「患者の9割は一般市民」…紛争地で日本人看護師が目にした光景とは?

TOKYO FM+

2018/11/7 19:30

ピーター・バラカンがパーソナリティをつとめ、毎回さまざまなゲストを迎えて生き方や価値観を探っていくTOKYO FMのゲストトーク番組「Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM」。10月26日(金)の放送では、「国境なき医師団」の看護師・白川優子さんに紛争地の現状について伺いました。


写真右からピーター・バラカン、白川優子さん、柴田幸子

国境なき医師団は、1971年にフランスの医師とジャーナリストのグループによって設立された、非営利で国際的な民間の医療・人道援助団体です。世界各地の紛争地や自然災害に襲われた場所に駆け付け、人種や宗教、政治的な関わりを超えた医療活動をおこなっています。

白川さんが国境なき医師団を知ったのは、7歳のとき。何気なく観ていたテレビ番組に衝撃を受け、看護師の道を志したそうです。そして、20代半ばに国境なき医師団の募集説明会に参加したものの、英語またはフランス語を共通言語とすることから一時断念。コミュニケーション能力としての英語取得のためにオーストラリアに留学して現地の病院でキャリアを積み上げ、36歳のときにようやく夢を実現させました。白川さんは、国境なき医師団に登録して以来、紛争地のシリア、イラク、パレスチナなど9ヵ国に17回派遣されてきました。

国境なき医師団が医療を提供する現場は、紛争地のほか、自然災害地や感染症の蔓延地域、難民キャンプなどさまざまです。これまで、紛争地への派遣を数多く経験してきた白川さんですが、初めて現場に赴いたときは「とてもショッキングだった」と当時の心境を振り返ります。そこで実際に目にしたのは、目の前で血を流す人、ときには人間の原型をとどめていないような凄まじい状態の人もいたそうです。
次々と運ばれてくる患者は、兵士や戦争に加担している人物であろうとどんな人であれ、ひとたび病院の門をくぐれば「医療を必要としている人として、あくまで中立の立場として収容するのが国境なき医師団」だと白川さんは言います。とはいえ、運ばれてくる患者のおよそ9割は一般市民だそうで、白川さんは「銃で撃たれたり、空爆や砲撃、地雷などの爆発物による被害に遭った人々。血を流し、泣き叫んで恐怖にさらされている人たちばかり」と悲痛な状況を語ります。ときには、薬や物資が不足している地域で治療にあたることもざらで、救えないことも多々あると言います。しかし、「救えない命で立ち止まっていられる時間はない」と話す白川さん。血を流し、今にも死にそうな人が次々と運ばれてくるため、否が応にも「切り替えなくてはいけない」と切実な心境を口にします。

そんな彼女が現地でいつも心がけているのは、「そこにある薬と人材で何ができるか常にベストを考えること」。そして、悲惨な状況下で理想の医療を提供することはできなくても、「看護師だからこそ患者さんに寄り添うことはできる」とも。イラクに派遣されたときには、過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員の子どもが運ばれてきたこともあったそうです。親を亡くしたその子どもに対する現地のイラク人の医師や看護師たちの「愛ある接し方に非常に感動した」とそのときの思いを明かしました。
白川さんはいつも現地に赴く際、なぜその国が医療を届けなくてはならない状況に陥っているのか、戦争がどのように始まったのかを把握するためにさまざまなことを調べるそうです。しかし、どの紛争地に入ろうとも「一番犠牲になっているのは一般市民であることは変わらない」と白川さんは声を大にしました。

8年にわたる自身の活動を振り返り、もしも初めて説明会に参加した20代半ばのときに「情熱だけで入っていたとしたら、心が折れてしまっていたと思う」と言うほど、心が引き裂かれるほどの光景を目の当たりにすることもあったそうです。登録するまでの約10年間でさまざまな経験を積んで、人間的にも成長を遂げたことで「どんなことを見ても現実を受け止められるだけの心の力が付いていた」と言い、今思えば国境なき医師団に入ったのが36歳のときで良かったと話す白川さん。自身の経験から国境なき医師団に向いているタイプについて、「体力はもちろん、精神的に強い人。思うように進まないことが多いため、柔軟性や適応力が求められる」とのこと。また、1つのことに立ち止まっていてはいられない環境下のため「いい意味で鈍感力も必要」と話していました。

白川さんは、「悲惨な現場でもがんばっている人々の姿を見ると涙も出るし、希望も見い出せる」と語り、最後に「私のように国境なき医師団に参加してくださる方は大歓迎。こういう現場があるということを知ってもらい、広めていただいたり……自分の周りになりたいという人がいたらぜひ応援を」と呼びかけていました。

なお、この日の放送の模様は、ポッドキャストで聴くことができます。
また、白川さんの著書「紛争地の看護師」(小学館)も絶賛発売中です。興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

<番組概要>
番組名:Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM
放送日時:毎週金曜 18:30~19:00
パーソナリティ:ピーター・バラカン
アシスタント:柴田幸子
番組サイト:https://www.tfm.co.jp/podcasts/museum/

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