広島・丸、西武・浅村…FA権の行使は裏切り行為なのか



裏切り者! まさか出ていくわけないよね? プロ野球のオフシーズンでは、しばしばこのような言葉が聞かれる。FA(フリーエージェント)を宣言した選手に対するファンの声だ。応援しているチームから中心選手が離れるのは辛いため、その気持ちも分からなくはない。

しかし、権利は選手のもので行使するのも自由である。今オフは広島・丸選手、西武・浅村選手らの名前が毎日のように取り上げられているが、FA権を行使することは裏切り行為なのだろうか。

・FAとは
本題に入る前にFAについて説明しよう。FAとは、いずれの球団とも選手契約を締結できる権利をもつ選手のことを指す。145日以上を出場登録されることで1シーズン、これが8シーズンに達したときに取得できる。簡単に言えば、一軍に8年近くいる(例外あり)と選手は他へ移籍する権利を得られるのだ。

では、彼らはなぜ移籍を希望するのか。それは移籍先がよりよい環境の可能性があるからだ。理由は選手によってさまざま。「優勝できるチームに行きたい」「出場機会が欲しい」「地元の球団でプレーしたい」、口にこそ出せないが「もっとお金が欲しい」という選手だっているかもしれない。

・厳しいプロの世界
おそらく、数ある選択肢のなかでも「年俸」は大きなウエイトを占めるだろう。プロ野球は華やかな世界に見えるが、一流として活躍できるのはほんの一握り。さらに、怪我や年齢による衰え……選手生命とも戦わなくてはいけないからだ。

ほとんどは名前さえ覚えてもらえず、志半ばで野球をやめなくてはいけない世界──。押しつぶされそうなプレッシャーに耐え、厳しい競争世界で生き残ってきた彼らには、きれいごとですべて片付けられない部分があって当然だろう。

・サラリーマンで考えてみる
これはサラリーマンに置き換えると分かりやすいかもしれない。今の会社に自分の居場所があったとしても、他社から現在以上の給料を用意されて なびかない といえば嘘になるだろう。もし誘いがあれば、やりがいや金銭面などを考えに考え抜き、自分が後悔しないような決断をするはずである。

そう考えると、FA宣言をする際に選手たちの「他の評価を聞いてみたい」という発言も納得できる。たとえ残留を念頭に置いていたとしても、評価を聞くのは自分を見つめ直すことに繋がる。ましてや彼らはプロ選手で1年1年が勝負。すぐにクビがちらつく世界で、自分をより高く評価してくれる場所で働きたいと思うのは自然なことだ。

もちろん、球団だって「もっとも物差しとなるのが金額」というのを十分理解している。各球団で懐事情は違うが、本当に欲しいと思えば相応の給料を提示するし、複数年契約や出来高など最大限の誠意を見せる。

・裏切りではない
移籍のオファーがあることはそれだけ実力が認められている証だが、彼らだって1人の人間だ。長い間、袖を通してきたチームに愛着がない訳ないし、育ててもらった恩だって感じることだろう。ただ、人生一度きり。ファンあってのプロ野球ではあるが、たとえ移籍したとしても自分の悔いのないように決断した結果なのだ。

おそらく、愛するがゆえに移籍へのバッシングは出てくるだろう。しかし、大きく環境を変えるのは勇気がいるしリスクも伴う。彼らもようやく権利を取得し、苦しんだ上で決断している。FAで移籍したとしても、選手たちは決して裏切り者ではない。

参照元:日本プロ野球機構
執筆:原田たかし
イラスト:稲葉翔子

この記事をロケットニュース24で読む
Related Stories

あなたにおすすめ