アメリカ中間選挙の結果をこう読む!


注目されたアメリカの中間選挙では、大方の予想通り、上院で共和党が過半数を維持し、下院では民主党が過半数を奪った。いわゆる「ねじれ議会」が誕生した。

○民主党が下院で勝ち、トランプ大統領が選挙に勝利した!?

今回の中間選挙は、トランプ大統領に対する信任投票の意味合いが強く、当初は民主党の大躍進が予想されていた。しかし、民主党は下院の支配権を奪取したものの、上院で議席を失うなど選挙戦の終盤になって失速、民主党のイメージカラーをもじった「ブルーウェーブ」は大波とはならなかった。

賛否はあるものの、トランプ大統領が次々と政策を打ち出し、そのうちかなりの数が実現したこと、トルコに軟禁されていた米国人牧師の解放に寄与したことなどが有権者から一定の評価を得たと言えよう。トランプ大統領は、下院での敗北に触れず、「(中間選挙は)大勝利」とツイートしたが、単なる強がりではないようだ。

2020年の大統領選挙に向けて、民主党はやるべきことが山積している。民主党は、下院支配を活かしてトランプ大統領の暴走に歯止めをかけることも重要だが、単に大統領の挙げ足を取るだけでなく、党として何を成し遂げるかを有権者に示す必要があろう。また、幅広い支持を得られる中道寄りの大統領候補を発掘して、全米レベルで浸透させることも喫緊の課題だろう。
○「ねじれ議会」でこうなる!?

さて、来年1月3日から上院を共和党、下院を民主党が支配する「ねじれ議会」が始まる。共和党が両院を支配した選挙前と比較して、以下のような変化が想定される。

まず、上院は共和党支配に変化はないので、トランプ大統領が指名する閣僚や高級スタッフ、最高裁判事、FRB理事などの承認は比較的スムーズに行われだろう。上院には条約の批准権があるため、トランプ政権が合意した条約の批准も問題なく行われそうだ。

下院は民主党支配に変わる。党派的な立場が異なる法案の審議は難航・とん挫が予想される。移民規制やオバマケアの改革・廃止など、トランプ大統領が立法化を求めたとしても、議会で日の目を見ない可能性が高まろう。

税制や予算に関する法案は原則として下院から開始されるルールがあるため、トランプ大統領が選挙直前に提唱した所得減税第2弾は、そのままの形では審議すら行われないかもしれない。

一方で、民主党が独自のイニシアチブを立法化しようとしても、上院の協力が期待できないため、議会通過は困難となろう。仮に、法案が議会を通過しても、大統領が拒否権を発動すれば、これを覆すには上下院でそれぞれ3分の2以上の票が必要なため、立法化はまず不可能だ。

民主党が自らの政策を立法化するためには、トランプ大統領が主張する「メキシコの壁」ではなくインフラ投資、「オバマケア廃止」ではなく医療費や保険料の引き下げ、「中間層減税」には富裕層や法人税増税をセットするなど、様々な形でトランプ大統領との駆け引きが不可欠となるだろう。
○下院民主党による疑惑の追及

民主党のペロシ議員が下院議長となり、下院の各委員会の委員長には民主党議員が就くことになる。そのため、民主党は下院で様々な調査を開始し、公聴会を開催し、また召喚状を出すなどして、トランプ政権をけん制することができる。

既に、一部の民主党議員は、ロシアが2016年の大統領選挙に干渉し、トランプ陣営がそれに関わっていたとする疑惑の追及に意欲をみせているようだ。トランプ大統領の納税記録や閣僚による政府サービスの私的利用などを調査しようとの動きもあるようだ。
○モラー特別検察官の命運は?

中間選挙の翌日、セッションズ司法長官が更迭された。トランプ大統領は司法長官の主席補佐官だったウィテカー氏を長官代行に起用したが、同氏はロシア疑惑を捜査するモラー特別検察官に批判的だったとされる。

仮に、ウィテカー長官代行がモラー特別検察官を解任したり、事実上の捜査の幕引きを図ったりすれば、民主党は下院の権限を最大限に利用して追及を続けるのだろうか。トランプ大統領は先手を打って、「(民主党が大統領の追及に力を入れるなら)臨戦態勢をとる」と警告したようだ。

トランプ大統領と民主党が下院を舞台に対決姿勢を強めるなら、政治の膠着が強まり、米経済にとっても有権者にとっても好ましいことではあるまい。トランプ大統領と民主党がどのような関係を築こうとするのか、大いに注目されるところだ。

○執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクエア 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして活躍。
2012年、マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。「投資家教育(アカデミア)」に力を入れている同社のWEBサイトで「市場調査部レポート」「スポットコメント」「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、動画サイト「M2TV」でマーケットを日々解説。

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