『GODZILLA』ギドラナイトでクリエーターが語る、実写とCGで「怪獣はどう造形されてきたか」


"アニゴジ"ことアニメーション映画『GODZILLA』シリーズの第3弾にして"最終章"となる『GODZILLA 星を喰う者』(監督:静野孔文・瀬下寛之)が、本日11月9日より全国劇場にて公開された。7日には、映画公開を記念した上映イベント『ギドラナイト』が東京・立川シネマシティにて催され、『GODZILLA 星を喰う者』にも登場する人気怪獣「キングギドラ」の魅力について、ゲスト陣が熱きトークを繰り広げた。

『ギドラナイト』とは、2001年に劇場公開された『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』(監督:金子修介)のフィルム上映と、本作でゴジラ、モスラ、キングギドラの造形を手がけた品田冬樹氏、アニメーション映画『GODZILLA』シリーズで監督を務めた瀬下寛之氏、そして造形監督のポリゴン・ピクチュアズ片塰満則氏を迎えてのトークショー「ギドラを現すこと、造形としての怪獣表現とは」で構成された、スペシャルなイベントである。

現在は円谷プロの造形部門LSSに属し、実写特撮における造形の第一線で活躍し続ける品田氏と、CGの最前線を走り続ける瀬下監督、片塰造形監督は、みなゴジラをはじめとする怪獣ファンでありアニメファンでもあるため、初対面ながらいきなり意気投合。今回のアニゴジ最終章『GODZILLA 星を喰う者』には、かつて実写版「ゴジラ」シリーズにおいてゴジラと何度も激闘を繰り返した宿命のライバルというべき怪獣・キングギドラが形を変えて登場するということもあって、スクリーンにキングギドラが登場した最後の実写特撮映画である『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』を上映し、「特撮スーツとCGと表現技法は違えど、"怪獣を造形する"という共通のプロセスを両者はどのように果たしてきたのか?」というテーマに沿って、品田氏、瀬下氏、片塰氏の3者のトークが行われた。

MCを務めるのは、ゴジラ映画の魅力を伝える朝の帯番組『冒険!ゴジランド』(1992年)の「ゴジラはかせ(初代)」や『超星神グランセイザー』(2003年)の脚本などで特撮ファンにおなじみの石井信彦氏。

今回上映された『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』は、平成「ガメラ」シリーズで特撮ファンから絶大なる支持を得た金子修介監督が、初めて東宝で手がけたゴジラ映画である。金子監督は第1作『ゴジラ』(1954年)における"ゴジラの恐怖"を現代によみがえらせる目的で、ゴジラに"もっとも凶暴で凶悪"という属性を持たせた。本作のゴジラの大きな特徴は、人間の感情移入を拒絶する"白目"であり、これは造形を手がけた品田冬樹氏からの提案だったという。

当初は、戦争で死んだ人間の"怨念"が宿った不死身のゴジラを倒すべく、日本の各地で眠る護国聖獣バラン、バラゴン、アンギラスが復活する、という構想で進められていた本作は、巨大なゴジラに小さな3怪獣が力を合わせて挑むという戦いの図式だったのだが、興行サイドから「怪獣オールスター映画にしたい」という要望があり、有名怪獣のモスラとキングギドラがバランとアンギラスにとって代わる形となった。唯一、バラゴンのみ出演することになり、初期構想どおりの「圧倒的体格差のあるゴジラに挑むバラゴン(婆羅護吽)の健気さ」が表現された。

前述の理由もあって、本作のモスラとキングギドラはかつての設定から大幅に変更が行なわれ、いずれもバラゴンと同じくヤマトの国を護る「聖獣」として登場する。モスラ(最珠羅)、ギドラ(魏怒羅)はいずれもゴジラより小さく設定され、クライマックスの対ゴジラ戦では人類と力を合わせて巨大なゴジラにぶつかっていくという、従来のモスラ、キングギドラとは一味違う怪獣バトルの構図が見られることになった。

『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』(以後『GMK』と略)で、バラゴン以外の3大怪獣の造形を手がけた品田氏は、金子監督の「ゴジラをとにかく巨大に作ってほしい」という要望を受け、4か月間で3体を完成させるという厳しいスケジュールながら、従来以上に生物感に満ちた怪獣たちを生み出した。品田氏は当時を振り返り、「製作途中、ハサミを手に刺して10日間入院したり、釘を踏み抜いて破傷風の注射を打ちに行ったりとか……造形の現場は危険なんです」と、17年を経た今だからこそ話せる過酷そのものの作業状況を明かした。

瀬下監督は『GMK』公開時は、アメリカから帰国したばかりのタイミングであったという。当時劇場で映画を観た瀬下監督は、「ああ、やっぱりゴジラはいいなあって思いました。もともと金子修介監督の映画が好きでしたし、ゴジラの迫力がとてもよかった。"恐い"ゴジラに徹底していたのがよかった」と、ゴジラへの熱い思いを交えつつ『GMK』の感想を述べた。

片塰氏もまた、金子監督の『ガメラ』シリーズに心奪われていた1人で、『GMK』も公開当時に観に行っており、南果歩、かとうかず子、前田愛・亜紀姉妹といった出演女優陣の魅力について話していた。また、品田氏が造形の際に怪我をしたという話を受けて「CGを作っている人間にはそういった危険なことはありませんね。せいぜい、PCの角に足の小指をぶつけるくらいですかね(笑)」と語って笑いを誘った。

『GMK』と『星を喰う者』のギドラは、オリジナルである『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)に登場した宇宙超怪獣キングギドラとは大幅に属性やスタイルを変えているといった共通項がある。『GMK』のギドラは史上もっとも首の短いギドラで、『星を喰う者』のギドラはもっとも首の長いギドラであるという。品田氏は『GMK』ギドラについて「昭和のキングギドラが好きなファンの人たちからは、公開当時ケチョンケチョンに言われたこともありますが(苦笑)、時を経てだんだん愛されるようになったかと思います。体が小さいのはもともとアンギラスで行くつもりだったからなんですけれど、"健気なギドラ"として親しまれたようです。実際、親しみが持てるようにと顔には"犬っぽい"雰囲気を入れ込んでいます」と、撮影当時に使ったギドラの予備パーツを集めて作ったヘッドを見ながら造形のポイントを解説した。

瀬下監督は「えっ!? これって撮影に使ったギドラの首なんですね! ……むちゃくちゃ欲しくなってきました(笑)」と目を輝かせ、興奮気味にコメントした。『星を喰う者』ではゴジラ(ゴジラ・アース)にギドラが長い首を絡ませ、噛みつき攻撃を行う(?)シーンが見られるらしいのだが、瀬下監督によるとこれこそが「『GMK』のギドラを相当にリスペクトしています! 本当ですよ! だから光っているんです」と、ポスタービジュアルを見ながら本作のギドラが『GMK』へのリスペクトだと強い口調で言った。片塰氏もまた「『GMK』でギドラがモスラの粒子をまとっているシーンがありますが、あそこのイメージをポスタービジュアルに生かしています。まさにリスペクト、オマージュですね」と、CGでギドラを表現する際に『GMK』ギドラを参考にしたことを明らかにした。

「改めて『GMK』ギドラを見ると、優しい顔つきをしているんですね」という瀬下監督の言葉を受け、品田氏は「犬や猫など"動物"の目であることを意識しました。映画をよく観てくださるとわかりますが、バラゴンもギドラもゴジラも、みんなマブタが下から上がってくるように作っています」と、哺乳類の顔面を参考にして造形したことを説明。瀬下監督は品田氏の話に納得したかのように「僕たちが作ったゴジラも、遠くから見ると恐いですが、近づくと想像以上に目が優しくて、知性を感じさせるというコンセプトでやっています。改めてGMKギドラの顔を近くで見させてもらうと、こちらにも知性を感じることができて、すばらしいと思いました」と、品田氏の造形したギドラについて改めて感心するようすを見せた。

品田氏が造形を行った『GMK』キングギドラの頭部をクローズアップ撮影。生き生きとした"目"や今にも噛みつかれそうな"牙"の造形の妙味をお楽しみいただきたい。

『星を喰う者』を試写で観たという品田氏は「ギドラの設定が、『三大怪獣 地球最大の決戦』でのオリジナル・キングギドラに近いことに驚いた」と感想を述べた。瀬下監督はこれについて「企画が始まった当初の1年間は、今までの東宝怪獣映画を改めて調べ上げて、何を引用してどの部分を膨らますか、を徹底的にやったんです」と、過去の東宝怪獣映画、「ゴジラ」シリーズを研究した上で、実写と同じものにせず、アニメでしか描くことのできない世界を作ろうと熟考を重ねたと話した。

瀬下監督は続けて「CGアニメでゴジラをやるにあたっては、過去のゴジラシリーズからいろんな要素を引用しながら作りました」と、実写のゴジラとは方向性こそ異なるものの、全体的には強いオリジナルへのリスペクトがあり、オマージュが捧げられていることを強調した。片塰氏は「ゴジラをアニメ化するとなると"セル画"的な表現は難しいと思いました。巨大感や実物感がどうしても出しにくい。なので怪獣を"背景"に近い表現として用いるのなら、イケるかなと……」と、実写特撮として確固たる存在を示したゴジラをCGアニメーション映画として描くにあたって、表現方法を根本から変えなければならなかったと語った。

また、アニメでゴジラを作るにあたって瀬下監督と片塰氏が強く意識したのが、平成ゴジラVSシリーズのポスターアートを多数手がけた、日本を代表するイラストレーター・生頼範義氏の大迫力の怪獣イラストだということも語られた。

11月9日より公開の『GODZILLA 星を喰う者』の見どころについて片塰氏は、「脚本を手がけた虚淵玄さんによる"言葉"の力がすごい。『GMK』にも多くの名セリフがありますが、それにも負けない"圧"のある言葉の応酬が繰り広げられます。ビジュアルにも力を入れていますが、それ以上に脚本の言葉や、声優さんの演技の力に改めて感心しました」と、劇中での会話劇の面白さに言及。瀬下監督も「『朝まで生テレビ』を楽しまれている方でしたら、今回の作品はニーズに合っている! まさに“言葉責め”映画です」と、キャラクターそれぞれの主義主張がぶつかりあう熱い人間群像ドラマ、弁舌の限りを尽くして繰り広げられる人間同士のぶつかりあいを楽しんでほしいと語った。

アニメーション映画『GODZILLA 星を喰う者』は現在、全国劇場にてロードショー公開中。

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