安室奈美恵ラストDVDが売上の8割 「引退バブル」後のエイベックスはどうなる?

wezzy

2018/11/15 06:15


 9月16日の引退から約2カ月が経ち、安室奈美恵は表舞台から完全に姿を消したが、その影響力は強く残り続けている。

8月29日に発売された安室奈美恵のラストライブDVD&Blu-ray『namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~』は現在までに180万枚近くを売り上げた。これは音楽映像作品歴代1位の売上で、また、音楽映像作品では初めてミリオンを超えたタイトルとなっている。これまでの音楽映像作品歴代1位は、嵐が2009年にリリースしたミュージックビデオ集『5×10 All the BEST! CLIPS 1999-2009』で約90万枚だったが、ほぼダブルスコアの大差をつけてトップに躍り出た。

この驚異的な売上は、所属していたレコード会社のエイベックスにも大きな影響を与えている(安室奈美恵は2013年から引退までエイベックス社内のレーベル・Dimension Pointに所属していた)。

エイベックスは11月8日に2018年4~9月連結決算のデータを公表しているのだが、それによると、前年同期比146億円(+21.4%)の増収で、4~9月期としては過去最高の売上を記録したと書かれている。

その景気の良さをもたらしたのが、音楽事業の増収である。アニメ事業とデジタル事業では、それぞれ10億円と25億円のマイナスとなっているが、音楽事業は前年同期から175億円も増えた。そして、そのような音楽事業の躍進を支えた理由として業績報告書は<音楽事業においてパッケージ作品の販売が増加したこと等により増収>と記している。

では、どれほど増えたのか。音楽映像作品の売上データを見比べてみると、これが驚きの数字だった。
音楽映像作品は安室奈美恵効果で4倍以上の売上に
 前年同期の音楽映像作品の売上は49万枚だったのが、なんと215万枚へ驚異のジャンプアップ。『namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~』の売上は180万枚なので、エイベックスが売った音楽関連DVD&Blu-ray商品の8割を安室奈美恵作品が占めるということになる。しかも、音楽映像ソフトはCDシングルやアルバムに比べて単価が高いので(形態によって値段が異なるが『namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~』はだいたい8000円台)、その効果は大きい。音楽パッケージの売上は前年同期比で149億円も増えた。

これを見て思い出したのは、昨年11月8日にリリースした安室奈美恵最後のベストアルバム『Finally』のことだ。

このアルバムは、原盤権の問題なのか、ライジングプロダクションと契約していた時代(2015年1月まで)にリリースされた楽曲(収録された過去楽曲45曲中なんと39曲)がレコーディングし直されているなど発売前に微妙な話題があったものの、238万5000枚という驚異的なセールスを記録。ストリーミングがさらに主流となっていくこれからの音楽業界のことを考えれば、『Finally』は200万枚以上売り上げた最後のCDとなるであろう。そして、2017年の年間アルバムランキングでは当然のごとく1位に輝いている。

この『Finally』は、エイベックスがその期に売ったアルバムの4割を占めていた。今年5月10日に公開された2018年3月期通期業績説明資料を確認すると、エイベックス全体でのアルバムの売上は、前年同期比で168万枚増えた567万8000枚。要するに、エイベックスの売ったアルバムのうち約4割が『Finally』だったのだ。

この数字がいかにすごいのかは、他のアーティストと比べてみるとよくわかる。『Finally』と同じ時期にエイベックスからリリースされたアルバムで次に売れたのはKis-My-Ft2の『MUSIC COLOSSEUM』。売上枚数は28万1000枚だった。3位はGENERATIONS from EXILE TRIBEの『BEST GENERATION』で、売上は22万5000枚。『Finally』は『BEST GENERATION』の10倍近いセールスを記録している。

『Finally』に続いて『namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~』でも繰り返された驚異的な売上。CDからダウンロード、ダウンロードからストリーミングへという業界の激変のなか、安室奈美恵は2度にわたってエイベックスを救ったのだ。
安室奈美恵のいなくなったエイベックスはどうなってしまうのか
 とはいえ、肝心なのはこれからだ。安室奈美恵はもう引退してしまったわけで、今後、発掘音源や映像が商品化されることがあったとしても、もうこのような「バブル」をもたらしてくれる存在ではないだろう。

前述した2018年4~9月期連結決算のデータでは、音楽パッケージとともに、ライブ市場の活況も指摘しており、4~9月期ハイライトとして、BLACKPINK、SUPER JUNIOR、東方神起、iKONといったK-POPアーティストの来日ツアー、AAAの全国ドームツアー、またa-nationやULTRA JAPANといった音楽フェスを挙げている。

実際、資料を見ると、ライブ事業は前年同期比で約15億円売上が増えており、それに伴ってマーチャンダイジングやファンクラブ運営などの売上も伸びている。

今後、CDやDVD&Blu-rayのような音楽パッケージが伸びる見込みが0である以上、それ以外の分野で業績を上げる必要がある。そのためにライブ市場は重要な位置を占めると報告書からは読み取れる。

もうパッケージの売上に頼ることはできない──それは、エイベックス自体が一番よくわかっていることなのだろう。

「max matsuura」こと松浦勝人代表取締役社長CEOは、今年5月11日に開催した決算会見にて、今年が創業30周年であることに触れながら、このように話している。

<会社の寿命は30年と言われているが、エイベックスは10年だと思って始めた。あっという間に30年が経ち、30周年記念として何かやるよりは、30年で一度エイベックスは終わり、新たな形で始めるくらいの気構えでいくべきではないかと思った。エイベックスはゼロからやり直すフェーズにきている>(ニュースサイト「CNET Japan」より)

安室奈美恵から2度にわたってもたらされた、あまりに大きい置き土産。それは、エイベックスが<ゼロからやり直すフェーズ>に入る段階において、重要な資力となるのだろう。

安室奈美恵が未来の音楽業界に残した遺産は、楽曲だけにとどまらないのである。

(倉野尾 実)

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