和地つかさ主演の『まいっちんぐマチコ先生』舞台 原作者・えびはら武司氏が性表現を語る

しらべぇ

2018/11/6 10:30


(©ニュースサイトしらべぇ)

往年の人気漫画『まいっちんぐマチコ先生』の原作者で漫画家のえびはら武司氏の画業45周年を記念して、『ミュージカル まいっちんぐマチコ先生~画業45周年だよマンガ道』が、10日から13日まで労音大久保会館で上演される。

原作・総合演出は、作者のえびはら武司氏が初めて全面的に手がけ、マチコ先生役は人気グラビアアイドル・和地つかさが務める。

じつは、マチコ先生は今年はちょっとしたブーム。5月には大がかりな芝居が築地本願寺で上演され、9月には実写映画も公開された。そこで、えびはら氏に昨今の性表現規制も含めてインタビューした。

■金八先生と藤子不二雄がきっかけに


———マチ子先生は、どういうところから着想を得てつくられたのでしょうか。

「この舞台のテーマにもなってます。僕がデビューした頃は藤子不二雄先生が活躍をされていて、影響を受けていました。そこで、『藤子先生が絶対にやらない世界を表現したいなあ』と試行錯誤して、生まれたのが『まいっちんぐマチコ先生』です。

当時はちょうど『金八先生』がたいへんに流行っていました。むちゃくちゃ熱いほどに真面目な熱血教師ですよね。

ならば、金八先生がやらない先生もの・学園もので、金八先生とは正反対のもの、そして、やはり、藤子先生が描かないであろう作品ということで、マチコ先生は誕生しました。

マチコ先生は、じつは真逆ですが、金八先生から着想を得ているんですよ。藤子先生の影響もあるって聞いたら、驚く人は多いでしょうね。藤子先生と金八先生に触発されて、なぜ、マチコ先生になるんだってね(笑)」

■エロではない「エッチギャグ」


———初めからエッチなものを書こうと思っていたのですか?

「じつを言うとあんまりないんですよ。でも、金八先生があんまり真面目過ぎて、おまけにそれが高視聴率を得て、社会現象になっている。

じゃあ、金八先生の逆を行くんだったら、『マチコ先生みたいな教師役しかないんじゃないかな?』と思いました。学園ものブームでしたから、『女の先生が主役ということに読者も期待するんじゃないかな』と思いました。

でも、みなさん、やたら過激に思いますけど、僕はそんなにすごいエッチなシーンはないと思っていますよ。おふざけで笑えるようなちょっとエッチなシーン。寸止めしています」

———今で言えば、着エロ・ちょいエロみたいな感じなのでしょうか?

「エロって言い方は、僕にとってはじつは心外なんですよ。初めからちょっとしたかわいいいエッチを追究していましたから。『エッチギャグ』って感じですよね」

■PTAから抗議も


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———当時は、アニメ化されるとPTAから抗議がありましたね。

「そうそう、私も観てましたけど、『アニメだとちょっとキツいなあ』と思ったのが正直なところです。アニメの絵は動きますよね。乳房が揺れたり、スカートがめくれてパンツが見えるところまで描写されてしまう。ちょっと刺激が強いかな。

でも、製作する側としては少しでも人気をとりたいから、刺激的なシーンを入れるんだろうなと思っていたのも事実。僕が原作者なのに割と第三者の視点で観ていましたね

あと、ゴールデンタイムでしたからね。観たくない人もテレビをつけたら目に入ってきてしまう。そういうところがショックだったんだと思います。

今の言葉でいえばゾーニング。『深夜ならエッチな枠があってもいいけど、お子さんが起きている時間は性的な表現はやめましょう』っていう概念がまだなかったですよね。だから、抗議が来たのは分かるんですよ」

■性表現規制は「やり過ぎ」


———最近はちょっとエッチなのもコンプライアンスなどで表現しにくいです。こういう現状についてはどうお考えですか?

「やり過ぎだと思いますよ。がんじがらめになってしまっている。でも、僕には小さい子供がいるんで、父親としては『それも必要かな』って思うんですよね。小さい子にあまり見せたくないなと思う。

表現者としてはたいへん憂うべき状況だと思う一方で、父親としては仕方ないかなと思い…僕の中で葛藤があるんです」

———昭和に比べて性表現の規制が行き過ぎている現状に関しては?

「ネットが普及したおかげで、ノイジーマイノリティーっていうんですか、少ないのに声高に抗議をする連中がいて、メディアもそれを過剰なまでに気にするようになってしまった。

深夜放送でも、少しでもエッチな表現は駄目でしょう。ちょっと行き過ぎているよね。もう過剰反応。でも、その風潮は簡単には変えられないし、それに対応していくしかないのが、哀しい現状だよね」

■舞台では「原点の漫画に帰る」


———今回、ミュージカルを自ら総合演出しようと思ったきっかけは?

「マチコの舞台は4本くらいやっているのかな。僕は口を挟んでこなかった。ちょっとおふざけ的なギャグチックなのが多かったので、僕自身がやることで、それとは違う流れのものをつくりました。

『マイッチング漫画道』というか、原点のマチコ先生の漫画に帰りました。それと僕の大好きなミュージカルを融合させました。

だから、『今まで誰もやってないものをやろう』と思いついて、作曲の先生に頼んだり、振り付けの先生に頼んだりして、やたら予算かかってしまいましたけど」

■「いつまでもやってやる」と熱意


———マチ子先生の人気が90年代から今に至るまでずっと続いてる秘訣は何だと思いますか?

「そんな続いてるんですかね(笑)。僕にはよく分からないんですけど。マチコ先生関連の芝居や映画がたくさん作られてきたのは、僕は基本的に拒否せずOKを出すからなんです。

自分から、仕掛けたことは今回が初めてで、あとは、オファーがあり全部ゴーサインを出してきました。そういうのがあるから細々と生き続けてるような気がしますけどね。

寿命が長いのは嬉しいですね。最初は違うのを書きたいって思ってたんですけど、今となったらいつまでもやってやるぞって感じで、思ってます」

■和地つかさ起用の理由


———なぜ、和地さんをマチコ先生役にしたのでしょうか?

「イメージが近いからです。普段も面白いんですよ、和地さんって。知り合ったキッカケは、なんかマチコ先生の舞台を元々観てたらしいんですけど、そこで出会ったんですね。僕はあんまりよく知らなかったんです。

グラビアをそれで見てみて、気に入って、声かけて、色々と話したら、本人もやる気になったので、じゃあそれで、進めましょう……となりました。

だから、僕は今回のミュージカルを創るのは、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、和地さんがマチコ先生役をやるっていうので、80%くらい達成しちゃった感がありましたね(笑)」

———総合演出されるのは今回が初めてですが、今後も続けていくのですか?

「もうやらないでしょう。総合演出ってなっていますけど、じつはそれほど大袈裟なもんじゃない。演技についてはちょくちょくアドバイスしている程度です。

やっぱり、素人がやっちゃうと舞台が滅茶苦茶になっちゃうんで、ちょっと思ったことを意見するだけにとどめています。でもね、僕は意見が言えるってだけでも嬉しいんですよ。

今まではじつをいうと、一切意見を言わせてもらえず、全部投げっぱなしだったんでね」

■毎回異なるゲストが楽しめる展開


———もうすぐ公演が始まりますが?

「まだちゃんと舞台が公演されていないから評価を下すわけにはいかないけど、日に日に成長していく姿を見て、たいへんに充実感を覚えています。僕自身、公演を観るのが楽しみなくらいです」

———最後にこれから観に行かれるかもしれない方へのメッセージを

「8公演やるんですけど、全部観てほしいくらい。毎回芝居の中にゲストを変えて入れます。ブル中野さんやグレート・サスケさん、猫ひろしさん、なべやかんさんなどが来ます。

できれば全部通して観ていただければ嬉しいな。そのくらい観ても飽きない内容で考えているんで、ぜひ皆さん来てください」

私は通し稽古を観たが、さわやかだが十二分に満足できるエッチなシーンも出てくる。それを観たときに、「これくらいの性表現は社会でも広く許容されてもいいのではないか」という原作者のメッセージにも思えた。

マチコファンもミュージカル好きも、昭和の性表現を懐かしく思える人も、ジェンダーを研究する人も、楽しみ、考えさせられ、最後は笑顔になれる作品になっていると確信するので、足を運ぶことをお勧めしたい。

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(取材・文/しらべぇ編集部・及川健二

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