韓国「徴用工・賠償問題」で個人的請求権はあるのか? 政府・野党代表それぞれの発言は…

しらべぇ

2018/11/10 14:00


10月30日、韓国の最高裁判所は、日本がアジア・太平洋地域を侵略した太平洋戦争中に、「徴用工として日本で強制的に働かされた」として、韓国人4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた裁判で、賠償を命じる判決を言い渡した。

■安倍首相「国際法に照らしてありえない」




安倍晋三首相は同日、官邸で記者団に対して、元徴用工の請求権について「1965年の日韓請求権・経済協力協定によって完全かつ最終的に解決している」と述べ、「判決は国際法に照らしてありえない判断だ」として、全面的に拒否。韓国を非難する姿勢を示した。

また、安倍首相は1日午前の衆院予算委員会で、原告となった元工員4人について、「政府としては『徴用工』という表現ではなく、『旧朝鮮半島出身の労働者』と言っている。4人はいずれも『募集』に応じたものだ」と指摘した。

今後の日本政府の対応については、「あり得ない判決で、国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野に入れ、毅然と対応する。日韓の間の困難な諸課題をマネージするには韓国側の尽力も不可欠で、判決への韓国政府の前向きな対応を強く期待する」と述べた。

菅義偉官房長官は6日午前の記者会見で、「わが国は韓国に対し国際法違反の状態の是正を含め、適正な措置を講じるよう強く求めており、韓国政府の対応を見極めたい」との認識を重ねて示した。

その上で適切な措置が取られない場合は「国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野に入れて毅然とした対応を講じる」と強調した。

■立憲・国民は韓国に遺憾表明




立憲民主党の枝野幸男代表は10月31日の記者会見で、韓国の元徴用工をめぐる訴訟で日本企業に賠償を命じた韓国の最高裁判決について「判決は大変、残念であり、遺憾に思う」と述べた。

そして、枝野氏は「韓国政府には、1965年の日韓請求権協定を踏まえて適切な対応を取ることを強く期待している」と語った。



同党の福山哲郎幹事長は6日の会見で

「日韓請求権協定により、国同士の取り決めがあった中で韓国の最高裁が今回の判決になったことは、残念に思っている。韓国政府もこれについてよく理解をしているはずですし、苦慮していると思いますので、冷静な対応を求めたい。

戦前の問題として反省をしなければならないということもあるが、そのことも含め、国家の取り組めがあったと理解している」

と述べた。



また、国民民主党の玉木雄一郎代表は11月7日の会見で「個人的請求権はあるかないかは様々な説があるが、1965年の請求権協定により、国家間の問題は解決済みであり、仮にあったとしても、韓国政府において、対応すべき問題で、日本の政府が義務を負うものではない」と述べている。

■自由党は「政治決着」要求




自由党の小沢一郎代表は6日の会見で、

「個人的請求権はいいんだけど、『各企業は自発的にやれ』という話なら裁判所はいらない。条約が個人的請求権を消滅させるものではないと日本の裁判所でも認められてるわけだ。

被害者が請求することは自由と思うが、『韓国の裁判所で訴えて、韓国の裁判所で認めたから払わなくてはいけない』という論理構成にはならないのではないか。

それなら、外国の裁判所で日本に関わることで認めたら、日本政府は従わなければならないということになるのではないだろうか。日本の裁判所で請求したらいい。

他国の裁判所が日本の個人や企業に対して、韓国の在住の企業なら別だが、ああしろ、こうしろは言えない。個別の国の裁判所の結論が、他国の国民や企業を法的に拘束する力はないと考える。後は政治問題で決着するしかないのではないか」

とこの問題に触れた。

■共産、社民は日本の責任を強調




日本共産党の志位和夫委員長は、1日の定例会見で、

「日韓請求権協定によって、日韓両国間での請求権の問題が解決されたとしても、被害にあった個人の請求権を消滅させることはないということは、日本政府が国会答弁などで公式に繰り返し表明してきたこと。

たとえば、1991年8月27日の参院予算委員会で、当時の柳井俊二外務省条約局長は、日韓請求権協定の第2条で両国間の請求権の問題が『完全かつ最終的に解決』されたとのべていることの意味について、『これは日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したということであり、個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない』と明言している。

強制連行による被害者の請求権の問題は、中国との関係でも問題になってきたが、2007年4月27日、日本の最高裁は、中国の強制連行被害者が西松建設を相手におこした裁判について、日中共同声明によって『(個人が)裁判上訴求する権能を失った』としながらも、『(個人の)請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではない』と判断し、日本政府や企業による被害の回復にむけた自発的対応を促した。

この判決が手掛かりとなって、被害者は西松建設との和解を成立させ、西松建設は謝罪し、和解金が支払われた。たとえ国家間で請求権の問題が解決されたとしても、個人の請求権を消滅させることはない。このことは、日本政府自身が繰り返し言明してきたことであり、日本の最高裁判決でも明示されてきたこと」

と述べた。

社民党の又市征治幹事長は、6日の会見で政府も以前は「日韓協定では外交保護権が放棄されたにすぎず、個人の請求権は消滅していない」と国会答弁していたと指摘。



その上で、強制連行された中国人労働者が西松建設、三菱マテリアル両社が基金への拠出という形で補償を実施することで和解した例を挙げ、朝鮮半島と中国との違いはあるものの「日韓両国で叡智を絞って、植民地支配下で日本企業によって侵された被害者の名誉と尊厳を回復するため人道的見地からの解決策を探るべきだ」と述べている。

徴用工の韓国判決は、明らかに日韓両国の政治課題になることは間違いない。慰安婦問題に加えて徴用工賠償問題が急浮上し、日韓関係はしばらく冷え込むのではないかと筆者は見ている。

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(取材・文/しらべぇ編集部・及川健二

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