夢か幻か「マンディ 地獄のロード・ウォリアー」血まみれケイジが暴れまわるヘビーメタルの寓話

エキレビ!

2018/11/10 09:45

ニコラス・ケイジ主演、ヘビーメタルの寓話……。血みどろの復讐劇でありながら、夢なのか現実なのかわからない幻想的な作品でもある『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』は、とにかくとんでもないものを見たという気持ちになれる作品である。


恋人を殺された男が辿る、摩訶不思議な復讐行脚
最初に書いておくと、『マンディ』はすごく変わった映画というか、変な映画である。画面内で起こっていることが現実なのか、それともなんらかの非現実的な事象なのか、敢えて区別を付けていない作りになっている。なんというか、変な夢を見た時みたいな感じに近い。

ニコラス・ケイジ演じる主人公レッドは、林業に従事しているおっさんだ。人里離れた山の中の小屋に、愛する女性マンディと暮らしている。マンディはミステリアスな女だが、2人は仲睦まじく同居生活を送っていた。

一方、彼らの近所には教祖ジェレマイア率いるカルト教団が集団生活を送っていた。ジェレマイアは車から見かけたマンディに固執し、部下たちに彼女を拉致してくることを指示。教団にマンディを連れてきたジェレマイアだったが、マンディはジェレマイアを嘲笑する。激怒したジェレマイアらはレッドとマンディが住む家を襲撃。レッドの見ている前でマンディは生きたまま焼かれてしまう。

自らも重傷を負ったレッド。しかし彼は復讐を強く誓い、知り合いに預けてあったクロスボウを取りに行く。さらに自ら金属を溶かし、手製の斧を鍛造する。完全武装で固めたレッドはカルト教団へと殴り込みを開始するが、その行く手には謎のバイカー軍団や教団の信者たちが立ちはだかる。

こういう話なので、ストーリー自体はとても単純。復讐の物語である。が、それ以外の要素がとにかく異常だ。やたらと赤や青のフィルターがかかった画面、唐突に挟まる宇宙の話、何を考えてるのか全然わからないマンディと、いきなり森で木を切り倒しているニコラス・ケイジ……。冒頭から「なにこれ……」と言いたくなるような映像が続く。どこまで現実世界をベースにしていて、どこからが夢や幻想なのか全然わからない。大体、人里離れた森の中で2人きりで暮らすレッドとマンディという絵面自体が浮世離れしているのに、2人とも一応ちゃんと仕事はしている。どういうバランス感覚なんだ……。

ストーリーが中盤に差し掛かり、謎のバイカー軍団が登場したあたりから、この映画はさらに現実離れした展開を辿る。カルト教団の信徒が教祖ジェレマイアから渡されたオカリナを吹くと、赤い光に照らされたバイカー集団がどこからともなく現れるのである。しかもバイカーたちの見た目は全身黒づくめでいろんな部分がトゲトゲしており、しかも部分的にはネトネトした変な汁が垂れている。クライヴ・バーカーというか一時期のマクファーレン・トイズのフィギュアというか、キモさとかっこよさが同居した見た目だ。しかしなんでオカリナを吹くと現れるのか。詳しい事情は全然説明されないから、「そういうもの」として受け入れる他ない。

おれはこの「オカリナを吹いたらヌメヌメしてかっこいいバイカー集団がどこからともなく現れる」というシーンで、この映画に関して現実かどうかとかそういうことを考えるのをやめた。そう思って見ると、全シーンがめちゃくちゃかっこいいのである。異様に赤い画面の中、斧とクロスボウを背負って疾走するレッド。もうもうと立ち込める霧(のような何か)、唐突に出てくる虎、長すぎるチェーンソー……。「なんか変」ということだけ最初に飲み込んでしまえば、あとはもう全てがギトギトと輝いて見える。

「ロックンロールの寓話」と言えば『ストリート・オブ・ファイヤー』だが、『マンディ』は「ヘビーメタルの寓話」と呼ぶにふさわしい。劇中に出てくる各章のタイトルの書体や、レッドが自作する斧の形、ブラック・サバスの「Iron man」の最初の方のドゥウゥ~~~ンみたいな音がずっと続くようなヨハン・ヨハンソンの劇伴と、メタル的要素が随所に散りばめられている。なにより、辻褄の合わなさやどこまで現実なのか全然わからない感じは、ちゃんとしたストーリーというよりは寓話といったほうがいいだろう。そしてこの危ういバランスな作品の屋台骨となっているのが、ご存知ニコラス・ケイジなのである。

狂人ケイジ、斧と顔芸でカルト教団を瞬殺する
最近のケイジは、なんというか外からは「頼んだら割となんでもやってくれる人」という感じに見える。そんなケイジに、本作の監督パノス・コスマトスが最初にオファーしたのは、レッドではなく教祖のジェレマイアの役だったという。しかしケイジは「レッドがいい。僕にレッドをやらせてくれ」の一点張りで、一度は監督もオファーを断った。

しかし、ある日監督はケイジ主演の『マンディ』を見ているという夢を見たため、「これは神のお告げだ」と思って再度レッド役でオファーしたという。夢が原因で主演俳優を決める監督もすごいが、「レッドをやらせてくれ」とテコでも動かなかったケイジもケイジである。

そのケイジ、『マンディ』での演技は壮絶そのものと言っていい。恋人を殺されて悲嘆にくれる姿は痛々しいが、その後の両目をギラギラと輝かせながら斧を振るい、血まみれになりながらバイカーやカルト教団のメンバーを次々に惨殺していく姿は見事に狂人である。特に顔面の演技は凄まじく、「人間て顔のパーツあんなに動かせるの!?」とギョッとするような顔芸が炸裂している。自分からやらせてくれと言っただけのことはあり、恋人を殺されたことで夢か現実かわからない復讐行脚に踏み出す男の姿に関して説得力は抜群。変なカルト教祖を軽く上回るヤバさを、顔芸だけで発散しているのだ。

このように夢なんだか現実なんだかわからないフワフワとした空間で、血まみれのケイジとバイカーとカルト教団が暴れまわる地獄のような映画なので、できれば鑑賞を邪魔する現実的なアイテムを手に取れない環境で見てほしい。おそらく「今のケイジはすごかったからツイッターに書こう」とか合間合間にやってると、この映画の面白さは半分くらいになると思う。ということは、やはりあなたは劇場に足を運ぶしかないのである。「何がなんだかわかんないけど、とりあえずなんだかとんでもないものを見た」という、いつも通る道でいきなり妖怪に出会ったような体験ができることは保証する。
(しげる)

【作品データ】
「マンディ 地獄のロード・ウォリアー」公式サイト
監督 パノス・コスマトス
出演 ニコラス・ケイジ アンドレア・ライズブロー ライナス・ローチ ほか
11月10日よりロードショー

STORY
人里離れた森の中で恋人マンディと暮らす男レッド。しかしカルト教団にマンディを惨殺されてしまい、レッドは復讐を決意する。武器を揃え戦いに挑むレッドだが、その前に謎のバイカー集団と教団の信者たちが立ちはだかる

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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