「カッコつけてるとチャンスを失う!」“変態紳士”高嶋政宏の恥捨て人生のススメ

日刊サイゾー

2018/11/7 17:00


   最近、ドラマや映画などで名演技を見せる高嶋兄弟の評価がうなぎ上りだ。2人とも50歳を越えて円熟味を増し、ドラマ界・映画界になくてはならない名優としてのポジションを築いている。さらに、そんな兄弟の兄の方・政宏氏は、プログレッシブ・ロック(プログレ)やSM趣味全開の面白トークでもブレーク中。10月に発売されたエッセイ『変態紳士』(ぶんか社)では、自身のSM愛をはじめ、駅弁愛やグルメネタ、健康話、スピリチュアルな体験などをつづり、俳優業以外にもさまざまな分野で、有り余る情熱と奔放さで活躍を続けている。そんな政宏氏が、著書のことやSM趣味、音楽トークイベントでの失敗などについて語ってくれた。

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――タイトルや表紙(裸の高嶋がSM用の首輪を着けている写真)を見るとすごいインパクトですが、最後まで読むと肩の力が抜けるといいますか、現代社会で閉塞感を感じている人にぴったりの本だと思いました。

高嶋 ありがとうございます!

――本が出来上がってみて、ご自身の感想はいかがですか?

高嶋 そうですね、エッセイなんで、つれづれなるままにつづっていったという感じです。本当はもっと濃い内容だったんですけど、編集さんから「ここはさすがに濃すぎるから……」などと言われて削った部分もいっぱいあるんですよ。

――本来なら、もっと濃かったと(笑)。周囲の反響は、いかがでしたか?

高嶋 いろいろ感想を頂きましたけど、一番うれしかったのは、北関東に住むM女が「SM嬢は後ろ指をさされるような仕事で辞めようと思っていたんですけど、本を読んで、この仕事を続けていく勇気をもらいました」と感想を送ってくれたことですね。

――本職の方に勇気を与えるとは……! シンパシーを感じる人が多いんですね。

高嶋 そうみたいです(笑)。佐野史郎さんには「やっちゃったねー、バカだねー。読み始めから終わりまで、ずっと笑い続けてたよ」と言われました。佐野さんには以前から“同志”と言われていて、お互いに同じ部類の人間だと認識し合ってるんです。

――佐野さんも“変態紳士”なんですか!

高嶋 佐野さんは、特撮趣味がすごくて。あらゆることを追求する“変態”同士、通じるところがあるんですよ

――何かを表現したり、生み出したりするクリエイティブな人たちって、変態趣味が共通するものなのでしょうか?

高嶋 よく聞かれるんですけど、「アーティストだから変態的なものが好き」とかじゃないと思うんですよ。小学生が初めて焼き肉を食べて「なんてうまいんだ!」って衝撃を受けるのと同じで、偶然出会う出合い頭の事故みたいなものじゃないかと。僕もSMにハマる以前に、痛みに特化したショウやニューヨークでのトップレスのショウを観ているんですけど、イマイチ自分の中でヒットしなくて、ただそこに行っただけという感想だったんですけど……あっ、「行った」というのは「イッた」じゃなくてですよ?

――はい、わかっています(笑)。

高嶋 それが、たまたま仲良くなった女王様が経営している名古屋のお店でSMショーを見たときに、「これだ!」と感じたんです。

――偶然による出会いが、人生を左右するかもしれないんですね。そういった出会いをモノにするために、心がけていることってありますか?

高嶋 とにかく、自分が気になったところには“一人”で行くことです。誰かと行ったら、お互いに感想を言わなきゃいけないじゃないですか。もし一緒に行った人が「全然つまんないじゃん」って言ったら、友達関係を壊すのもよくないので、その人に感想を合わせてしまうことも多いと思うんです。自分の感想に素直になれないのはもったいない。人生は楽しいものなので、つらかったり、苦かったりしちゃダメですよ。

――いつから、そう考えるようになったんですか?

高嶋 父の病気や東日本大震災を通じて、人は突然死ぬんだって痛感させられたんです。まさか父が病気でこんなことになるなんて……。人間いつどうなるかわからないと考えるようなって、それから東日本大震災が起きて……。とても衝撃的で、価値観が一気に変わりました。やっぱり楽しくて元気なのが一番だ、と。元気だったら、なんでもできますよ!

――そう思うようになってから、何か変化はありましたか?

高嶋 まず、カッコつけたり、斜に構えたりしなくなりました。昔は高倉健さんや三船敏郎さんに憧れがあって、諸先輩方にも「俳優はあんまりしゃべっちゃいけない、プライベートを語ったらダメ」と言われて、そういうものだと思っていました。でも、今となってみると、あくまでそれは他者の美学で、自分のものではないんですよ。まあ、僕も若いころは取材でもそんな美学を語っていたと思うんですけど(笑)。でも今はそうじゃなくて、言いたいことは言うし、楽しくないとダメだと考えるようになりました。

――確かに、ここ数年の高嶋さんは、すごく自然体ですね。

高嶋 カッコつけているとダメ。ええカッコしいが一番ダメですね。それによって、さまざまなチャンスを失いますから、美学なんて関係ないですよ。「タバコを吸うのがカッコいいから、ぶっ倒れるまで吸う」とか「下ネタは言わない」「あれはやらない、これは見ない」とか決めちゃうのは、もったいない。やりたかったらやればいいし、言いたかったら言えばいい。人間は精神が弱いので、自分の精神が最も安定している状態をキープするべきなんです。

――バラエティ番組でも、生き生きと趣味を語ったりしていますよね。

高嶋 「バラエティ番組でベラベラしゃべるようなやつを、監督が使いたいと思うか!」なんて言われたりもしましたけど、バラエティ番組に出たからといって役がもらえなくなるわけじゃないし、むしろ逆ですよ。番組のプロデューサーがドラマ班や映画部に異動になって「これに出てください」って言われることもあります。自分をさらけ出せずに苦しくなるくらいだったら、全部言ってしまえ! いつ何があるかわからないですからね。

――なるほど。次の質問なんですが……って、それドリンクなんですね! 哺乳瓶かな?ローションかな? って思っていたんですけど(笑)。

高嶋 KISSとのコラボレーショングッズなんですよ。音楽はキング・クリムゾンが一番好きなんですけど、KISSのファンでもあって。これ、いいでしょ? 今日はKISSのポール・スタンレーとプーマのコラボスニーカー、キング・クリムゾンのシャツ、これはディスクユニオンで入荷予定だけど、購入人数がそろわないと難しいっていうんで個人的に買ったシャツなんですけど」

――SM以外でも、もともとプログレ好きとして知られていましたよね。

高嶋 以前、キング・クリムゾンのトークイベントをやったら、すごくウケましたね。「次やったら、また来てくれますか?」ってお客さんに聞いたら、みんな「行くー!」って言ってくれたんでで、気をよくして「クリムゾンをやったから、今度はKISSでやりたい」と思って、KISSのトークイベントをやったんです。でも、ファンからは「プログレを語ってたのに、なんでKISSをやるんだ⁉ あいつは節操がなくてダメなやつだ」と思われたらしくて……。200人くらい入る会場を押さえて、来たのは10人だけですよ(笑)。

――高嶋政宏のトークイベントに10人だけですか!

高嶋 開演直前になっても8人しか入ってないから、お店の人が客席にパーテーションを立てて通常営業を始めちゃって(笑)。チケットの売り上げもないから、ギャラもなし。それどころか、KISSの扮装メイクや衣装代5万円は自腹だったので、赤字ですよ! 事務所のスタッフからも「クリムゾンを語ったら、次もプログレにしなきゃダメ。いろいろやったら、そっぽ向かれるよ」って言われてたんですけどね……。友達の女王様も呼んで、ボンデージ姿で立ってもらったりもしたんですよ。KISSを語って、最後はお客さん全員が女王様に鞭を打ってもらって終了というイベントでした。

――壮絶なイベントですね……! この失敗で、何か教訓になったことはありますか?

高嶋 教訓は「いろいろやると、お客さんが来ない」ということよりも、「自分がやりたかったんだから、やれてよかったじゃないか」ということですね。たとえノーギャラで、5万円自腹で払っても(笑)。

――それでも、やってよかった(笑)。ボンデージ姿の女王様を隣に立たせてトークしているというのは、すごい絵面ですね。

高嶋 女王様に関しては一切説明しないで、ただ横に立っているだけ。これは面白いと思って、ある映画の完成披露会見でもやろうとしたんですけど、プロデューサーに止められてしまいました。

――面白いですけど、さすがにそれはダメでしょう(笑)。本当に好きなことをやっているようですが、最後に読者に向けて、高嶋さんみたいに好きなことをして人生を楽しむためのアドバイスをお願いします。

高嶋 とにかく、これからは健康が一番! 変態なことをやるにしても、きちんとした食生活と適度な運動、これは大切。それをやっていれば、仕事も趣味もバリバリ楽しめますよ! 普段はわからないけど、病気になって思うように動けない、できない、しゃべれないようになると、健康の大切さがよくわかります。僕の仲間のM女が、スカトロをやりすぎて腹膜炎になって、入院しましたからね。全身チューブだらけで入院している写真を送ってきて「これからは人間的な生活を心掛けます」って。変態こそ、元気が必要なんですよ!
(取材・文=高橋ダイスケ)

●たかしま・まさひろ
1965年生まれ、東京都出身。87年に映画『トットチャンネル』でデビュー。映画、ドラマ、舞台などで活動を続け、最近ではプログレッシブ・ロックやSMなどの趣味を生かしたトークで、バラエティ番組などでも活躍。現在は、ドラマ『ハラスメントゲーム』(テレビ東京系)に出演中。また『My Anniversary SONG~HEISEI SOUND ARCHIVE~』(BS朝日)のMCなどを務める。2019年には出演映画『マスカレード・ホテル』『キングダム』が公開予定。

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