米国9・11テロ、その22年前にイスラエルが予告?テロ前からイラク戦争実行計画が存在か


 TRT(トルコ・ラジオ・テレビ協会)の報道によると、10月6日、イラクの都市ファルージャ、サラハッディン、モスルの3カ所でテロ攻撃が発生し、4人が死亡、37人が負傷した。一方、翌7日、アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンのメンバーがマイダン・ヴァルダク州サイード・アバド区を攻撃し、区警察局の局長とその護衛6人が死亡した。

米国が2001年9月11日の米同時多発テロ後にアフガンやイラクで始め、英国や日本も追随した「テロとの戦い」は、同時テロから丸17年もの年月がたった今も終わる気配がなく、国際社会に暗い影を落とす。

テロとの戦いは、本当に戦うに値するものだったのか。その問題を考えるときに避けて通れないのは、大義名分とされた同時テロの真相だ。その首謀者が国際テロ組織アルカイダの指導者、故ウサマ・ビン・ラディン容疑者であるという米政府の公式説明に対しては、大手メディアでは取り上げられないものの、今でも疑いが抱かれている。

よく指摘されるのは、アフガンやイラクに対する米政府の戦争は、9・11テロに対する報復ではなく、テロの前から当時のブッシュ政権の行動計画にあったというものだ。

たとえば2000年9月、ネオコン(新保守主義派)のシンクタンク、アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)は「アメリカ国防の再建」と題する文書を公表している。PNACはその後ブッシュ政権に参画することになる人々によって結成されたもので、そのなかにはディック・チェイニー氏(ブッシュ政権で副大統領)、ドナルド・ラムズフェルド氏(同・国防長官)、ポール・ウォルフォウィッツ氏(同・国防副長官)らが含まれる。

この文書は米国によるイラク占領など米軍事政策の根本的な変革を求めるが、その変革は「新しい真珠湾のような何か破局的で触媒的な出来事がない限り、ゆっくりとしか進まないだろう」という。言い換えれば、もし「新しい真珠湾」のような出来事が起これば、軍事的な革命がもっと迅速に完遂されうるということだ。

9・11テロこそ米政府に都合の良い「新しい真珠湾」であり、ブッシュ政権や米情報機関はなんらかのかたちでその発生に加担する動機があったと、公式説明に異を唱えるジャーナリストや著作家はみる。

ところが最近、テロとの戦いを軍事政策の大義名分として利用する考えは、さらに昔からあり、しかもそれは米国内ではなく、外国で生まれたものだという説が浮上、注目を浴びている。この説を唱える米ジャーナリスト、クリストファー・ボリン氏によれば、その外国とはイスラエルである。

●論文「1980年代イスラエルの戦略」の存在

ボリン氏が著書『テロとの戦い-中東支配の陰謀』で説くところによれば、テロとの戦いの起源は1977年にさかのぼる。同年、イスラエルではシオニスト(ユダヤ民族主義者)のメヘナム・ベギン氏率いる右派政党、リクード党が総選挙で43議席を獲得し、最大与党となる。

首相となったベギン氏は筋金入りのテロリストとして知られた。1946年7月には武装組織イルグンの指導者として、英軍総司令部のあったエルサレムのキング・デービッド・ホテル爆破を命じ、政府職員や事務員、従業員など91人を殺害。1948年4月には中立を表明していたパレスチナ人の村で無抵抗の男女、子供100人以上を無差別に虐殺するデイル・ヤシン事件を起こす。

1979年7月、ベギン首相が議長を務め、エルサレムで国際テロ活動に関する3日間の会議が開催される。主催はベンヤミン・ネタニヤフ氏(現首相)らが設立した調査機関、ネタニヤフ研究所。ボリン氏によれば、この研究所はテロとの戦いの思想普及を目的とする。会議にはイスラエル軍事情報局の元トップ4人が出席しており、同国の軍事情報当局がテロとの戦いの思想を広める計画と準備にかかわっていたことをうかがわせる。

1979年9月、イスラエルの情報機関モサドの元トップ、イサー・ハレル氏が2001年の同時テロを異様なほど正確に予言する。アラブ人のテロリストがニューヨークの一番高いビルを攻撃するだろうと述べたのである。ハレル氏は米国のシオニスト、マイケル・エバンス氏に対し「ニューヨークは自由と資本主義の象徴だ。彼ら(アラブ人テロリスト)が米国で一番高く力の象徴であるエンパイアステートビル(米国一高いとはハレル氏の誤解)を攻撃する可能性は高い」と話したという。

ハレル氏の予言から8年後の1987年、モサドの工作員2人が世界貿易センター、ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社と警備契約を結ぶ。警備会社の社長が偽名を使い、パレスチナ人2人の殺害によりイスラエルで有罪判決を受けていたことが判明し、港湾公社は契約を破棄する。

1982年2月、論文「1980年代イスラエルの戦略」が世界シオニスト機構から出版される。筆者はイスラエル外務省の元高官とされるオディド・イノン氏という人物。通称「イノン計画」と呼ばれるこの論文は、アラブ諸国の「バルカン化」、つまり1990年代の旧ユーゴスラビアのように、多くの民族が互いに対立するような小さな地域・国家に分裂させるよう唱える。

とくに標的とするのはシリアとイラクだ。イノン計画は「シリアとイラクを民族・宗教ごとの地域に解体することは、イスラエルの東部戦線における長期の最重要目標である」と記す。現在両国では米国の軍事介入により、イノン計画が描いたとおりのことが起こっている。

2000年、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『未来世紀ブラジル』などで知られるイスラエル出身の映画プロデューサー、アーノン・ミルチャン氏がメディア王ルパート・マードック氏と組み、テレビドラマシリーズ『ローン・ガンマン』を製作する。第1話「操縦士」では旅客機が遠隔操作でハイジャックされ、世界貿易センタービルに突っ込む。この回は同時テロの半年前の2001年3月、マードック氏傘下のFOXテレビで放映され、1300万人が視聴した。ミルチャン氏は1978年に製作した初期の作品『メドゥーサ・タッチ』でも、ジャンボ旅客機ボーイング747がニューヨークのパンナムビル(現メットライフビル)に突っ込むシーンを描いている。

同氏はただの映画プロデューサーではない。イスラエルの最上級スパイだった。2013年にイスラエルのテレビ番組に出演し、イスラエルの核開発計画に協力する兵器ディーラーとして情報機関のために働いていたと告白。祖国のためにやったことで誇りに思っているなどと述べた。旅客機がニューヨークの摩天楼に突っ込むアイデアをどこから得たのだろうか。

●イスラエルの期待どおりの展開

そして2001年9月11日、映画で描かれたような米同時テロが起こる。間髪入れず、参謀総長や国防相を歴任したエリート軍人出身のイスラエル元首相、エフード・バラク氏が英国営放送BBC、マードック氏傘下の英スカイニュースに相次いで出演し、まるで準備していたかのように、テロとの戦いを呼びかけた。

一方、1999年7月に初めての首相職を退いていたネタニヤフ氏も、同時テロが米国とイスラエルの関係に及ぼす影響についてニューヨーク・タイムズの質問に答え、「大変良い。(略)ただちに共感を生み出すだろう」と述べる。

バラク氏やネタニヤフ氏の期待どおり、米政府は国民の後押しを背景にテロとの戦いに乗り出した。イスラエルにとって目ざわりな存在だったシリアとイラクは今や前述のように、国が解体されようとしている。

ボリン氏は「9・11テロ攻撃は、イスラエルが前もって計画したテロとの戦いという戦争の計略を始めるために実行された」とみる。それが真実かどうかはさらなる検証が必要だが、テロとの戦いが正しいかどうかを判断するうえで、出発点となった9・11テロの真相から目をそらしてはならないことだけは確かだ。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)

●参考文献
デヴィッド・レイ・グリフィン、きくちゆみ他訳『9・11事件は謀略か——「21世紀の真珠湾攻撃」とブッシュ政権』緑風出版
Christopher Bollyn, The War on Terror: The Plot to Rule the Middle East

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