戸田恵梨香『大恋愛』が『もののけ姫』裏でも2ケタキープ! TBS社長はドラマ見てないの!?

日刊サイゾー

2018/11/2 20:00


 金曜夜ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)は好調を持続。先月26日放送の第3話も、視聴率10.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、2ケタキープでした。初回の10.4%から、徐々に数字を伸ばしています。先週、裏の日テレは『もののけ姫』でしたので、なかなかよい調子です。

さらに今週は、TBS佐々木卓社長の定例会見で、初回の見逃し再生回数が167万回という同局ドラマ史上最高の数字を記録したことも報道されました。社長は会見で「王道の純愛ストーリーという直球を投げたつもりなんですけど」とか語っていたようで、たぶん見ないでしゃべってると思うんですが、大方の評判通り、たいへん面白いです『大恋愛』。振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

■人を愛し、愛される“条件”のお話


 いろいろあって“売れない小説家”真司くん(ムロツヨシ)とラブラブカップルに相成った産科医・尚ちゃん(戸田恵梨香)。先日、若年性アルツハイマーの前段階であるMCI(軽度認知障害)という診断を受け、自覚症状もそれなりに出てきていますが、基本的にはポジティブに生きている様子。

「だって時間ないんだもん、幸せを感じれるうちに楽しく過ごしたいの」

自分が記憶を失っていくという覚悟に裏打ちされたセリフが、なんとも悲しいところです。

ところで尚ちゃんには、少し前まで同じく医師である婚約者がいました。その婚約者・井原先生(松岡昌宏)のことを、挙式寸前になって「好きな人ができた」と言ってフッたのは尚ちゃんのほうでしたが、病気が発覚した今となっては、それも結果オーライ。なぜなら井原先生のお嫁さんになる条件は「健康な子が産めて、母親になる知性がある女性」というもの。認知症患者に“知性”など求めるべくもないことは、尚ちゃん本人が最も理解しています。

井原先生にもう気持ちはないけれど、あったとしてもヨリを戻す資格がないことを自覚している。新カレである真司くんは、そのすべてを受け入れてくれると言ってくれました。それでも、MCIがアルツハイマーに移行したら「別れよう」と告げる尚ちゃん。

「どうなっても別れないよ」

真司くんのその決意には答えず、「あたしの頭の中に鍵かけて、記憶の砂が零れ落ちないようにして」と、おまじないに頼るしかありません。

真司くんは真司くんで、尚ちゃんにできる限りのことをしてあげたい。とりあえずこの安アパートから引っ越したい。尚ちゃんは貯金が5,000万もある金持ちだけど、できればどうにか、自分の稼ぎでなんとかしたい。引っ越し屋のバイトを3倍に増やすなどしてみますが、収入は大して増えず、結果、過労による尿管結石で倒れてしまうのでした。

■で、頼れるのはどっちなのか


 尚ちゃんは、真司くんがずっと書いてなかった小説を書き始めていることに気づいていました。「思いついたことをメモしてる程度だよ」と真司くんは謙遜しますが、「真司には才能があるの。新しい小説が芥川賞獲って、大ベストセラーになって、印税が何億か入ってくるまであたしがお金出すから、だから頑張って」と、精いっぱい強がってみせるのでした。

そんな尚ちゃんも、アルツハイマーの世界的権威であるかつての婚約者・井原先生の前では弱みをみせてしまいます。診察に訪れた病院で、認知症を患い妄想を抱いてしまったご老人を目撃すると、もうポジティブではいられません。

「あの人みたいになるなんて耐えられない」
「死んでしまいたくなる」
「病気が進行するより前に心が壊れてしまう」
「余命3カ月って言われた方が、ずっと楽だった」

そして。

「先生、殺してくれますか?」

その幼稚で、だけど切実な申し出も、井原先生は優しくたしなめてくれます。

「あなたも医師でしょう? そういうこと言うもんじゃありません」

井原先生から、MCIの段階で使える新薬の研究についても聞かされた尚ちゃん、真司くんには言えない弱音を吐き出せたこともあって、上機嫌で診察を終えることができたようです。

持ち前のポジティブを取り戻した尚ちゃんでしたが、不意に鳴った電話は、真司くんが倒れて病院に運ばれたという報せでした。

■「侑市さん……」


 尚ちゃんは、真司くんが頻繁にお出かけするのはファミレスだかどっかで小説を書いているのだと聞かされていました。しかし、自分のためにバイトしまくって倒れたことを知り、ショックを受けます。聞けば真司くんは、尚ちゃんの元婚約者で現主治医の井原先生に会いに行って「コンプレックスを刺激されちゃって」バイトを頑張ったのだそうです。

そんなに真司くんを苦しめていたなんて、小説を書く時間も奪って、身体まで壊させちゃって……自省する尚ちゃんに、真司くんは優しく語りかけてくれます。

「好きなんだぁ。好きになっちゃったら、どんな尚ちゃんだって、好きなんだから」

もうたまらなくなってしまった尚ちゃん。思わず病床の真司くんに抱きつきます。そして、その唇から言葉が零れ落ちるのです。

「好き……ユウイチさん……」

井原先生の下の名前は、侑市といいます。ちなみに井原先生はそのころ、3人連続で新たなお見合いに失敗したりしていました。どうやら“お嫁さん候補”としては不適格な尚ちゃんに、気持ちが残っているようです。

もう真司に頼ることはできない。侑市ほど頼りになる人間は、どこにもいない。そんな状況が、尚ちゃんに“言い間違い”をさせてしまいました。

固まる真司。尚ちゃんの“本心”を疑うには十分な言い間違いです。でも、認知障害者にとっての本心って、またそれは複雑な話ですしねえ。心と認知って、どっちが先なのか、みたいな。うーん、切ないばかり。面白い。次回へ。

■職業意識高い系ドラマ


 この作品が見やすいのが、みなさん“大恋愛”しつつも、基本的な行動原理が職業意識に基づいていることです。

若年性アルツハイマーの権威である井原先生は、尚ちゃんとの結婚破談話よりもとりあえず治療についての話を優先しますし、尚ちゃんも自分の症状と向き合う中で、現役の産科医としてできることを模索しながら誇りを保とうとしているように見えます。尚ちゃんが真司くんに唐突なゾッコンLOVEしたきっかけも、真司くんの仕事である小説『砂にまみれたアンジェリカ』でしたし、引っ越し屋のバイトという職業が出会いの場を与えている。

結局、多くの健康な大人にとって生きることと働くことはほぼ同義なわけで、仕事と個人的感情の密接な関係が描かれることで作品の節度が保たれていると感じます。そのへんが心地よいところですし、だからこそ尚ちゃんが精神的健康を損なっていくという先行きに興味を引かれるのだと思います。

あと、前回も言及したところですが、この作品は美味しいものを美味しそうに食べるシーンが非常に効果的に挿入されているように感じます。真司くんが「初めて食べた」というウニとか、井原先生の回想で美味そうに中トロをほおばる尚ちゃんとか、尚ちゃんと真司くんの肉フェスデートとか。後々、アルツハイマーによる味覚の変化を描く伏線なんだろうなと、泣いちゃわないように勝手に身構えておこうと思います。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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