どうしたら「カリスマ・プレゼンター」になれる?──マイクロソフト澤円のプレゼン塾(その14)

常に最高のプレゼンテーションを提供し続けるには、どうしたらいいのか?
自身も数多くのファンを持つ澤円のプレゼン塾・第14回は、「獲得したファンに応え続けるプレゼン術」についてお伝えします。

「カリスマ・プレゼンター」はファンに未来を語る

「新しい体験がある」はどのようなパターンでしょうか。少々難易度高めなテーマですね。考えていきましょう。

ファンは貪欲です。歌手の新譜を待ち望み、人気監督の新作映画のニュースをかき集め、人気画家の展覧会に長蛇の列を作ります。なぜか。「体験」がそこにはあるからです。

ファンは、心を動かす「体験」を得るためにコンサート会場や映画館、ギャラリーに足を運びます。単に情報が欲しいわけではないのです。

アーティスト本人や作品と一緒に、時間と空間を共有することで感動を得たいのです。そしてその体験を持続させるために、CDを買い、パンフレットを買い、画集を買うのです。

そんなプレゼンテーションは可能でしょうか?答えは、イエスです。

そして、このようなプレゼンテーションができる人こそが、まさしく「カリスマ・プレゼンター」なのです。

単に情報を伝えるだけのプレゼンテーションは、簡単です。その代わり、ファンができることはないでしょう。オーディエンスに「体験」と思ってもらうためには、工夫が必要です。

もしかしたら、澤の記事を読み続けてくださっている方はお気づきかもしれませんね。はい、ポイントは「未来に関するストーリー」です。こちらは「その6」でご紹介させていただきました。

現状の価値観を共有するのはもちろん大事なポイントですが、それだけでは飽きられてしまいます。未来を語ることによって、「この人はまだまだ面白い話をしてくれる」「この人のアイディアは無尽蔵だ」「前回よりさらに成長している!次はどんなことが聞けるだろう?」と思ってもらえれば、ファン度はさらにアップします。

未来に関する話は、その人たちが今まで持ち得なかった知識やスキルです。それはそのまま聴衆の糧になります。

人は新たなるものに触れた時、期待をするとともに不安も抱く生き物です。「自分の価値観と一致している」状態は、この不安を取り除く効果があります。その上で「新しい体験」について語れば、相手がファンになってくる可能性が高まります。

たとえば、ある製品の新機能や、社内システムのアップデートについて語るとき、単にそのシステムの動きやデザインの変更点に関して語るのではなく、どのように使い勝手が向上してストレスが減るのかを、デモも交えてユーザー視点・ユーザーの言葉で語りかけてみましょう。

もし、価値観の一致がされていない状態でやれば、「なんとなく、うさんくさいな」とか「いいことだけ言っているのでは?」と斜めに見られてしまいます。

でも、しっかりと価値観が一致しているのであれば、「この人が言うなら間違いないのだろうな」とポジティブに受け止められる確率が飛躍的に上がります。

もし仮に、紹介した新機能や画面デザインが相当斬新であったとしても、受け入れてもらえるのです。

自分が大ファンの歌手が、少々奇抜な衣装を身につけていても「うん、これもアリかも!」と思うのに似ていますね。(あまりに奇抜すぎると引いてしまいますが…)

ファンを持つのは責任が伴う

ファンを持つことは、プレゼンテーションを行う者として最高の勲章であり、成長の証です。自分の行うプレゼンテーションに、時間を作って聴きに来てくれる人たちがいることは、何事にも代えがたい価値のあることです。

その一方で、ファンを持つことには責任を伴います。責任とは、ファンの皆さんに常に最高のプレゼンテーションを提供し続けることです。

最新技術動向をわかりやすく伝えたり、難解なメソッドを明快に説明したり、素晴らしいテクノロジーをクールなデモンストレーションで多くの人に見てもらったりし続けることです。

それも、前回より今回、今回よりも次回の方が面白いことが求められます。上がり続けるファンの期待値に、ずっと応え続けなくてはならないのです。

その責任を果たせなければ、とても大きな代償を払うことになります。これは芸能人と同じですね。「ファンが離れていく」という代償です。

離れたファンをもう一度引き戻すのは、大変な労力を伴います。それなら、常にファンを惹きつけ続けなくてはなりません。

「なんて大変なんだ!そんなの無理だ!」と思った方もいらっしゃいますよね。そんな方にぜひ思い出してほしいことがあります。

第3回目から4回目に書かせていただいた、「自分自身の棚卸」です。きちんと棚卸ができてさえすれば、自分の魅力がどこにあるのか、説明ができるようになります。その魅力を磨くことを怠らなければ、ファンはずっと付き合ってくれるようになります。

タレントや歌手の方で時々現れる「一発屋」のみなさんは、タイミングや時代背景、他の外因要素との兼ね合いなどで、コントロールできない状態でブレイクしてしまい、自分をじっくりと棚卸をする時間を与えられないままに消費・浪費され、結果的に疲弊して忘れ去られてしまいます。(私は芸能情報通ではないので、表面的な情報だけで判断している点はご容赦ください)

きちんと棚卸ができていて、「自分はなぜこれについて語れるのかを知っている」という状態が続けられれば、ファンが離れてしまうような品質劣化は起こしません。

もちろん、最新の技術について学ぶことを怠らないのは、エンジニアとしての基本動作であることは大前提です。その上で、自分の得意分野で自信を持って語ることができれば、ファンは信じてついてきてくれます。

ファンを持つことは大変です。でも、エンジニアがプレゼンテーションを通じてファンを獲得することは、みなさんのエンジニア人生を最高に豊かにしてくれます。

ぜひチャレンジしてみてください。

著者プロフィール
澤 円(さわ まどか)氏

日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長   立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界世界No.1プレゼン術」
Twitter:@madoka510


※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

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