(仮)日本の過激な不倫報道は「公正世界信念」のせい!? 社会心理学の先生に、日本の報道問題について聞いてみた

Kindai Picks

2018/11/2 17:07

みなさん、こんにちは。近畿大学国際学部2年生の寺浦成美です。
約8ヶ月間、アメリカのフロリダ州にあるマイアミに留学していました。

私は、語学学校(ELS)だけでなく、アメリカの大学の授業も受けていたことや、寮のパーティなどで仲良くなった現地の大学生が「she is my friend!(彼女は私の友達です) 」といろんな場面で私のことを紹介してくれたおかげで、たくさんの現地学生と出会うことができました。 毎日新しい何かに出会えて、刺激的で楽しく、充実した日々を過ごすことができました。

そんな留学生活の中で、日本とアメリカの違いを感じることは多々ありましたが、一番文化の違いを感じたのはテレビなどの「ニュース報道」の捉え方でした。

現地の大学生はいつも、学校の授業や課題の情報を共有したり、自分たちの将来のプランを語り合ったり、流行りのメイクファッションの話をしたり、「自分たちのこと」を語り合っていました。

しかし日本だと「◯◯の浮気ヤバくない?」「◯◯炎上してるね!」など、芸能ニュースの話がやたらと多くに感じます。

スキャンダル報道で盛り上がるのは日本が平和だから?



(C)O-DAN

特に日本国内でよく報道されるのが、芸能人や文化人の「不倫スキャンダル」。年末に放送される、年内のニュースを総括した番組では、必ず何件かの不倫報道に焦点が当たります。

しかし、留学中に、そのような報道をみた記憶も、不倫スキャンダルについて同年代の友達と盛り上がった記憶もありません。

この違いはなんだろう? と思い、色んな人に「芸能ニュースは好きですか?」と質問してみました。

ナン(アメリカの大学生)
その人の知名度にもよるけど、そもそもアメリカ人は芸能人のゴシップにあまり驚いたりしないね。その人がよっぽど有名だったり、出来事が大きかったりすると、雑誌社やリポーターはそれを売って稼ぎにする。でも、彼らが不倫などをしたとしても、公共的に謝罪をしなければならないことはないし、謝罪会見をしないからといって非人道的だと思わない。もし、彼かが何か犯罪を犯したとしても、彼らはその罪で傷つけてしまった人に謝るべきであって、その問題と関わりのない人に謝る必要はないと思う。

アナ(ブラジルの大学生)
個人的にはあまり興味がないけど、誰が誰とデートしているかなんてニュースを楽しんでいる人たちはブラジルにもいるよ。ブラジルでも謝罪会見をするような有名人はいるけど、彼らはだいたい正直ではなく、お金を失わないようにしているように見える。彼らがそのミスを認めることが大事だと思う。

マーク(イギリス出身の英語村スタッフ)
イギリスでも、女の人はよく芸能ニュースの話をしているイメージだね。ニュースを流す番組もあるけれど、主婦向けだからランチタイムに限定的に放送されてるんだと思う。僕自身は、芸能ニュースは好んで見ないよ。

ひろこ(アメリカ在住の大学生)
日本はアメリカと比べて犯罪率が低いから、事件の報道が少ない分、芸能ニュースの報道がすごく多いんじゃないかな。テレビで芸能人の不倫会見を見ると、日本って本当に事件の少ない平和な国なんだな......と思う。でも、テレビ側が意図的に当事者を攻める報道をするのはおかしいよね。人の問題に頭を突っ込んで問い詰めて泣かせて「一体誰が得しているの?」と疑問に思うよ。他にもっともっと、宗教や人種差別のこと、国外の事件など報道されるべきニュースがあると思う。

様々な意見がありますが、「日本は平和だから」という意見に「なるほどな……」と思いました。確かに、日本で銃事件が起きたなら、それはもう日本中の話題となり大きく報道されるでしょう。しかし、アメリカでは、実際に私が留学していたマイアミの大学で生徒が1人射殺されてしまった事件がありましたが、そのニュースが取り上げられたのはWebでもローカルメディアのみでした。

日本は島国で紛争地帯から離れていたり、他国のことを知らなくても危険な目には合わないという環境です。この環境も、外国などの紛争が報道されずその代わりに芸能ニュースが多く報道される要因なのかもしれません。


(C)O-DAN

また、外国人が好んで使う「ゴシップ」という言葉と、日本で多用される「スキャンダル」という言葉の定義も大きく異なります。

「ゴシップ」は元々「名付け親」という意味の古英語で、「名付け親は、その家で見聞きしたことを尾ひれをつけて外部に話す」といった意味合いで言葉が広がり、現代でも主に噂話や、娯楽性の高い情報のことを指しています。

一方「スキャンダル」は「障害物」「罠」を意味するギリシャ語が元になっており、その語源からも分かるように、現代でも対象者の地位や名誉を傷つける情報という意味合いで使われています。

好んで使う言葉にも、日本人と外国人の意識の違いが表れているように感じられます。不倫報道はまさに「スキャンダル」そのものですね。

どうして赤の他人を追い込むのか?


では、どうして日本では不倫スキャンダルが多く報道されるのでしょうか?

確かに不倫は道徳意識に反する行為ですが、芸能人や政治家が職を辞すまで追い込む日本の風潮は、公私混同がすぎる異常な風潮にも思えます。

「赤の他人」の行動を、目に余るほど批判する人がどうしてこんなにたくさんいるのか……?

このような日本の現状について、近畿大学の社会心理学専門教員、村山綾(むらやま あや)先生にお話を伺ってきました!



――日本で多くの芸能ニュースが報道されている理由は何なのでしょうか?

やはり需要があるからだと思います。
そもそも、芸能ニュースが報道される時間帯を考えると、主婦や高齢者がターゲットとなっていることがわかります。社会心理学に「ステレオタイプ内容モデル」様々な社会的カテゴリーに属する人を、能力の有無と温かさ冷たさで当てはめるというのがあります。そのようなステレオタイプからも、主婦や高齢者は「政治や世界情勢に関わるニュースではなく、芸能ニュースなどのゴシップの方が受けがいい」とされているのかもしれません。

――結婚などのニュースよりも、不倫や離婚など悪いニュースが多く報道されるのはどうしてですか?

ニュースは新規性や話題性の高さなどで構成されています。いい話題はあまり話題性が高くない。例えば「〇〇が結婚!」と報道されてもよほどビックネームの芸能人同士でなければ「そうなんや」だけで終わってしまう可能性が高く、話題性が低いと考えられているからです。逆に悪いニュースは、良いニュース以上に意外性があり、自分の身の安全につながるということもあるため、より話題性が高いと認識されているようです。

――どうして人々は批判コメントをするのでしょうか?

社会心理学に「公正世界信念」という、この世界は人の行いに対して公正な結果が返ってくるという考え方があります。つまり、「全ての正義は最終的には報われ、全ての罪は最終的には罰せられる」と考えることです。人々はその考えを維持したいがため、その信念に反することが起きると、被害者が悪かったのだとも思いこむようになり、批判コメントをする人がいるのです。そういったコメントをすることで自分の環境を守ろうとしているのだと考えられます。

――批判コメントをなくすにはどうしたらいいですか?

人々が持っている信念だけが批判コメントを生み出してしまっているのではなく、まず環境やシステムを変えることが解決に繋がると思います。例えば、コメント欄を設けない、なりすましアカウントを凍結させるなどして、バッシングの起こりづらい環境を整えることが重要ですね。
また、他の国では、芸能ニュースはテレビでいつでも放送されているのではなくマガジンなどを買って「見たい人が見るもの」です。日本では各放送局で一斉に放送されたり、ネットニュースやSNSで情報が流れてくるため、「興味がなくても見てしまう」「見てしまうから気になる」ということも大きいですね。

――今後の報道業界はどうあるべきでしょうか?

日本は「表現の自由」が憲法で守られている国なので「必ずこうあるべき」という報道の形はありませんが、NHKが5年ごとに行なっている調査を見るとテレビを見る人の年代が変わってきています。


画像出典:NHK放送文化研究所 『「日本人とテレビ 2015」調査 結果の概要について』より

また、録画機能の技術向上やネットフリックスなどの普及により、「決まった時間にたくさんの人がテレビを見る」という環境がなくなってきています。ターゲットや環境が変化しているようにテレビ業界も変化せざるを得ない状況になっているのです。

そのため、テレビ業界がとる手段は2つ考えられます。1つはテレビの視聴者が減って広告料が入りづらくなったため、制作費削減として再放送や、ギャラが発生しない一般人を使う番組などを多作する。もう1つは、視聴者を増やすため、他媒体にはできない、テレビだけが実現可能な番組を作る。私はぜひ後者の手段をとって欲しいですね。これをきっかけに報道業界が好転することを望んでいます。

まとめ


今回、村山先生のお話を聞いて、ただ単に「需要があるから」という考えだけでなく、テレビ側が主婦や高齢者をターゲットに芸能ゴシップを報道し、まるで主婦や高齢者にニーズがあるように情報捜査しているという考えや、悪いニュースはニュース的価値が高いということ、人々が赤の他人の犯した罪を必要以上に批判するのは自分の環境を守ろうとする人間の心理が関係していたなど、様々な考えや理由があるという事実を知ることができました。

特に「公正世界信念」の話にもとづくと、日本人には強く「公私ともに、人間性が一貫していないといけない」という考えが存在すると感じました。

また、「自分の意思とは関係なく、大多数の意見をよしとする」日本人独特の考え方が、弱者を一斉に避難するスキャンダル事情と関わっていることも仮定できます。

例えば、1994年にフランスのミッテラン元大統領と愛人の密会がフランスの週刊誌に掲載された時も、雑誌の発売元である出版社は「プライバシーの侵害」を理由に各メディアから大批判を受けました。

日本だと、同じようなことが起これば大統領が謝罪会見を行う様子が安易に予見できますが、フランスでは不倫した(当時の)大統領ではなく、出版社が大バッシングされたのです。

フランス人には「プライベートな問題と、政治家として問われるべきことろは違う」という思想があるため、このような差異が生じるのだそうです。

一方日本では、「政治家であるならば、政治面も私生活も両方が清くなければいけない。公私ともに人間性が一貫していない」といけないという考えが一般的であることがよくわかるエピソードです。


(C)Pixabay

私以外にも、不倫が報道された有名人・文化人が、引退や退職に追い込まれるケースが多すぎると感じている日本人は多いのではないでしょうか?

近年、スキャンダルの当事者を追い込んでいるのは、SNSなど匿名での批判コメントが大多数です。

批判コメントをすることで自分を守ろうとするのではなく、自分のことに集中し、向き合い、自分のために時間を使う方がはるかに充実して楽しい人生を送ることができると思います。

もっと自分のために時間を使えば、自分と関わりのない人を批判して、その人を必要以上に追い詰めたりすることもなくなるはず。

人は環境によって成長の仕方も変わるし、自分次第で自分自身の本質や思想も変えられることができると、私は信じています。

自分のしたいことや得たいものなどに一生懸命になれると、芸能ニュースなど自分と関係のない事柄に興味もそれほどわかなくなると思うし、そのような人が増えて芸能ニュースの需要がなくなると、テレビ業界も変化せざるを得なくなるのではないでしょうか。自分の日常と全く関係のない、スキャンダルの当事者を匿名コメントで追い詰めたり、失敗や罪を犯した人を過剰な程叩きのめす社会が少しずつ変わっていくことを私は望みます。

(終わり)

ライタープロフィール
寺浦 成美(てらうら なるみ)
近畿大学 国際学部 国際学科 グローバル専攻 1年
海と音楽とカフェが好き。
現在フロリダに留学中。

編集:人間編集部

あなたにおすすめ