ドリカム、稲葉浩志ら錚々たるアーティストのサポートを務め、ソロとしても多彩なサウンドを紡ぎだす、JUONとは何者なのか?

SPICE

2018/11/8 19:00

ダブステップ、EDMが繰り出すダンスビートと、フィジカルにくるロック。スタジアム級のロックバンドを想起させるサウンドから、ブラックミュージックをベースにした洗練されたネオソウル感までを一枚に融合させた、奇跡的かつ贅沢な作品。それがJUONのニューアルバム『HOPE IN BLACK』だ。これをここまで同次元でできてしまう人は、いそうでいなかった。FUZZY CONTROLのギター&ボーカルとして活躍後、DREAMS COME TRUE、B'zの稲葉浩志、スガシカオ、現在は三代目J Soul Brothersの登坂広臣のソロのサポートも務めるJUON。曲を作り、めちゃくちゃカッコいいギターも弾いて、歌う、JUONとは一体何者なのか?

自分は辛いものをプラスにして生きていくしかなかった。ヤバいこと、大変なこと、辛いことがあったからこそ、今、それが俺のパワーになっている。


――EDMやダブステップをロックと融合させたロックバンドはいるけど、それとまったく同じテンションで心地いいネオソウルまでやれちゃうミュージシャンて、いそうでいなかったですよね。

まじっすか!

――ええ。JUONさんはなんでこんなことできちゃったんでしょうか?

これはミュージシャンだった両親が、昔っから60年代、70年代の洋楽を聴いていて。お父さんとお母さんの音楽性の豊かさがよかったんだと思います。ロックがメインだったんですけど、オールジャンル聴いてたんですよ。カーペンターズからプラターズ、レッドツェッペリン、ビートルズもあって。さらにそこにポップな女の子のアイドル、ノーランズとかも聴かせてもらってたので。音楽の幅は両親から貰ったものだと思います。だから、ロックなんだけど、そこに違う要素を入れる作曲方法が自然と身についていたんです。

――なるほど。そこはナチュラルボーンというか、生まれながらにしてルーツがクロスオーバーサウンドだったんですね。FUZZY CONTROLでは、JUONさんのなかでそこまで同じテンションで音楽がクロスオーバーしているところは見えなかった。

FUZZY CONTROLというのは、俺もそうだし、SATOちゃん(SATOKO・Dr)もJOE(Ba)も、全員テンションが高いんですよ。3ピースってそういう個々のぶつかり合いだから、一人ひとりの“我”が半端ない。そうやって3人で作った音がバンドサウンドになって、3人でしかできない音楽に行き着くので。自分がこういう世界を入れたいと思ってても、そうじゃなくなることも多々あったんです。だから、他の音楽性が見えたり見えなかったりというところはあったと思います。バンドでは、自分が生音のなかでずっと演奏して歌ってきたので、自分がソロをやらせてもらうとなったとき、デジタルの音楽に自分の歌とギターを乗せてやることがまず自分のなかで“新しい”と思ったんです。

――デジタルと自分の歌とギターの融合に新しさを感じたきっかけはなんだったんですか?

2年前にラジオを聴いてたときですね。ラジオはいつも聴いてるんですけど、米軍がやってるAFNを流してると、全米ビルボードチャートのいまの音楽と、昔流行った曲がずっと流れてるんですよ。そこに、アヴィーチーとかゼッド、スクリレックスというDJが作るEDMサウンドがいきなり流れてきたんです。“これキター!!”と思って。

――あれは“コレキタ感”ありましたよね!!

ね! これに自分の歌とギターを乗せて、自分なりのフィルターを通してやったら絶対新しい風が吹くだろうなと思って、まず彼らのことを調べたんです。そしたら全員バンド出身なんですよ。

――そうそう! そこのフィーリングがね、他のDJの人たちとは違って。

ミュージシャン心をくすぐるんだと思って。音を流すだけのDJじゃなくて、“超プレイヤーじゃん!”って思って。彼らはバンド出身なのに“生音じゃなきゃいけない”っていう固定概念から外れて、あの生音だけじゃ作れない音にたどりついたんですよ。“これ新しくない?”、“いいね、最高じゃん!”っていうのをやりきってる。そこに感銘を受けて。自分も音楽に対してボーダーレスな考えは昔からあったからこそ、それが自信につながって。自分がやってきたロックと、僕を新鮮な気持ちにさせてくれたEDM、ダンスミュージックを合わせていいものを作れないかなっていうところから曲作りに入ってって。それで1枚目の『CHANGE THE GAME』というアルバムを作ったんです。

――1枚目でEDMとロックを融合させてみて、どんなことが一番刺激的でしたか?

デジタルの音に自分の声を乗せることで、いままで自分が聴いたことがない声が聴こえたんですよね。生音だと周波数的にかき消されてしまう声の成分が出てくるんですけど、デジタルだといい意味で水と油になって、自分の声が沈んでいかないんですよ。それで、俺ってこんな声してたんだって気づいたことが、超エキサイティングで。ギターも入れてみたら、いい意味で混ざらないんですよ。

――声と同じように。

ええ。ちゃんと浮き出るんです。これはデジタル、これは生音、というのが綺麗に分かるんで面白かったですね。あと、クラブとかにゲリラで入ってプレイしたりもして。いままでやったことなかったんですけど。アコギを持って、DJと一緒に、いきなりクラブで踊ってる人のなかに入っていって演奏したんですけど。やたら動いて汗かいちゃって。

――いつものライブのように。

あれはもっとBe Coolでもよかったなと今は思うんだけど。そういう力が入っちゃう感じも新鮮で。レコーディングでもゲリラライブでも、確実に自分はいままでとは違うことをやってるんだというのを感じられたのがよかったですね。自分にプレッシャーをかけて前に進んでいくのが好きなタイプというか。そうやって生きてきたので。直感で感じたことを実行するのは怖いんですけど、いっつも“ワクワク”が勝っちゃうんですよ。悩みとかも、すっごい悩むんですけど、寝て次の日になると、昨日よりも悩みが薄くなったって少しだけ解決したりする(笑)。そこは自分の才能かな、と思ってます。

――その、ネガティブな先にポジティブを見つける思考回路は、そのまま2ndアルバムのタイトル『HOPE IN BLACK』につながってるじゃないですか!

そうなんです。この2年間ソロをやってきて、その間に自分の母が亡くなって、お空に行っちゃったことが、自分にはなかなか辛いことで。

――お空に行っちゃったという表現、いいですね。

そこ感じてもらえてありがとうございます(笑顔)。自分は、母が亡くなって、もうこれ以上寂しいこととか辛いことはないなというのを経験した気がするんですね。目の前が灰色になったり真っ暗になるんだけど、でも自分の母だったら真っ暗な悲しみのなかにずっと居続けることを望んでいるか?っていうと、絶対に違うと思うし。前に進んで、笑って“イェー”って音楽やってほしいと思ってる気がするんですよ。なので、真っ暗なんだけど、そこにどうにか希望を見つけにいかなきゃいけない。というところでこのタイトルをつけさせてもらいました。友達とか家族の支えももちろんあるんですけど、結局、暗闇のなかに希望を見出すのは自分に鞭打たなきゃいけないんだなという思いも、タイトルの中に込められています。

――それがアルバムの幕開けに入ってるインスト「HOPE IN BLACK」ですか?

これは、Ju-ken(Ba/VAMPS等のサポートで活躍)さんとDUTTCH (Dr/UZMK) さんとhico(Key/HYDE等のサポートで活躍)さんとDJ NAKEDと一緒にせーのでレコーディングしたんですよ。音楽は引き算で洗練されていくんですけど、これをは引き算ゼロ。足し算の美学。ぶつかった音もぶつかったままでいい。一緒にやったミュージシャンもそれぞれ辛いことがあったと思うし。それが集合体になってぶつかり合えばいいよという気持ちで、決め事もなくやったら……。

――こんなにカオスなサウンドに。

みんなやりきってますね。今回のアルバムのジャケット、真っ黒なんですけど、これ、黒を塗る前に赤を塗って、青を塗って、黄色を塗ってって、いろんな色を重ねたあと、最後に黒を塗ってるんですよ。それを、ところどころヤスリで削って。想像のなかでは、削るごとに黒の下にある赤や黄色、いろんな色が見えてくるという。『HOPE IN BLACK』という言葉が、このグラフィックでより深い意味合いを持つようになったんです。

――素晴らしい! アルバムもそのグラフィックと同様、カオスなオープニングの下に何層にもカラフルな色彩がミルフィーユのように折り重なっていて。ロック×EDMでどんどんテンションを上げて、真ん中あたりからネオソウルで体をゆったり揺らしたあとは、下のほうでシンプルな歌で心を浄化、そして最後の一層でHOPEFULLな光待つ世界へと連れて行ってくれるような作品ですからね。

ありがとうございます。そうなんです。


――2曲目の「We Gotta Go」から「BLACK FIRE feat.TeddyLoid」、「THIS IS THE STAR!!!」。ここはスタジアム級のロックフェスで見たら本当に気持ちいいだろうなという、エモいナンバーが次々やってくるゾーンで。

そのなかで「BLACK FIRE feat.TeddyLoid」は、NEWSに楽曲提供した曲を初めてセルフカバーさせてもらいました。これをNEWSのみんなに「ヤベーじゃん!」っていってもらいたいなというのがあったので、プロデューサーのSHIKATAさんに相談したらTeddyLoidさんを紹介してくれて。彼がちゃんみなとコラボしてる曲でめちゃくちゃエグい音で、スクリレックスみたいなドープな感じで作り上げたものがあって、もしかしたらこの人とコラボしたらヤバいかもしんない、よりエグい「BLACK FIRE」になるんじゃないかと思ったので、音源を最初からすべてレコーディングし直して。それをTeddyLoidさんにデータで渡して、アレンジしてもらったら、めちゃくちゃカッコいいのができました。Teddyさんありがとう。自信満々でNEWSに聴かせることができます(笑顔)。

――5曲目の「ZETTAI」はアルバムのなかで一番キラキラのポップスに振り切った曲になってましたけど。

これは、自分のなかでは韓流の楽曲のイメージがあって。

――確かに、いわれてみればK-POPですね。

さすがにFENから韓流は流れないけど、新しい音楽は知っておきたいから、自分から聴きにいくんですけど。

――BTSは、いまやアルバムが全米TOP1ですから。これは聴いておかなきゃと。

ええ。この曲はK-POPを意識して作った曲だったので、それをBTSやBIGBANGのプロデューサーでもあるSHIKATAさんに渡して。SHIKATAさんのエッセンスでブラッシュアップしてもらうことが重要だったんですよ。自分のなかでは「ZETTAI」を作れてよかったと思ってて。ポップスだしキラキラしてるんだけど、変に派手じゃない。その中間でキラキラしてるのがよかった。これならマニアックな人も、K-POPしか聴いてない人、ポップスしか聴いてないよという人にも気にしていただける空気感になってるんじゃないかな、と。

――中盤は6曲目「my girl」から8曲目の「SMOOTH!!!」までネオソウルなプロダクションゾーンとなる訳ですが。

こういうのも、自分ではすごく自然なんですよ。ブラックミュージックはサンタナとかバリー・ホワイト、アース・ウインド・アンド・ファイヤーは前から聴いていたんですよね。70年~80年代のロックと同時進行で、そういう音楽もどっぷりではないですけど聴いてて。マイケル・ジャクソンとかもどっぷりではないんです。だから、気がついたらこういう音楽のエッセンスを持ってたっていう感じなんですよ。例えば「my girl」っていう曲も、セクシーな曲を作ろうと思って楽曲に取り組んでたら、勝手にマイケル・ジャクソンの世界とかいろんなものがアイデアをくれるんです。誰がくれてるのか自分でも分かんないんですけど(笑)。

――小洒落すぎない、けど洋楽っぽいメロディーラインとかもすごくセンスありますよね。本当に心地いいんですよ、これが。

ホンネ(HONNE)とか、UKにはブラックミュージックを現代の音楽に合わせて作ってる人たちが多くいて。それを聴いたりして、新しいエッセンスを貰った感じはあります。それも全部ラジオからきてるんです。“なんだこれ?”ってなって、そこから調べて。

――これがSpotifyではないのがJUONさんなんでしょうね(笑)。

Spotify、入れたけどよく分かんないです(笑)。ラジオがいいんです。あと、自分が歩いてて流れてくる音楽がひっかかったら、検索したりもします。なんだろう……“必然”なんですよね、自分の耳に入ってくる音楽って。自分がゲットしなきゃいけないはずの音楽が流れてくるんですよ。“ヒント”はすごく近くにあるので、そのヒントをゲットするようには心がけてます。例えば「my girl」にしても、「my girl」じゃないような音楽のところにヒントがあって。そこからフレーズを入れてきたら辻褄が合ったとか。アレンジは、そんなのがいろいろ織り混ざってるんですよね。暗い音楽だから暗い音楽のなかにしかヒントがないと思っていたら、実はその暗い音楽に合うフレーズが楽しい音楽にあったりする。そういうのは、音楽を広く見てないとできないと思います。

――そうして、アルバムは「フレー」、「Shining Us」でエンディングを迎える訳ですが。「フレー」はいい曲だし、歌詞がたまらないです。

最高ですね。変な話、これは人生で1回しか訪れない母の死があったからこそ書けたもので、母がお空に行かなきゃ書けなかったと思う。自分はこの「フレー」という楽曲とともに生きていくんだなっていう、人生を共にする曲の一つになりました。この曲は自分の背中を押す応援歌になってるんですけど、同じ気持ちを抱えてる方々の心もちょっと支えられるような曲になってくれたら嬉しいなという思いがあります。


――そういう魂を浄化するような曲だし、パーソナルな曲だからこそ、今作に「フレー」を入れることに抵抗はなかったですか? この曲を入れなくても、この後の「Shining us」でアルバムはとても綺麗にフィニッシュできましたよね?

そうなんですよ。だから最初は抵抗ありました。でも、レコード会社の方々、事務所の方々が「フレー」は入れた方がいいといってくれて。俺も入れたい思いはあったんですけど、不安もあって。けど、入れたらめちゃくちゃこのアルバムの意味合いが色濃くなったんです。

――これがあることで『HOPE IN BLACK』の深みと重さがぐっと増す気がします。

自分一人の力ではこの「フレー」を今作に入れることができなかったので彼らに感謝です。そしてこの「フレー」があることで、次の「Shining us」が逆にもっと意味のある曲にもなったんです。『CHANG THE GAME』に「NO ONE IS ALONE」という曲があるんですけど。これは、誰も一人じゃないというメッセージが入ってるんですけど、俺は小学校、中学校時代にいじめられてたんですね、女の子に。

――なんでですか?

髪が長かったから、不潔とかいわれて。それで一人ぼっちだった。家族も離れ離れで、いつも家にお父さんとお母さんがいて、という家庭じゃなかったんですよ。だから、家に一人でいる時間がかなりあって。友達とかに「俺さ、今日食べるご飯がないからお母さんにお弁当作ってもらっていい?」、「OK、頼んでみるよ」って。小学生の頃からそうやってサバイバルしてきたんですね。そのなかで唯一、自分が夢中になれたのが音楽、ギターだったんです。ギターを通して友達ができて、ギターを通して悲しみとかに打ち勝つ術を見つけて。自分の歌で、ギターでみんなが笑ってくれるなら最高じゃんっていうところまでたどり着けた。そうなるまでには友達や周りの人がいたからこそと思ったので、“誰も一人じゃない、この音楽を聴いてるときは大丈夫だし、大切な人はそばにいるから”と伝えたくて『CHANGE THE GAME』を作ったんですけど。メッセージ的には『HOPE IN BLACK』もそこは変わってないんですよ。このアルバムが終わった後に、明日も頑張ろうって思ってもらえるようなものにしたかったので、そこは同じ。ただ、この2年間のなかで母のことがあり、「フレー」という曲があって、『HOPE IN BLACK』を迎えた。その違いは大きくて。昔から自分は辛いものをプラスにして生きていくしかなかった。ヤバいこと、大変なこと、辛いことがあったからこそ、今、それが俺のパワーになっている。同じ気持ちでいるみんなの心を少しでも和らがせてあげたらなと思います。

――ワンマンツアー『CHANGE THE GAME 10音 2018』はどんなものにしたいですか?

ソロのJUONとして完成したライブを見せることができると思います。1枚目のアルバムで自分の音楽性がガラッと変わったので、“すごくいい”っていってくれる人と、“?”が浮かんでどうやって自分のなかで消化していいのか分からないという人もいたと思うんですね。だけど、前のワンマンライブをやったときにその“?”マークがちょっと薄れてきたので。自分がこうしてアルバムを2枚出して、その間、登坂(広臣)さんを始めいろんな方々のステージでギターもやらせてもらって、いろんなものを吸収させてもらった。そこで成長させてもらったものを、今回このワンマンライブで全部出しきって。“ライブに来てよかった、明日も頑張ろう”って、“音楽っていいよね”、“いい音楽聴いたあとって見える景色が楽しいよね”というところに自然と人の気持ちがなっていく。そんなライブにしたいなって思います。なので、みんなに観てもらいたいですね!!

取材・文=東條祥恵


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