装の軽量化などの職場環境改善を求めた。しかしオリエンタルランドは、労災認定は認めた一方で、会社として安全配慮義務を怠ったわけではないと主張。提訴に至っている。

弁護団は、オリエンタルランド側の対応に「被告は非常に頑なで、誠意をもって応じる姿勢が見られないのが現状」と疑問を表明。さらに、2人には裁判の直前、同社から信じがたい書面が届いたという。

〈キャストには情報管理の徹底に関する社内ルールを守る義務があります。改めて社内ルールをご確認頂きますようにお願いいたします。なお、訴訟での主張内容に制限を求めるものではありませんので、誤解のないよう申し添えます〉

ようするに、事実上の口止め要求だ。

●ディズニー側からの口止め通達でマスコミへの意見陳述書配布は中止に

この異常な要求に弁護団は「本来であれば、口頭弁論で行われた意見陳述の内容をみなさんに広く配布することも考えていた」が、「会社側のこれまでの姿勢を見ていると、それが新たな紛争になりかねない」という恐れもあり、「慎重に検討している」「原告も非常に悩んでいる」と明かした。このため意見陳述の配布はされず、会見でも原告の2人はおびえるように言葉を選びながら、時には涙ながらに、最小限の事実関係しか明らかにしなかった。

たとえばBさんはパレードの出演中に首を痛め労災認定されているが、この口止め要求のため、“どのキャラクターで、どのシチュエーションで”ということは明かすことができないとした。

しかも、ディズニー側からのこうした口止め要求・秘密体質はこれが初めてではない。Aさんが体を壊し医師の診療を受ける際も「(TDLの)守秘義務があるとして医師に業務内容を話すことも当初は止められていました」と明かしている。また「出演者という業務があることを外に出し、人々の夢を壊した」として「現場に戻ることは難しい」とされているという。

「着ぐるみじゃない」「中の人はいない」「ミッキーはひとりしかいない」などという“ディズニータブー”はよく知られた話だが、労働者の健康や生命に関わる場面でも“ディズニーの夢”とやらを優先させろというのだ。「訴訟での主張に制限を求めるものではない」と言ってはいるが、これでは法律よりディズニールールのほうが優先されると言っているようなもの。“夢の国”は治外法権とでも考えているのだろうか。典型的なブラック企業の思考である。

ディズニーの秘密主義は、ディズニーの夢を維持するためという大義名分のもとに社会的に批判がなされずにきたが、この秘密主義がいじめやパワハラ、過重労働などを生む温床・隠れ蓑となっているのは明らかだろう。

オペレーションの多くをアルバイトなど臨時雇用者が行っているディズニーリゾートは、大きな権限を与えられた準社員のリーダーのもと、強固なヒエラルキーのなかで働かざるを得ない。このため、いじめやパワハラも多く、バックステージでは、先輩キャスト、ゲストの悪口を仲間と言い合っている。こうしたストレスフルな実情が、記者のこれまでの取材でも明らかになっている。

●ディズニーの秘密主義がパワハラ・いじめ・使い捨て労働の隠れ蓑に

オリエンタルランドのいじめ、パワハラ体質について2人も次のように語っていた。

「閉鎖された空間で外部には関わらない、相談ができない職場環境ではいじめ、パワハラがなくならない」「社内の別の上司に相談しても、『昔からそういう場所だから』と」(Bさん)
「相談をする先の上司がパワハラにかかわっていると私は感じていたので相談をしたことはありましたが、それで状況がよくなるとは感じられたことはなかった」(Aさん)

オリエンタルランドは10月、2018年度上半期(4~9月)の東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの2パーク合計の入園者数が、計1551万8000人(前年同期比5%増)に達し、上半期としては過去最多を記録したと発表している。こうした業績を支えているのは、原告をはじめとする多くの非正規雇用者たちだ。

「(オリエンタルランドには)使い捨ての意識があるんじゃないかと正直、思います」とAさんは語った。

『9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方』(福島文二郎/KADOKAWA中経出版)によれば、オリエンタルランドの正社員数は約2000人だが、対してバイトの人数は約1万8000人。しかも、バイトは1年間で半分の約9000人が退職するのだというが、〈1年に3回くらい3000人近くのアルバイトを採用しなくてはなりませんが、推定で5万人以上の応募者が集まります〉と、使い捨てを自慢げに語っている。

また同書では、ディズニーの精神を叩き込まれたバイト女性が、母親から「ミッキーは何人いるの?」と問われた際、「何言ってるの。ミッキーは1人に決まってるじゃないの」と答えたというエピソードも、教育の賜物として披露されている。

“ディズニーの夢”というスローガンのもと、非正規雇用者たちを安く使い捨て、その労働実態の検証も許さない。過酷な労働の実態の解明・改善とともに、その隠れ蓑となっているディズニーの秘密主義への追及も求められる。
(小石川シンイチ)

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