何がヒットしているのか見えない時代 大人たちの感性を刺激した曲とは?

grape

2018/11/3 04:00

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

大人たちよ!『聴く耳』を持とう

大人が聴く音楽がない。音楽業界の中で、一時期よく言われていました。大人たちは若い頃に聴いた音楽を聴き、新しいアーティストにはそれほど関心を寄せないとも。また、大人のアーティストが新曲、ニューアルバムを出しても売れない…。これも、アーティスト、音楽業界にとっても悩ましいことです。

1980年代、もう30年も前のことになりますが、今、六本木ヒルズが建っている場所に、WAVEという、音楽で埋め尽くされたビルがありました。1階はヒーリング・ミュージック、2階は日本のポップス、3階は洋楽、最上階にはセディックというスタジオがありました。当時、歩いて10分ほどのところに住んでいたので、散歩がてらよく新しい音楽を求めに行きました。WAVEお勧めのCDは新しく、洒落ていて、気持ちが高揚したものでした。まさに文化の発信基地、溢れるような音楽の中に感性を刺激するような出会いがあったのです。

かつて、国民全体で音楽を共有していたような時代がありました。レコード大賞を受賞する曲は、国民全体が納得するようなその年の大ヒット曲。音楽番組のたくさんあり、テレビをつけると音楽が流れていました。お茶の間に音楽がありました。今は、音楽はとても個人的なものになり、何がヒットしているのか見えない時代です。もっとも大人にだけ見えていないのかもしれませんが。

そんな大人の感性を刺激したのが、HONDAのCMで使われたSuchmos(サチモス)の『STAY TUNE』でした。80年代のR&Bが大好きだった大人たちは、イントロを聴いただけでわくわくしたのではないでしょうか? HONDAのCMが流れ始めてすぐに、Facebookで反応している友人たちがいて、感じることは同じなのだとうれしくなりました。

Suchmos "STAY TUNE" (Official Music Video)


サチモスに大人が反応する…それもそのはずです。この世代のアーティストたちは、自分が生まれていたか、生まれていなかった80年代の音楽に影響されて音楽を始めていることが多いのです。80年代は、ロックがもちろん、ソウル、ファンク、R&B 、AOR、ヒット曲がたくさんありました。それも、わかりやすいヒット曲のリズムは、私たち世代の感性に刻み込まれている。ですから80年代のリズムをベースにした新しい音楽は、大人たちにとっては心地いいのです。

「サチモスが好きなら、このバンドも気にいると思う」

と、ニューヨークにいる娘からLINEが入りました。THREE1989。平成元年生まれの3人組。今風の歌ですから歌詞は聞こえてきませんが、サウンドは気持ちいい。高速を運転しながら聴くのにぴったりです。

大人が聴く音楽がないのではなく、『聴き耳』を持つこと。息子のような年代が生み出す音楽にチューンを合わせることも、日々を楽しくするコツなのです。

UMBRELLA - Music Video / THREE1989


作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー


[文・構成/吉元由美]

吉元由美


作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」

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