歯科矯正のメリットとは? いつまで受けられる?【歯や歯医者さん基本のき Vol.7】

マイロハス

2018/11/9 10:30


歯や歯医者さんにまつわる疑問に答える、「歯や歯医者さん基本のき」。Vol.7のテーマは、歯並びやかみ合わせをきれいな状態にする歯科の矯正についての質問です。引き続き医療法人メディスタイル理事長で、歯科医師の徳永淳二先生にお聞きします。
歯列矯正
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Q.矯正とはどういう目的で行われる治療でしょうか。


歯の矯正は、ワイヤーやマウスピースを使って歯並びを正常に並びかえたり、かみ合わせを正常に治したりすることです。その目的は、見た目を整えるだけではなく、「口腔機能」という口の中の正常な機能を回復にすることまでを含んでいます

歯並びにまつわることにはいろいろあります。例えば、ほおによって歯が押されると歯は内側に傾きます。逆に舌に押されると外側に傾いてすきっ歯になったり、出っ歯になったりします。歯の矯正の前に、歯並びが悪くなった原因を考えることが大事です。

では口腔機能とは何かと言いますと、噛むこと、飲み込むこと、発音することなどを言います。鼻呼吸をするということにも関係しています。歯科治療のゴールは、口の機能を正常にして、栄養をしっかり取れるようにして元気にしていくことです。歯を矯正にして、口腔機能を正常にして、全身の健康を実現することまで考えることが大切になります。

そのような理由から、歯並びだけではなく、舌の運動や口の訓練のほか、鼻で呼吸をする練習をするといったことも同時に行っていきます。それらをすべて含めて、口の機能をできるだけベストな状態に持っていくというのが矯正治療だと考えて下さい。見た目も大事ですが、それだけではないんです。原因から考えてゴールを設定するとよいでしょう。

Q.矯正はどういう場合に受けるといいのでしょうか。受けるとよい年齢はいつでしょう?

小児矯正
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主には、見た目が気になる、噛み合わせが悪い、むし歯になりやすい、歯周病になりやすい、顎関節症が治らないなどといった場合になります。

最近では30代、40代になってから歯の矯正治療を受ける方も増えてきていますね。歯並びを治すと、口元が若くなるだけでなく、顔の筋肉のバランスがよくなるので顔にも張りが出ます。目が大きくなったという方もいらっしゃいます。さらに健康にもつながりますから、エイジングケアの観点からも好ましいと考えます。虫歯や歯周病などにもなりにくくしますから、健康や長寿にもつながってきます。

同じ矯正治療といっても、年代や目的によって、やり方も変わってきます。例えば、年を重ねると、歯は中心に寄っていく性質があり、下の前歯がまっすぐではなくなることがあります。歯が動いてガタガタになりやすいのです。そんな前歯だけを矯正するという治療もあります。60~80代の方に多いですね。

ただし、どんな年代でも受けることはできますが、若いうちがいいということは知っておいていただきたいです。アメリカ矯正歯科学会でもスタンダードになっていますが、7~8歳から歯並びをよくするような治療を受けるとよいと考えられるようになっています。理想的には、永久歯の生えそろう前から、乳歯のうちから歯並びや口の機能を見るのがよいのです。乳歯のときから歯の生えるスペースを作ります。小学生から中学生にかけて治療を開始する場合が多くなっています。成長するとあごの大きさを変えられなくなりますから、歯並びを治すことが難しくなるためです。子どものうちはあごの大きさが変わります。そのためあごの骨を広げるようなこともできます。

早くから始めることで、歯を抜かないで歯の矯正を行う可能性が高くなります。子どもの場合は、むし歯予防も含めて、口の機能の成長をみてくれる専門的な小児歯科へ通う習慣をつけるということが大事ですね。

Q.どういうかみ合わせだと矯正治療が必要なのでしょうか。


歯並びやかみ合わせの問題にはいくつかのタイプがあります。

一つは「出っ歯」です。上のあごの歯が前に出てしまう状態になります口をうまく閉じることができなくなります。無理に閉じようとすると、下唇が外側にそり返るようになります。あごにしわが寄ったようにみえます。口呼吸をして、歯が乾燥して虫歯になりやすくなったり、歯周病になりやすくなったりします。前歯を折ったり、口を切ったりしてしまうようなトラブルを起こしやすくなります。同じ出っ歯でも上あごが大きい人と、下あごが小さい人がいますから、どちらかというのは見るといいと思います。猫背にもなりやすいと言われています。

逆に、下のあごの歯が出てしまうのが「受け口」です。下のあごが大きかったり、上のあごが小さかったりするときに起こります。あごの成長が関係しますので、変化を見ていくことが大切です。こうした場合には4~5歳の頃から歯医者さんに相談した方がいいですね。早めに顎骨の成長をコントロールすることが大事です。

歯並びがでこぼこになっている「乱ぐい」があります。そのなかでも糸切り歯が前に出ている状態を「八重歯」といいます。昔は若いうちはかわいいと言われます。ですが、年を取るときばに見えるようになります。海外ではドラキュラの歯と言われてことがあるくらいです。歯の並んでいる場所となる骨の大きさと歯の大きさがアンバランスであるために起こります。歯に汚れが残りやすくなるため、虫歯や歯周病になりやすいという問題があります。舌によって歯が押される力が強いこともあります。舌に変なくせがあることがあるのです。口呼吸の傾向もあります。

このほか口を閉じても上下の前歯がかみ合わない(開咬、かいこう)と呼ばれる状態も問題になります。小さな時に指しゃぶりをしていたような人で見られることもあります。また舌の力が強い人でも多いです。食べ物をうまくかみ切れないという問題が起こるのです。

噛み合わせの問題は、若いうちは気にならなくても、年とともにトラブルが増えてきます。若いうちに、将来、自分の咬み合わせはどうなるのか、歯医者さんに予測してもらうと参考になると思います。

Q.歯並びが悪くなる原因は何でしょうか。

頬杖をつく女性
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一つには、遺伝的なものがあります。親と子どもは同じような傾向が見られます。一方で、くせが問題になります。あとほおづえをずっとついているような人は歯並びに影響があります。このほか同じ方向ばかり向いて寝ている人は歯並びがずれることがあります。舌の力とほおの力のバランスも影響してきます。このほか口呼吸をするくせがある人も歯並びが影響を受けますね。

このほか小さい頃からのくせで、舌を前に出して飲み込む人がいます。そうした人では舌で歯を押してしまうために歯並びがずれることがあります。子どものうちから全身の筋肉をつけると、口の周りの筋肉のバランスもよくなって歯並びがよくなる傾向が見られます。原因は多く考えられるので、専門的な歯科医師に相談するとよいでしょう。

Q.矯正にはどのような種類がありますか。部分的な矯正、目立たない方法やマウスピースを使う方法などがあるようですが?

マウスピースによる矯正
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歯の矯正は大きくわけて3種類があります。「ブラケット」と呼ばれる矯正器具とワイヤーを歯の表につける方法、それを歯の裏につける方法、マウスピースを使う方法があります。

ワイヤーを歯につけるブラケットは昔から行われている矯正の方法です。表につける場合と裏につける場合がありますが、このうち歯の裏側にブラケットつける方法では、正面から見ても矯正装置が見えないので、外見が気になりにくいメリットがあります。また裏につける方法では、虫歯になりにくいというデータもあります。舌で矯正装置にさわるので、異物感が気になる人もいますが、1週間ほどすると慣れる人が多いですね。

最近では、マウスピースを使った矯正方法も出てきています。取り外しができるのはメリットとなります。一方で、歯を動かす力は弱く、歯並びの悪さがさほど目立たない簡単な矯正に使われることが多いとされていました。ですが、日々進歩しており、最近では、難しい場合でもできるようになってきました。歯医者さんと相談するといいと思います。

また、複数の方法を組み合わせて治療を進めることもあります。部分矯正は、歯を抜いたときに、歯が傾いてくるときがあり、そうしたときに歯を元に戻すときに行うことがよくあります。また、小さなインプラントを使った矯正をすることもあります。小さなインプラントを埋め込み、そこからゴムをつけて歯を引っ張るのです。全体の矯正でも使われますが、部分矯正でも行うことがあります。

さらに、最近では、コンピューター上で、3Dで歯を動かしてシミュレーションを行って、矯正の計画を立てられるようになっています。治療を始める前に、治療後をイメージすることができます。

Q.矯正の治療の手順はどのようになっていますか。期間や来院に必要な回数は?


まずはみなさん検査を受けることになります。矯正治療のためのレントゲン検査を行って歯の状態を調べたり、歯の模型を作ったりします。また、コンピューター上で3D画像を作ることもあります。そうして矯正をどのように行うか計画を立てるのです。その上で治療を進めていくことになります。治療にかかる期間は、歯並びやかみ合わせの状態によって変わります。簡単な歯並びの矯正でしたら、半年程度で完了する方もいますが、一般的には2~3年かかることが多いと思います。

よく聞かれますが、子どもの矯正のときには歯が生えかわったり、あごが成長したりしますからそれ以上かかります。6歳から始めて13歳くらいまで7年くらいかかることもあります。矯正治療は乳歯から永久歯が生えそろうまでの1期治療、永久歯が生えてからの2期治療と大きく2つの期間に分かれてくるのが一般的です。

成人では、あごの問題があるときには、通常よりも長い期間をかけて治療を行うケースもあります。

どの矯正治療においても、矯正が終わった後も歯は動き続けます。ですが、理想的な位置にとどまってもらいたいのです。そのために取り外しのできる保定装置、リテーナーと呼ばれる器具をつけて、歯の位置が安定するまで待つことになります。1年以上は保定装置を使うようにする必要があります。1~2年間つけておくことになるでしょう。矯正の治療は1カ月に1回ほどの頻度で歯医者さんに通うことになるのが一般的です。3~4週間で歯は吸収と再生を繰り返していますので、そのペースに合わせて矯正治療を進めていくためです。

顎骨を削って刺激を与えて歯を早く動かす方法もあります。個人差が大きいので、費用も期間も、いろいろあります。始める前によく相談するとよいでしょう。

Q.矯正を行うとどのようなメリットがあるのですか。

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見た目がよくなるのはもちろんですが、重要なのはやはり本来の口腔機能を取り戻せることだと考えています。普通に食べ物をかめて、飲み込めて、声もきちんと出せて、鼻から呼吸ができるようになるのが目標です。そうして栄養がきちんと取れて全身が健康になります。歯並びが悪いと、歯に汚れがたまりやすくなるなど口の中のトラブルが起こりやすくなります。矯正治療を受けることで、虫歯や歯周病になりにくくすることもできます。口臭や口の中を間違ってかみ切ってしまったりするトラブルも防ぐこともできます。

本来の口腔機能と比べて、今の自分はどうなのか知ることが大事です。自分は自分しか知らないので、意外とわからないものです。

Q.逆に矯正のデメリットは?矯正の治療には痛みがありますか。

歯列矯正による痛み
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矯正治療を受けているときには、矯正装置を口につけたままになりますので、外見を気にする人もいると思います。また、とくに矯正治療をはじめたばかりのときは、歯を圧迫することから、多くの場合にはかみしめるときに痛みを感じます。一時的には食べ物の制限が出たり、舌がぶつかったりすることがあります。吹奏楽器を吹いている人だと吹くことが難しいときもあります。たいていは2、3日、長くても1週間ほどで痛みは引いてきます。 多くの場合は心配はありませんが、まれに矯正治療をやめようという人もいます。ですから、治療の最初のころは食べ物をやわらかいものにするように工夫します。矯正の副作用として、歯の根が短くなったり、顎関節症になったりするケースもあります。そうしたときには適切な治療を受けるとよいでしょう。

Q.歯医者さんから矯正を説明を受ける時に気をつけることは?矯正を受ける歯医者を選ぶポイントは?

説明する歯列矯正医
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歯の矯正治療には、一般的な歯の治療と比べると特殊な治療になります。ですから歯の矯正の実績がある医院で受けることが望ましいと思います。矯正を受ける前には、何件かの医院で相談をしてみて、自分の悩みにきちんと受け答えしてくれる医院を選択することもよいと考えます。かみ合わせや飲み込み、発生や鼻呼吸など口腔機能について話してくれるところがいいのではないでしょうか。

矯正治療を始めるに当たって、検査からわかった歯並びの現状や治療の見通しについて書面で説明してくれるところがいいと思います。その上で、矯正治療の同意書も作ってくれるところがいいでしょう。そこには引っ越しなどで治療が中断したときの条件についても書いてあるはずです。矯正治療は長期間に及ぶために途中で引っ越す必要があるときがよくあるのです。そのときにどうするかの説明を最初に受けておく方がよいと思います。

また歯の矯正治療は長期間に及びますので、ときには歯医者さんと合わないと思うケースがあるかもしれません。そうしたときには、矯正治療を中途半端にやめたり、別の医院にかわってしまったりするのは、治療の進め方や費用の面から好ましいとは言えないケースが多いと思います。主治医に不満なども含めてお話しすることがよいと考えられます。

Q.矯正にかかる費用は?

歯列矯正にかかる費用
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遺伝性疾患などの特殊な病気が原因となるケースを除くと、一般的に歯の矯正治療には健康保険が適用されませんので、自由診療となります。ですから、医院によって費用も異なってきます。

一般的な歯の表面からブラケットをつける治療の場合、初診から治療の完了後2~3年の治療で80万円前後というところが一般的です。裏側からの矯正ですと140万円前後になり、マウスピース矯正は90万円前後になります。難易度によって変わってきますので、大まかな目安として捉えて下さい。一部だけの矯正ならば、10万円~30万円前後でしょう。

Q.矯正が完了した後の歯医者さんはどうすれば?


歯の矯正が完了してからは、みなさん普段通りの生活をしていますね。歯の矯正治療後は、矯正治療中にあったような食べ物の制約がなくなります。ただし、矯正装置を外した直後は、歯が動きやすい状態にもなっていますから、リテーナーと呼ばれる保定装置を使うことが大切です。歯が後戻りしたり、変に動いたりしていないか、矯正治療を受けた歯医者さんに通うとよいでしょう。定期的に相談するとよいと思います。歯の健康については、一般的な対策と同じように、定期的に歯医者さんで歯を点検してもらい、専門的なクリーニングを受けることが望ましいと思います。
医療法人メディスタイル理事長  徳永淳二先生

徳永淳二(とくなが・じゅんじ)先生歯科医師。医療法人メディスタイル理事長。 「美しく健康な生活を医学の力でサポートします」のコンセプトの下で、美容皮膚科と形成外科、歯科の診療を同じクリニックで提供。東京医科歯科大学を卒業後、勤務医などを経て、スウェーデンのイエテボリ大学にてDr.ウィドマークに師事し、神奈川県逗子市にて開業。逗子メディスタイルクリニック

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