単なる“住みにくい街”の正体も露呈……東急が行う交通環境の検討の切迫感

日刊サイゾー

2018/11/6 01:30


 名ばかりの「閑静な住宅地」復権の契機となるのだろうか。東急電鉄が郊外住宅地の維持・発展を目的とした「郊外型MaaS実証実験」なるものを実施するという。

これは、Wi-Fiやトイレを完備した24人乗りの「ハイグレード通勤バス」を田園都市線・たまプラーザ駅から渋谷駅に向けて運行。あわせて、たまプラーザ駅北側を中心としたエリアにおいて、スマートフォンから簡単に乗車予約できる「オンデマンドバス」などを運行し、利用状況などを調査・分析した上で、周辺住民に最適の交通環境を検討しようというもの。

たまプラーザ駅などのある東急田園都市線は、渋谷駅と丘陵地帯に開けた閑静な住宅地を結ぶ路線。どちらかといえば、ハイソな人々が暮らす地域として、長らく羨望の的とされていた。だが、その優位性はどんどん失われようとしている。

ひとつが、交通の便のひどさである。この多摩田園都市一帯は、東急電鉄が沿線を開発して発展してきた郊外型住宅地域。ゆえに、都心へと向かう路線は田園都市線しかない。その混雑率は、常に全国10位以内にランクイン。それも、朝のラッシュだけでなく、帰宅時間となる夕方以降の混雑は終電まで続く。

とりわけ、夜の時間帯は混雑する上に酔っ払いも多いので、環境も最悪。人身事故は少ないが、乗客間のトラブルもけっこう多い。ハイソな住民が住んでいるはずなのに、意外と治安が悪い路線なのである。

とにかく、電車が混んで人もイライラ。結果、民度まで疑われてしまうという悪循環。加えて、丘陵地帯に広がる閑静な住宅地の不都合な正体も知られつつある。坂が多い街は、年齢を重ねた人々にとっては、極めて暮らしにくい街なのである。

「ニコタマにも近いし、通勤・通学にはイマイチだけど、住むだけなら便利と思っていたら、次第に坂がきつくなってきた。そもそも、住むところじゃなかった……」(たまプラーザ周辺の住民談)

つまり、今回の実証実験の背景には、交通網をなんとかしなくては、田園都市線沿線が過疎化してしまうことへの危機感があるのだ。もはや、都心にもタワーマンションが増えた現在。郊外の閑静な住宅地は、単なる田舎という正体を露呈しつつあるのか。
(文=ピーラー・ホラ)

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