ジャニーズのベッド写真も続々流出……男性のリベンジポルノ被害はなぜ「軽視」されるのか?


 元交際相手や元配偶者への報復として、相手のプライベートな性的写真や映像を不特定多数に公開する“リベンジポルノ”。2014年に「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(通称・リベンジポルノ防止法)が成立してから、週刊誌に掲載される、芸能人の「ベッド写真」「全裸写真」の扱いも、徐々に変化している。

例えば、以前であれば、実名かつ顔などに何のモザイク処理も施されず掲載されていたものが、近年では、「女性タレント」「女子アナ」などの肩書の紹介のみにとどまり、顔や耳など、個人を特定されかねない部分にはモザイクが入るようになった。こうしたベッド写真がスクープされるたびに、ネット上では「一体誰なのか?」が盛んに議論され、騒ぎがさらに大きくなっていくのはよくあるケースである。

週刊誌サイドは、リベンジポルノ防止法に抵触しないよう、個人を特定できないようにしているということなのだろうが、ここで、ある疑問が浮かぶ。それは、女性タレントにこうした対応が取られる一方、男性タレントは、今も実名かつモザイク一切なしの写真が掲載されていることだ。最近でも、関ジャニ∞・大倉忠義、錦戸亮のベッド写真が週刊誌に掲載されており、ネット上では「これはリベンジポルノではないのか?」と声を上げる人も散見された。

リベンジポルノ防止法の内容を詳しく見てみると、「私事性的画像記録」の定義に「1.性交又は性交類似行為に係る人の姿態」「2.他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」「3.衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」とある。

これらには該当しないと判断され、実名かつモザイクなしで掲載されたのかもしれないが、芸能人に限らず、被写体が男性の場合、それがリベンジポルノであるという意識が浸透していない可能性もあるのではないだろうか。そんな疑問を、『リベンジポルノ―性を拡散される若者たち』(弘文堂)の著者であるメディア学者・渡辺真由子氏に話したところ、男性のリベンジポルノ被害が可視化されにくい背景が見えてきた。

そもそも、リベンジポルノ被害に遭っているのは、男女どちらの方が多いのか? メディアでリベンジポルノが取り上げられる際、女性被害者の例が紹介されるケースが多いが、渡辺氏は、警察庁発表の「私事性的画像記録に係る事案の相談等件数」のデータについて、次のように説明してくれた。

「2017年度の『被害者の性別』を見ると、女性が91.6%、男性が8.4%。“相談する人”という点では、女性が圧倒的に多いですね。男性も水面下で被害に遭われている方はもっと多いと思うのですが、警察に相談しにくい現実があるのでしょう」

渡辺氏も、男性は女性に比べ、リベンジポルノ被害が軽視されやすいという実感はあるという。

「芸能人と一般人でも変わってくるとは思うのですが、男性タレントの場合、『男は女遊びしてナンボ』というような考え方が根強くあり、ベッドシーンを撮影されても、被害というより、それがある意味『男らしい』などと、肯定的に捉えられてしまう面もあるのではないでしょうか。一方で、一般男性の場合、裸を撮影される被害は多々報告されているものの、それが笑いのネタになったり、いじめの一環に使われたりする傾向があるのです」

確かに、被害者が男性の場合、女性に比べ「かわいそう」といった同情の声が集まりにくい面はあるかもしれないが、“笑いのネタ”“いじめ”とは一体どういうことなのだろうか。

「男性同士って、仲間内の悪ふざけのノリで、下着を脱いで川遊びをしたり、お尻を出したりして、それらを写真に撮ることって結構あるんです。また、男子同士のいじめでは、“下着を脱がせる”というものがあり、最近ではその様子を撮影してSNSに掲載するなど、エスカレートしています。さらに、女子中高生の間では、彼氏が下着を脱いだ状態の姿や裸で煙草を吸っている姿を写真に撮り、友達にLINEで送ることも。『この男とヤッちゃった』という軽い自慢のような、気軽な日常報告のようなノリで、抵抗なくそういうことをしてしまうのです」

男性も自分の恋人のそうした姿を撮って、友達内で共有することはあると渡辺氏は述べるが、「女性の方が、罪の意識がない」という。

このように男性の体は「軽んじられてきた」という渡辺氏。それこそが、リベンジポルノ被害の軽視につながると考察を広げる。

「男性の“性”は、これまでもずっと尊重されてこなかった。例えば、性教育で、女性の体について『とても大事なものだから、むやみに人に見せたり、勝手に触らせたりしてはいけません』と教わることはあっても、男性の体についてはそういった教育は殆どされません。また、女子が初潮を迎えたときには、お赤飯を炊いてお祝いするのに、男子が精通しても祝わない。本来ならば“一人前の大人になった”と祝われてもおかしくないはずです。それに、男性の自慰行為も『やりすぎると頭が悪くなる』なんていわれたりしますから。男性の体は、“価値が低いもの”とみなされてきたとも言えるでしょう」

また、男性のリベンジポルノ被害が表面化しない理由には、“男らしさ”というものへの世間の思い込みも影響しているという。

「『男は強いから抵抗できたはず』『男なのにそんなことを相談するなんて弱い奴』など、日本には“男のくせに”という偏見があります。そのため、リベンジポルノ被害に遭っても、『相談するなんて恥ずかしい』と思ってしまうのです」

しかし、それ以上に深刻なのが、そもそもリベンジポルノ被害に遭った男性自身が、「自分は被害者である」と自覚できていない点だと、渡辺氏は続ける。

「やはり、『性被害は女性が遭うもの』という考えが根強くあり、男性が性的に嫌な思いをしても、『被害に遭った』と思えない。男性も性被害に遭うことがある、性被害を相談することは恥ずかしいことではないと、学校や家庭で伝えていくことが必要です」

男性の性被害に関しては、昨年、「加害者は男性、被害者は女性」を前提としていた強姦罪が廃止され、男性被害者も対象にした強制性交等罪が施行された。

「正直言って、非常に遅い動きだと思いますが、これにより初めて男性の性被害者の存在がはっきり示されたわけです。リベンジポルノ被害に遭った男性も相談しやすいようになればいいですね」

そして、男女問わず、リベンジポルノ被害に遭う人がいなくなることを祈るばかりだが、こうした時代の流れを受け、週刊誌に掲載される男性タレントの「ベッド写真」等の扱いは、どのように変わっていくのだろうか。注視していきたい。

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