冒険家・角幡唯介氏、ノンフィクション本大賞で熱弁“斜陽産業”の矜持


インターネットニュース配信サービスの「Yahoo!ニュース」と、書店員が勧めたい本を投票で決める「本屋大賞」が連携して実施する「Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞」の発表会が8日、都内で行われ、作家で冒険家・角幡唯介氏の『極夜行』(文藝春秋)が大賞を受賞した。

同賞は、良質なノンフィクション作品を人々に伝え、優良な書き手や出版社、書店の支援を目的に今年初めて設立。対象となるのは、2017年7月1日から2018年6月30日の間に日本語で出版されたノンフィクション作品全般(海外作品の翻訳本は除く)。大賞受賞者には、副賞として取材支援費100万円が贈呈される。一次選考では全国書店員の投票によってノミネート10作品が選出され、本屋大賞実行委員による二次選考を経て大賞1作品が決定した。

『極夜行』は、角幡氏が冬の北極で太陽が昇らない「極夜」を目指した4カ月間を記した作品。登壇した角幡氏は、「ノンフィクションは斜陽産業ですから」と笑いを誘いつつ、「はっきり言って売れないわけですよ。スマホの時代で本がなかなか読まれなくなってきた時代で、ノンフィクションはかなり厳しい」と補足。そのような背景で同賞が新設されたことに対して、「違和感じゃないですけど、何か唐突な感じがした」と率直な感想を述べた。

なぜ、この時代に新設されたのか。その理由を考える中で、「(現代は)何かを知るということに対しての錯覚。価値が置き去りにされている」と実感。「情報や事実は当然、ものすごく労力がかかっている」「ネット上で出てくるのは結果でしかない。その過程が見えなくなっていて、今の人たちは検索したらすぐに答えが出てくることに慣れてしまって。情報や事実を手に入れるためには、リスクと労力をかけなければいけないということが分からなくなっている」とスマホ依存が加速する現代に警鐘を鳴らす。

そんな角幡氏にとって、ノンフィクションで不可欠なのは、「出来事が生成して、今この瞬間に何かが起きている。その現場に自らが立ち会う」現場性、「立ち会った人に話を聞く。自分の体を使って現場に行く」当事者性。「事実というのは、誰かが教えてくれるものじゃない。事実は自分で認定するもの」とし、「自分の精神と体が出来事に反応して化学変化を起こす。感じる、感動する、震え慄く、不安になる。そのときに出来事が自分にとって切実なものとなる。自分にとって切実なものじゃなければ、その事実は普遍性を持ちえない。自分が感動しない話をしても、読者の心に届くわけがない」と熱弁した。

当初は違和感があった同賞だが、「ヤフーと本屋大賞は時代に抗う気、戦う気だなと。どんどんやってほしい」と思い直し、「僕がそういう賞の第1回の受賞者に選ばれたのは、ものすごく栄誉を感じます」と喜びを伝える角幡氏。「来年以降もどんどん良い本を選んで、それを読者に届けて『何かを知るということはこういうことなんだ』ということを伝えてほしい」と期待を寄せ、「本当にありがとうございました」と感謝の言葉で締めくくっていた。

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