日本で毎日行われている無観客試合とは? 弥彦神社の敷地内で実際に確認してみた

日刊SPA!

2018/11/7 15:49



無観客試合という言葉をご存知だろうか? サッカーなど、スポーツの試合において、ファン同士の暴動、民族対立などの危険がある際に観客を一切排除して行う試合のことだ。日本でも2014年、Jリーグにおいて浦和レッズ-清水エスパルスの試合が無観客で行われたことを覚えている方も多いだろう。

そんな無観客試合がほぼ365日、それも深夜に日本国内で行われ“観客”を熱く盛り上げているのを皆さんはご存知だろうか? そんな無観客試合を確かめに新潟に向かった。

◆神社の近くで執り行われている無観客試合とは

やって来たのは新潟県弥彦村。弥彦神社、弥彦山を主な観光地として温泉宿が広がる観光地だ。

弥彦神社の門前から延びる通りは、古きよき温泉街の雰囲気そのもの。弥彦駅の最終列車は20時40分までで、深夜の“観戦”となれば東京への日帰りは不可能。まずは宿を確保し、温泉に浸かり、地元の飲食店で食事と地酒を楽しむことにした。

弥彦の地酒で有名なのは「こしのはくせつ」だが、新潟の米どころらしく日本酒の天国で、日本海の地魚と一緒に飲んですっかり気分がよく………あッ! 時計を見るとすでに22時を回っていた。無観客試合は21時ごろから始まっているはずなので、会計を済ませ、急ぎ、弥彦神社に向かった。

神社に着いくと22時をとうに過ぎて23時に近い時間となっていた。

しかし、人影は見られない。昼間は観光客が目立つ参道も、僅かな照明と信号が照らすのみだ。弥彦神社の境内の林をかき分け、さらに進む。すると……見えた、煌々ときらめく照明と建物、そしてかすかに感じる…人の気配っ!

◆人のいない競輪場で真夜中に……

そろそろ真面目に話そう。この弥彦神社の敷地内にある建物は、弥彦競輪場である。弥彦競輪は日本で唯一の村営(弥彦村営)の公営競技場なのだ。神社の中で行われている競輪、見方によっては神事と捉えることもできる。しかし、22時を過ぎた深夜にもかかわらず実際にレースが行われているのだ。

早速、試合、もといレースの模様を観戦しよう…としたところ、私の前に1枚の張り紙が立ち塞がった。

「場外からの観戦はご遠慮ください」

あえなく“観戦”はならず。そのまま宿に戻り、ネット中継で弥彦競輪を観戦することになった。

皆さんは「ミッドナイト競輪」なるものを聞いたことがあるだろうか。競馬、ボートレースなど、一般的な公営競技のナイターレースは21時までに最終レースが終わる。しかしミッドナイト競輪は、その後となる深夜帯=21時から23時すぎまでレースを実施している。

そして、このミッドナイト競輪は基本的に「無観客」で開催される。深夜開催のため、周辺住民への配慮もある。車券はインターネット投票で購入することになり(※一部場外車券場では前売りで発売しているところもあります)、レースはネット配信を中心に観戦することになる。

◆間違いなくレースは行われていた

張り紙に話を戻すが、このような注意書きがあるのは考えてみれば当然である。もともと無観客を前提とした競輪開催なのだから、客が観ることは想定されていない。競輪場によっては近くの道路から観戦できる例もあるが……確かに弥彦神社の敷地内でもある場所で23時近くに1人でウロウロしていては不審者であろう。

結局、後ろ髪を引かれる思いでそのまま宿へ戻ることにしたのだが、幸運だったのは、ちょうどそのタイミングでレースが行われていたことだ。残り1周半を告げる鐘の音がかすかに聞こえた。スマホのネット中継も見ていたのだが、鐘の音はその少しあとに流れていた。生中継のタイムラグである。

一方で、鐘以外の音はほとんど聞こえず、一帯は静寂に包まれていた。レースそのものは見ることはできなかったが、間違いなく、リアルタイムでレースは行われていたのだ。

◆開始当初はミッドナイト競輪は録画なんじゃ? という噂も流れた

ミッドナイト競輪が開始された当初は、「本当にリアルタイムで選手が走っているのか?」「中継は録画なんじゃないの?」という疑いの声がネットでも一部から上がった。そのため、一部のレース場では定期的に現地観戦イベントを行ったり、現地まで行ってその様子をTwitterなどで報告する“マニア”が現れたことで、ちゃんとリアルタイムでレースが行われていると知れ渡ったのである。

今回の弥彦探検を振り返ってみると、レースは直接観戦できず、温泉と食事を楽しむだけで終わってしまった。のだが、鐘の音からリアルタイムでレースが行われており、無観客でも公平安全なレースが開催されるよう、関係者が努力している様子は伝わってきた。

なおミッドナイト競輪は前述の通り夜間、無観客で行われているため、現地で大声を出す、立入禁止の場所に入るなど、周囲の迷惑になる行為は当然ダメだ。私も今回は現地のルールに従い、レースを直接見るのはやめ、深夜の神社参拝の範疇にとどめた。

どうしても現地で無観客レースを見たいのであれば基本的には競輪場が主催する招待イベントがあるときに応募・参加しよう。基本はネット中継とネット投票で気軽に楽しむのが、ミッドナイト競輪の魅力だ。

取材・文/的場雄一郎 構成/佐藤永記(シグナルRight)・長谷川大祐

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