梅毒が大流行の理由。気づかずに感染、検査で出ない場合も…

日刊SPA!

2018/11/10 08:55



近年、右肩上がりを続ける梅毒患者数。現在も、その流行に歯止めがかからず、一般の男女にも蔓延していると聞く。少し前まで「昔の病気」と認識されていたこの病気の患者が、なぜ今増加しているのか。

性感染症(STD)検査を専門に扱うのは、東京都豊島区にある「池袋駅前ライフクリニック」。同クリニックの稲垣徹訓院長と、クリニック立ち上げに携わり、現在は主に広報を担当する元AV女優の夏目ミュウさんは、世間の性病に対する誤解や認識の甘さに警鐘を鳴らす。そんな彼らに、昨今の梅毒患者増加の理由とその実態について話を聞いた。

◆なぜ梅毒は急増しているのか

稲垣「梅毒患者数は間違いなく増加しています。私が医者になり始めた頃(10年前)は数ヶ月に1人いればという患者数が、今では多いときは1週間に数人になってきています。患者層も風俗店で働く人だけでなく、一般の方が増えていますね」

こう語る稲垣氏。国立感染症研究所によると、梅毒患者数は2017年には5770人、2018年は10月14日までで5365人と、5年前の5倍に迫る勢いだ。

そもそも、梅毒とはどのようにして感染していくのだろうか。

稲垣「基本的には粘膜の接触感染であり性交渉で感染しますが、口腔性交で感染することもあります。最近では複数の相手と関係を持つ方がとても増えており、その中できちんと避妊をしないケースが多々あります。ピルを服用していれば妊娠しないという考えが先行してしまい、性病への意識がおろそかになってしまいます。避妊具を着けていれば絶対感染しないということはありませんが、コンドームを装着することはとても大切です」

夏目「金曜日の渋谷では、アフターピルがすごく売れると聞きます。やはり性交渉の時は『妊娠だけに気を付ける』という意識の方が大半なのでしょうね」

稲垣「ピルを処方している患者さんに『コンド-ムもしてください』と言うと『なぜですか?』と聞き返されてしまうこともあります」

確かに、性交渉の際真っ先に気を付けるポイントは「避妊」という人も多いだろう。妊娠回避さえしておけばそれで安心という意識は、なんとなく分かる気もするが、そんな状況では感染が拡大するのも致し方ないと言える。では、梅毒に感染すると具体的にどのような症状が現れ始めるのか。

◆しこり、湿疹…梅毒の症状とは?

稲垣「梅毒は梅毒トレポネ-マに感染することで発症する感染症です。第1期は初期硬結と言い、発症後1ヶ月位で患部に小さなしこりができます。発生箇所は主に陰部ですが、口腔性交により唇や口腔内にできることもあります。また、リンパ節が腫れることもあります。共にこの段階では、痛みなども無い場合がほとんどで、しこりもやがて消えてしまうので多少違和感を抱いても見過ごしてしまうことが多いです。その後3ヶ月ほど経ってから、湿疹症状などが生じる第2期段階に入ります」

しこりが出来たら心配にはなるが、痛みもなく、しかもやがて無くなってしまうとなれば、ほとんどの人が病院を受診することはないだろう。3ヶ月経過後にできる湿疹にしても、まさか数か月前のしこりと繋がった症状だとは思わないはずだ。

稲垣「梅毒に関する知識がほとんどない方もいるので、しこりと湿疹症状を結びつけないケースも多いです。ですがこの場合の湿疹はあまり痒みもなく、全身に出てくるものです。類似する蕁麻疹(じんましん)とは違い、すぐに消えることはないので、明らかにおかしいと感じて受診される方が多いです。ただしこの湿疹も時間経過とともに消失します」

とはいえ体に湿疹が出た場合、普通は皮膚科に行ってしまうと思うのだが…

稲垣「そうですね。湿疹の症状で性病科と結び付ける方は少ないかもしれません。皮膚科医でも、しっかりとした知識のある先生は梅毒を疑ってくれますが、実際にはその分野には不慣れな方も多いのが現状です」

夏目「とても怖いことですが、医師でも梅毒について詳しくないということも多いです。性病検査に関しても、本来必要であるべき検査項目が入っていない場合もあるんです。今は安価で簡単に出来る検査もたくさんありますが、そこで陰性が出ても、実は陽性だったなんてこともあるので怖いですよね」

患者が医者を選ぶ時代と言われる現代。医者だからといって盲信してしまうのは危険である。

◆正しい機関で検査をすることが大切

稲垣「実は梅毒検査には2つの種類があります。一つは梅毒に感染して陽性となる梅毒トレポネ-マ自体への抗体検査(TPHA法)、もう一つは実際に体の中にどのくらいの梅毒がいるか、量的指標となる梅毒トレポレ-マ内の脂質(カルジオリピン)に対する抗体検査(RPR法)ですね」

夏目「これは一般的にはあまり知られていないですよね」

稲垣「梅毒トレポレ-マに感染すると今までは4週程度でRPRが陽性になり、その後6週くらいでTPHAが増加するといわれていました。しかし近年は検査技術の発達によりTPHA法の一種のTPLA法など、RPR法より早く陽性となるものもあります。我々は両方の検査の結果と症状を合わせて梅毒の診断を行います。

迅速検査をする場合や、昔の考え方の先生は TPHAのみの検査しか行わない場合もありますが、基本的には両方の結果と症状を加味して感染の有無及び治療の必要性を判断しなければなりません。過去に梅毒の治療歴がある方の場合TPHAは消えずに陽性になってしまうため、感染の強さを示すRPRの値と症状で診断を行います。迅速検査は通常検査よりも感度(梅毒の人が検査で陽性になる確率)が多少低くなることも理解したうえで、迅速検査をするか通常検査にするか判断していただきたいです」

ただでさえ二の足を踏む性病の検査。できることなら安価で簡単な検査にしたいという気持ちはとても分かる。だが、どうせやるならば2種類の検査をしっかり受けておいた方が自分の身を守ることに繋がるのだ。

◆途中で梅毒治療をやめてしまう人も多い

稲垣「また、最近の感染拡大に伴い『日本性感染症学会』では、症状があったら検査結果も踏まえたうえで早めの治療を検討すべき、という流れに変わってきています。『疑わしきは罰しよう』ということです。梅毒を治療する場合、日本では抗菌薬をまずは4週間毎日、1日3回内服する必要があります。そのため、いざ治療を始めても完治する前に途中で来なくなってしまう方も多くいます。長期間の内服に耐えられない方や、症状が治まり途中で内服を自己中止する方もいます。内服後の効果判定のために再検をアナウンスしますが、来ていただけない方もいるので…。まだまだ感染拡大阻止は厳しいというのが現実です」

途中で治療を辞めてしまう人もいるとは恐ろしい…。ここまで話を聞いて、梅毒をはじめとする性病を広めない方法として、性交渉の際にお互いが検査証を出し合うようにするのが一番だと感じたのだが、やはりそれは荒唐無稽な話なのだろうか。

稲垣「いえ、それが一番だと思います。風俗業に従事している方々及び風俗へ通う客に対して『検査済み』、『完治済み』のような証明書を病院で発行していくこともきちんと考えるべきですね。まずは風俗店で働く方が最低でも月に1度、しっかりと検査を受けるよう義務化にする制度を国で統制できるようになれば、感染拡大は防げるのではないかと感じます」

夏目「そういった方法が一般的になれば、より一層安心で楽しい性交渉ができますよね。あと、性病に関する誤解が多いのが怖いです。感染しても、しっかりと治療すれば完治するんだよと伝えていますが、やはり『検査が怖いから行かない』、『そもそも検査についてよく知らない』という方がとても多いのが現実です。これは男女問わず同様で『陽性が出たらどうしよう…恥ずかしい…』のような感情を持つ場合もとても多いと思います。もし感染している方が検査に来ないと、それだけ感染拡大の危険性が高くなりますよね」

稲垣「また、近年ネットが普及して、情報を得やすい環境になりましたが、間違った情報もたくさんあります。ネット情報を検索し自己完結するのではなく、しっかりと検査を受けられるよう、性病検査がより一般的なものになるようになるようにしていきたいですね」

◆実際に梅毒検査を受けてみた

梅毒蔓延の実態と、検査の重要性をひしひしと感じた記者。ついでと言ってはなんだが、この機会に検査を受けようと思う。

週刊SPA!の名物企画『俺の夜』でお馴染み、テポドン先輩と一緒に、そろって検査を受ける。

今回は梅毒の他に、B型肝炎、HIV、喉と性器のクラミジア、淋菌検査が受けられるスタンダードセットを選択。血液検査、尿検査(女性は膣、頚管検査)、食塩水によるうがいの3種類。意外と簡単で驚く。まずは尿検査からスタート。

尿検査終了後、待合室で血液検査とうがい検査を待つ2人。やはり緊張からか、体がカチコチに固まっている。

無事検査終了。価格は15600円。検査結果は翌日、ネットから確認できるとのこと。

◆梅毒検査の結果はいかに…

翌日、検査結果が気になり、いつも以上に「仕事に熱が入らない状態」が続く記者。果たしてどうなるのか…

陰性――――!! ああ、よかった。ちなみに、デポドン先輩もすべて陰性だったようだ。これだけで心に平穏が訪れる気がする。結果が簡単にわかるのも嬉しい。これからは定期的に検査を受けようと決めた記者であった。〈取材・文/日刊SPA!取材班 取材協力/池袋駅前ライフクリニック〉

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