志尊淳、際立つ役柄の多彩さにも「どんな役もアプローチと思いは同じ」

クランクイン!

2018/11/3 06:30

 ゲイの青年にトランスジェンダーのヒロイン、宇宙人アイドル…役柄の多様さという点で、同世代の中でも群を抜く志尊淳。だが当人は、その点について特別な思いはないという。彼にとっては全ての役が特別であり、個性的なのだ。映画『走れ!T校バスケット部』で演じたのは挫折を乗り越え成長していく主人公。一期一会の思いで熱い青春を駆け抜けた彼に思いを聞いた。

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志尊が演じた陽一は、かつて名門校でエースとして活躍するも、壮絶ないじめに遭い、バスケを諦めてT校へ編入。新たな仲間たちと出会い、再び夢を追いかけ始める。

「スポーツ群像劇をやったことがなかったので、やってみたいと思っていた」と語る志尊。バスケットボールは初挑戦だったが、撮影前から元日本代表選手の指導の下、約3ヵ月の特訓を受けた。バスケだけでなく、全体として大切にしたのが“等身大”の人物像とリアリティ。古澤健監督から言われていたのは「フェイクドキュメンタリー調にしたい」ということ。

「“いじめ”、“弱小高校が勝ち上がっていく”という言葉だけ聞くと、きれいごとのシンデレラストーリーだと思われやすいと思うんです。でも実話を元にしているので、いかに表面だけではなくリアリティと説得力を持ってやれるかが大事だと思って。見ている方に僕と同じ目線でバスケ部の空気感を感じてもらうことができたら、仲間やバスケを通じて陽一が成長していく姿に希望や可能性を見出していただけるんじゃないかと」。

当然だが、23歳となれば現場でも年下の俳優と接する機会が増えてくる。今回で言うと、佐野勇斗、佐藤寛太、西銘駿らが“後輩”に当たる。「自分の中で後輩という存在がなかなか慣れない部分でもあったんですけど、『淳くん! 淳くん!』という感じで来てくれるとすごくかわいいなって思います(笑)。僕も先輩にかわいがっていただいたので、そうありたいと気張っていますし、自分は先輩にあまりグイグイと行けなかったので『ご飯行きましょうよ!』とか言われると『何食べたい? 何でもいいぞ!』って思っちゃいます(笑)」。

そういった20代前半の、特に“イケメン”とカテゴライズされる俳優は、どうしても少女漫画原作や学園モノの青春ラブストーリーに高校生や大学生の役柄で出演することが多くなりがちである。

そんな中、志尊が演じる役柄の多彩さは、いわゆる性的マイノリティ(『半分、青い。』『女子的生活』)、激しいアクションを求められるヤクザの用心棒(『探偵はBARにいる3』)、さらには地球侵略を目論みアイドルとなる宇宙人(『ドルメンX』)と同世代の中でも際立っている。

だが当人は「そう言っていただけるのが不思議な感じがするくらい、自分の中で特別な思いは抱いていない」とあっけらかんと語る。

「何の特徴もないように見える学生の役でも、その役について考えていくと、一個人として必ずそれぞれの色を持っている。その内面を掘り下げていくアプローチ、人生を全うしようという思いはどの役も変わらないんです。ただ“マイノリティ”と言われる方々を演じる際に、その立場を象徴して発信する部分もあるので、そこでの責任の重さは自覚しています。でも、そういう役が『続いてるね』と言われても、僕の中でそうした感覚は全くないですね」。

“属性”ではなく、その人の中にある個性へのまなざし――。その誠実さが、多様な役を彼の元に呼び込むのかもしれない。「今、俳優という仕事のどこに魅力を感じるか?」という問いに対して出てきた答えも、自身の役柄のことではなく、“相手”への興味だった。

「演技で会話をする相手によって、引き出されるものが違うのが新鮮で面白いですね。対峙して『この人、すごいな』と感じる部分がそれぞれにあって、でもそれはカメラの前で面と向かって対峙している僕だからこそ感じられるものなんですよね。それが楽しいです」。(取材・文・写真:黒豆直樹)

映画『走れ!T校バスケット部』は公開中。

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