「相談して出た結論なんて、ロクなもんじゃない」デキる人は、いつだって“孤独”に決断する――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第33 回目です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

(C)三田紀房/コルク

【本日の一言】

「優秀な人間が相談して出した結論なんて、ロクなものじゃない」

(『インベスターZ』第6巻credit.44より)


大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

投資部を秘密にしておくべき理由とは…

食堂で年上の男子3人を相手に、「日本にだってチャンスはたくさんある」と主張した財前。しかし、その様子を投資部の先輩たちに見られてしまいます。部室に呼び出される財前。先輩から「投資部の存在をにおわせる言葉を、部室以外の場所で発してはならない」と言われても納得がいきません。

財前は「どうして投資部のことを秘密にしておく必要があるのか?」と食い下がります。果ては「投資部のことをすべて公にして、みんなで投資を行えばいいのでは?」と言い出し、「そうやってみんなで投資することを全国に広めていけば、日本は素晴らしい国になるはずだ」と主張します。

ところが、投資部キャプテンの神代(かみしろ)から、「そんなことができるわけがない」とあっさり否定されてしまいます。神代は「投資とは、常に個で行うもの。これが投資の絶対的原理原則だ」と言います。ここで昼休みが終わり、各自、自分のクラスに戻る部員たち。財前は1人、「先輩たちの言うことは間違っている」と思うのでした。

「みんなで決める」のがなぜいけないのか?

なぜ、「重要なことをみんなで相談して決める」のがいけないのでしょうか?私はこの下りを読んで、「会社の合議(ごうぎ)制」のことを思い出しました。

合議制とは、組織の意思決定機関が複数の人員によって構成されることを言います。合議制は民主的な決定ができる一方で、決まるまでに時間を要し、決定事項は妥協の産物となりがちです。会社では、合議制以外に、小さな決定には稟議書(りんぎしょ)もよく使われます。稟議書には複数の承認印が押されますが、それは裏を返すと「押されている承認印が多ければ多いほど、責任の所在が曖昧になる」ということでもあります。

その昔、百姓一揆などの際に用いられた傘連判状(からかされんぱんじょう)という書状をご存じでしょうか。これは中心円に沿って放射線状に署名する方法のことを言います。万一、書状の端から順に名前を書いてしまえば、筆頭者が発起人だと見なされ、後で責任追及を受けます。傘連判状は主犯者をかくまうためでもあり、責任者の責任を希薄にする方法でもあったわけです。

人は、「白黒つけること」を恐れている

人は、重要な決定を自ら下すことを怖れる傾向があります。事例をお話しましょう。この話は私の社会人セミナーを受けた方から聞いたのですが、その方は国際結婚をしたため、子どもが二重国籍になりました。日本では、子どもが22歳になるまでに国籍を選べばいいことになっていますが、ご主人の国は基本的に二重国籍を認めていません。

ご主人は異国での暮らしで気苦労も多く、「子どもを自分の国の国籍にしたい」と言いました。一方、奥さまにとって国籍とは“条件”に過ぎませんでした。その方は、将来的に子どもが自分で国籍を変更する可能性も考えて、ご主人の国の国籍にすることに同意しました。お二人は法務局へ行き、子どもの日本国籍を放棄する手続きを行いました。

奥さまは、ご主人の希望通りにしたので、喜ぶだろうと思っていました。ところが、法務局の担当から子どもの除籍通知を手渡されたご主人は、困惑した表情で「子どもは将来、私を恨むかもしれません」と言ったのだそうです。それを聞いた奥さまは驚き、「人は口にしていることが必ずしも本心とは限らない」こと、「人は自分で白黒をつけるのがこわい」のだということを知った、ということです。

平凡な決定からは、平凡な結果しか生まれない

話を『インベスターZ』に戻しますと、投資部のキャプテンが財前に伝えようとしたのは、「人が集まって相談しても、たいていは平均的な答えしか出せない」ということです。ある研究では、「人は集団になると責任意識が薄れ、一生懸命さが失われる」という結果も出ています。重要な決定は、個人が負える範囲で行う必要があります。この考え方は、組織におけるマネジメントにも通じています。

これは「他人の意見を聞かない」こととは違います。優れた経営者は、周りの意見を広く聞く耳を持っているものです。大事なのは「それをした上で、孤独に判断できるか?」ということです。

果たして、財前はキャプテンのこの言葉の意味を受け止めることができるのでしょうか?

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト


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