トイレで泣いていたダメ社員が、自信を持てるようになった「振り返り」方法とは? ―濵田真里(なでしこVoice)

社会人になったものの専門分野をもっと深く学び直したい、副業にチャレンジしたいけど会社員の身では自由がきかない……と思いとどまっていませんか?

今回お話を伺った「はままり」こと濵田真里さんは、人材会社で自らの夢だった海外駐在の希望を叶えたかと思えば、退職して今までこだわっていたものを手放し、大学院に通いはじめるなど「とにかく自由で、やりたいことに一直線」な人。

彼女はなぜ企業に務めながら、やりたいことを自由にできたのか?なぜ突然大学院に通おうと思ったのか?「やりたい」を見つけ、それを実現する秘訣を伺いました。

プロフィール
濵田真里(はままり)

1987年生まれ。早稲田大学を卒業。在学中に世界で働く日本人女性のインタビューサイト『なでしこVoice』(→)を立ち上げる。 大学卒業後は通信事業会社、編集事務所を経て、株式会社ネオキャリアにてアジアで働きたい日本人を応援するサイト『ABROADERS』を立ち上げ、編集長として従事。2018年10月に退職し、現在はお茶の水女子大学大学院でジェンダーに関する研究をしている他、内閣府の委員も務める。


新卒時代、トイレに体育座りで泣いていた

学生時代から「いつか海外で仕事したい!」と思っていた濵田さん。海外就職も視野に入れていたが、いわゆる「新卒チケット」を使えるのは今だけだと考え、通信事業を展開する株式会社ネクスウェイに入社した。

当時ネクスウェイは社員数200~300人。大企業でたくさんの社員の中に埋もれてしまうより、お互いの顔が把握できる規模の会社で働くほうが自分には向いていると考えていた。就活では100社近くエントリーしたが、「ネクスウェイに入りたい、絶対にここで働きたい!」と熱望していた。

学生時代に自身の運営する「なでしこVoice」でのインタビューを通じて出会った、上田代里子さんという女性がいる。彼女はいずれ海外での起業を考えており、そのためのビジネススキルを身につけるため、ネクスウェイで働いていた。そんな彼女の考え方は「いつか海外で仕事を」と夢見る濵田さんに大きな影響を与え、彼女と同じ会社で働きたいと強く願ったのだという。

濵田真里さん(以下、濵田さん)「すごく入りたくて、就活生向けのネクスウェイ説明会を、人事に持ちかけて開催してしまうくらい。社員の方からも面白がってもらえたのですが、筆記試験で落ちてしまって。でも、ネクスウェイにどうしても入りたいという熱意を認めてもらえて、救済措置を取っていただき、入社できました。決まったときは嬉しくて夜眠れませんでした」

念願叶って入社したネクスウェイだったが、入社後の仕事は「キツかった」という。
営業職を希望したものの、アポを取るための企業リストアップや、目標達成するためのスケジューリングなど、細かい作業が全然できなかった。尊敬する先輩たちが色々と教えてくれるにも関わらず、結果で返せない自分に不甲斐なさを感じる日々だったという。

一方で、同期たちは、どんどん仕事にのめり込んで結果を出していく。社内で認められるには仕事に没頭し、上司の力を借りながら目標を達成し続ける必要がある。でも自分にできる気が全くしない。

濵田さん「今だから言えますが、退職を伝えた頃は会社が入居しているビルの多目的トイレで、新聞紙を敷いて体育座りしてよく泣いていました。相当病んでいましたね…。今は、営業能力だけが仕事ができるかを判断する軸ではないと思えますが、当時は営業結果を出せない自分は、他の人より劣っている存在だと思い込んでいました」

「どんな仕事でも、結果を出すのは相当大変。だったら、自分にしかできない、使命感を持って取り組めることを仕事にしよう」と決意し、濵田さんは1年でネクスウェイを退職した。

はじめて仕事で自信が持てた、情報サイトの仕事

退職後、やりたいことをやるために、もっと発信力を身につけたいと考えた濵田さんは、フリーランスの業務委託として編集プロダクションでの仕事を始めた。その後、前述の上田代里子さんからの紹介で、ネオキャリアの社長と出逢い、情報サイト「ABROADERS(アブローダーズ)」の立ち上げをすることになった。

「ABROADERS」専属として入社し、記事の制作・編集だけでなく自ら海外へ取材に行き、WEBディレクターとサイト設計について話し合いを重ねる日々は、想像以上に体力の必要な仕事だったという。

濵田さん「帰宅してもベッドにたどり着けなくて床で寝落ちする毎日でしたが、それくらい夢中になれる仕事に出会えたのは嬉しかったし、自信にもなりました。
社会人1・2年目は全然仕事ができなくて、いつも怒られてばかりでしたが、『ABROADERS』で初めて『自分にもできる仕事がある』と思えたんです」

着物で出社したり、海外取材に行ったりと、社員数が約3000人規模の会社ながら自由に働いていた濵田さん。周囲からの反発はなかったのだろうか。「出る杭」でも打たれない秘訣はあるのか伺ったところ、大切なのは「自分の活動を、周りを巻き込みながら発信すること」と「『この人はこういうことをしちゃう人なんだ』と理解してもらうこと」だと語ってくれた。

濵田さん「全社員が集まるキックオフで、毎年数人しか選ばれない『コミットメントグランプリ』に選出されたのは、大きな転機になりました。上司が選出理由を語るビデオメッセージも制作されるのですが、私は社長からメッセージをいただけて、知らない社員の方からも『ビデオメッセージ見たよ!』と声をかけてもらえるようになったんです。
さらに制作した記事や実施したイベントのことなどを、FacebookなどのSNSで常に発信していたので、『はままりは色んな場所を飛び回って活動している』と説明しなくても理解してもらえるようになりました」

大きなやりがいを感じていた「ABROADERS」の仕事だったが、立ち上げから2年経ったタイミングで、濵田さんは「さらにリアルを伝えるには、自分が海外で働く経験がないと厳しいのでは」と感じるようになった。そこで社長に直談判し、濵田さんは念願だったマレーシアに駐在することになった。

「やりたいこと」に気づくためのテクニック

濵田さんは「やりたいこと」と「今の自分に足りない部分」を常に自己認識できているように見える。一体どうやってそのスキルを身につけたのだろうか。

濵田さん「1ヶ月に1~2回、自分が気になっているキーワードのリストを作って振り返るのを習慣にしています。自分の特徴や、今後やりたいことをリスト化し、更新しつつ何度も見返すようにしているんです」

今の自分がどんな状態なのか、キーワードを紙に書き出し、それをWordに打ち込んで印刷しておく。その紙を溜めておき、振り返りのたびに注力したいことに線を引いたり、終わったものは消したり、印刷した紙をベースに内省する。

中でも特に意識したいことは、お気に入りのポストカードに書いて手帳に挟んでおき、日常的に目に入るようにしておく。自分が習慣にしたいことや日常的に意識したいことは、そこからさらにピックアップしてスマートフォンのメモアプリに入れ、ふと思い出したときに見返している。書き出しておくことで、振り返ったときに叶っていたら嬉しい。さらに「自分でもできる」と経験を肯定できるようになるメリットもある。

大学院に行きたいと思ったのは、ネクスウェイを退職した直後。6年越しの「やりたいこと」が叶った形だ。「なでしこVoice」や「ABROADERS」での取材活動を通じて、濵田さんは数多くのロールモデルに出会ってきた。

どうすれば彼らと同じような存在になれるのか、「振り返り」を積み重ねることで、自身の行動を裏付ける知識や根拠の重要性に気づく。その結果、濵田さんは大好きだった「ABROADERS」、そしてネオキャリアから離れ、大学院へ進む決断ができたのだ。

やりたいことは変わってもいい。だが、その変化に気づくためには、定期的に自分のやりたいことを振り返る習慣が必要だ。

行動量×振り返りを続けることで、きっと自分の価値観や「やりたいこと」が徐々に明確になってくるはずだ。まずは今日から「最近気になるキーワード」を紙に書き出すことから始めてみよう。

 

文・筒井智子 写真・壽福憲太 編集・鈴木健介

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