「白髪」は老けの象徴ではなくなった? グレイヘアは「素敵」の価値観が生まれたワケ


 年齢を重ねるとともに増えてくる白髪。「老けて見えるから」「だらしないから」と白髪染めに精を出す女性がいる一方で、最近、白髪染めをしないグレイへアの女性が注目されつつあるという。

2016年、主婦の友社発行の『パリマダム グレイヘア スタイル』がスマッシュヒットし、今年同社は『グレイヘアという選択』『グレイヘアの美しい人』という2冊の書籍を続けて出版。同社が30~80歳の女性を対象に実施した意識調査では、「女性の白髪に対するイメージは?」という問いに、全体の4割が「素敵だ・美しい」と回答したそうだ。

確かに、ネット上を見てみると、グレイヘアを「かっこいい」「オシャレ」などと肯定的に捉えるコメントが散見でき、ファッションデザイナーの島田順子、芸能人では草笛光子、結城アンナなどが、あこがれのグレイヘア有名人に挙げられている。また最近では、これまで60代以降のヘアスタイルというイメージが強かったグレイヘアを、アラフィフ世代から実践する者もいるようで、現在50歳のフリーアナウンサー・近藤サトがそのアイコンとなっているほか、昨年の秋には『あさイチ』(NHK)でも「今注目!40代からのグレーヘア」という特集が放送され、話題を呼んだ。

なぜ現在の日本人女性は、グレイヘアを「素敵」「かっこいい」と捉えるのか? 40~50代までにも支持される理由や背景は? 『黒髪と美女の日本史』(水曜社)の著者である化粧心理学者・平松隆円氏に話を聞いた。

もともと白髪というのは、「老化の現れの1つであり、女性にとっては“嫌なイメージしかないもの”だったのではないか」という平松氏。

「昔、白髪は『九十九髪(つくもがみ)』といわれていたのですが、まさに“年がいっている”というニュアンスの言葉でした。ちなみに男性も武家社会では、ハゲてしまうと髷が結えなくなるので、引退(隠居)しなければいけなくなり、そのため日本では男性が自らのハゲを嫌がる面があるのです」

このように、日本ではこれまで、髪や頭部の老化が、如実にネガティブに捉えられてきた歴史があるだけに、「女性のグレイヘアは『素敵』『かっこいい』という価値観は、最近のものだと感じます」という。

「今の40~50代は、髪を染めることに積極的な世代で、若い頃、茶髪や金髪などに染めていた人も多い。つまり、髪の毛の色を自由に選択できる世代なのです。そんな彼女たちにとって、グレイヘアとは“自分たちが選び取った色”なのではないでしょうか。その姿勢が、『素敵』『かっこいい』という価値観につながっているのだと思います」

そのため、何も手入れをしなかった結果としての「白髪」ではなく、あえて選択したという意味を込めて「グレイヘア」という呼称が使われているのかもしれない。また、平松氏は、髪の色を自由に選択してきた世代は、“白髪を染める”という目的での染髪にも抵抗があるのではないかと考察を広げる。

「60歳以上の世代は、“日本女性の黒髪は美しい”という思い入れが強いので、グレイヘアに対するネガティブさを抱きやすいと思うのです。しかし、その下のアラフィフ世代になると、これまでも自分で髪の色を選んできたため、そこまで黒髪に思い入れが強くはないような気がします」

今のアラフィフは、バブル世代といわれている。彼女たちは、「他人の目を気にしなくていい」「取り繕わなくてもいい」といった価値観を持っており、それが、グレイヘア人気につながっているのではと、平松氏は続ける。

「バブル時代は、『女性が男性を選ぶ』時代だったため、女性は『自分のままでいる』ことにあまり抵抗がない。バブル世代の女性は外見以外でも、総じて“他人に影響されない”という自由さと強さを持っていると感じますね。なので、このグレイヘアブームは、バブル世代特有のものなのかもしれません」

つまり、グレイヘアブームが訪れた背景には、「バブル世代が白髪の目立つお年頃になった」という点があるのだろう。この流れが、今後、下の世代にまで広がっていくかといわれると、平松氏もやや疑問を感じるようだ。

「ただ、大学生を見ていると、ここ10年くらいおとなしい髪色の学生ばかりだったものの、最近、赤や青といったアグレッシブな髪色を選ぶ学生が増えてきた印象です。女性のメイク……例えば口紅の色や眉の太さは景気によって変わるといわれますが、髪色も同じで、現在、景気が上向いてきたからこそ、自分の好きな色を選び取る学生が徐々に増えつつあるのでは」

現在のアラフィフ世代と、20歳前後の世代は、似たような価値観を持っている部分があるのではないかと考察する平松氏。「もちろん、さまざまな要因が絡み合ってのグレイヘアブームだとは思いますが」としつつも、将来的にグレイヘアブーム再燃の担い手になりそうな世代は存在するということか。また、世代論でくくるだけでなく、グレイヘアを謳歌する女性が増えれば増えるほど、それを“お手本”にする若い女性も出てくるだろう。

これまで、バブル世代の女性が「傲慢」「高飛車」などと批判されることも少なくなかったが、「バブルから30年が経過した今、グレイヘアブームを通して、彼女たちの『周囲に同調せず、自分を貫く』ところが肯定的に見られるようになったということでは」という。

グレイヘアは一過性のブームとして過ぎ去ってしまうのか、それともスタンダードになっていくのか――。

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