『M-1グランプリ』『キングオブコント』『R-1ぐらんぷり』…お笑いコンテストは“相対評価”を採用すべきである!

wezzy

2018/10/13 18:15


 現在のお笑い界では、漫才の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)、コントの『キングオブコント』(TBS系)、ピン芸の『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ系)を代表とする数々の“お笑い賞レース”が繰り広げられている。若手芸人たちは優勝を勝ち取るべく、それぞれのネタに磨きをかけているわけだが、毎回のように話題になるのが、“審査”だ。

9月22日、『キングオブコント2018』の決勝戦がTBS系で生放送された。今回の決勝戦では、決勝進出10組がファーストステージとしてネタを1本披露、5人の審査員が100点満点で採点し、その合計点が高かった上位3組がファイナルステージに進出する。そしてファイナルステージで別のネタを披露し、同じく審査員が採点、1本目と2本目の合計点が一番高かったグループが優勝するというルールだった。

ファーストステージで1位となったのは、478点を獲得したチョコレートプラネット。続いて、わらふぢなるおが468点、ハナコが464点だった。ファーストステージ終了時では、チョコレートプラネットがかなり有利な展開だったが、ファイナルステージで最初にネタを披露したハナコが472点の高得点を獲得。続くわらふぢなるおが454点と微妙な点数となり、残ったチョコプラとハナコの一騎打ちという状態になった。

しかし、チョコプラは最後のネタで大きくスベってしまう。その結果、チョコプラは440点にとどまり、合計点で3位となり、ハナコが優勝することとなった。

この結果に対して大きな異論が出ることはなかったが、気になったのはチョコプラの2本目のネタに対する、審査員・松本人志の採点だ。

松本はハナコの2本目には95点をつけ、チョコプラの2本目には84点をつけている。その差は11点。ほかの審査員も全員がチョコプラよりもハナコに高得点をつけており、その点差は設楽統が7点差、日村勇紀が4点差、三村マサカズが2点差、大竹一樹が8点差。満場一致でハナコのネタのほうが面白いという審査結果だったのだが、なかでも松本は特に大きな点差をつけたのだ。

これはあくまでも推測だが、松本はハナコとチョコプラの2本目のネタを見て、優勝すべきはハナコであると判断したのではないだろうか。そして、チョコプラが1本目のネタで獲得した得点のアドバンテージで、かろうじて優勝してしまうことがないように、余裕を持った点差をつけたのではないだろうか──。

そういう意味では、松本はただ単に順位を決めただけであり、点数に根拠はないといえるだろう。チョコプラの2本目の点数は84点だろうが、80点だろうが、あるいは50点だろうが変わりはない、ハナコが合計点で1位になりさえすれば問題ない……という審査でしかないのだ。つまり、松本は一定の基準に基づいて絶対的に採点したのではなく、ハナコとチョコプラとを相対的に採点していた可能性が高いのだ。

これが、「一番面白かったグループに1票を入れる」という審査方法であれば、まったく問題ないのだが、キングオブコントは採点評価である。当然ながら84点と95点ではどうして11点差がついたのか明確に説明できなくてはならないし、さらにいえば審査員全員が同じ基準で審査しないとならない。松本の1点と大竹の1点に差があってはならないはずだ。

スポーツの採点競技では、採点の基準が細かく定められている。フィギュアスケートであれば、選手が実行した要素(技)ごとにジャンプの回転数や技の入り方、工夫の有無(レベル)などによって基礎点が決まり、その出来栄えが加味され技術点が決定。さらにスケート技術、要素のつなぎ、曲の解釈など、複数の項目を評価し、構成点を決定される。それらを合計し、転倒や反則などの減点を適用し、最終的な得点が決まるのだ。

本当にお笑いのネタを採点で評価したいのであれば、フィギュアスケートのように細かく基準を設定する必要があるだろう。たとえば、「ボケ数」「ツッコミの切れ味」「間」「テンポ」「演技力」「独創性」「構成力」などの項目を設け、それぞれに採点。さらに審査員のうちのもっとも高い点数ともっとも低い点数を削り、合計して得点をはじき出す……といった方法をとれば、公平な審査となる。

もしそういった形で、明確な基準を設けることができれば、無観客のなかでもネタの採点評価が可能となるし、ネタ順による有利不利もなくなるはずだ。
お笑いを採点で評価しようということ自体がナンセンス
 現状のお笑いコンテストでは、現場でウケたかどうかが評価の分かれ目となっている。客が温まっていないなかでネタをするトップバッターは不利で、客がリラックスして笑いやすくなってきた後半のほうが有利だとされているのだ。笑いを生むことが目的なのであるから、現場の笑いの量が評価に影響するのも当然なのだが、観客の笑いばかりに左右されるとなれば、審査員はネタそのものではなく、観客の笑いの量や質を評価していることになってしまう。それならば観客による投票で優勝者を決めれば事足りるのだ。

また、仮に客に伝わりづらいネタで笑いの量が少なかったとしても、それが“お笑い的に高評価”となることだってあるはずだ。それをしっかり見抜くことができるのが審査員であるのに、現場の笑いの量で得点が変わるというのであれば、審査員が見ている意味もなくなってくる。わざわざ採点をするのであれば、客の反応とは関係なく、ネタをしっかりと評価する基準を設けるべきだ。

とはいえ、フィギュアスケートのような技術的な要素で演目を見ることができる競技であれば、細かい基準を設けて採点することもできるが、あまりにも多種多様なものが同じ土俵で戦うこととなるお笑いネタの場合、同じ基準で評価できないというのも事実だ。とにかく大量のボケを入れてくる漫才もあれば、ゆっくりとしたテンポで独特の雰囲気で押し通してくる漫才もあるだろう。さらにコントとなれば、表現の幅は一気に広がり、絶対に同じ基準で評価などできない。

つまり、お笑いを採点で評価しようということ自体がナンセンスなのだ。現状のお笑いコンテストは、基準がないにもかかわらず、審査員たちはなんとなく点数をつけているだけなのだ。

それならばいったいどのようにネタを評価すべきなのか。それは、キングオブコントのファイナルラウンドで松本人志がしていたように、「相対評価」をすればいいのだ。

お笑いのネタを決められた基準で採点することは難しいが、異なる複数のネタを見比べて、どれが一番面白かったかを決めることは可能だ。もちろん主観による判断となるが、信頼されているお笑いの専門家であるところの審査員の主観なのだから、それは問題ないだろう。採点のまね事をするよりは、十分に公平な評価といえる。

キングオブコントの決勝戦ではすべてのネタを採点評価しているが、M-1グランプリでは決勝戦のファーストラウンドのみ採点評価で、最終決戦は審査員の投票となっている。一方、R-1ぐらんぷりは4組がひとつのブロックに入り、そのなかで審査員が3票を投票するというトーナメント方式となっており、こちらは相対評価に近いものだが、1組だけに3票を入れるパターンと、2票と1票に分けるパターンとの違いを明確に説明できないという点で、完全な相対評価とはいい難い。現状では、無意味な採点を排除した完全な相対評価は行われていないといえる。

ただただ“審査ごっこ”を続けているだけ
 では、どういった審査システムが好ましいのか。もっともシンプルなのは「1対1もしくはブロック制のトーナメント方式で、審査員が投票できるのは1票のみ」というものだろう。これは一般的な選挙とほぼ同じシステムであり、同一の基準を持たない複数の投票者の意思で何かを決定する際には、もっとも広く活用されているものだ。

あるいは、チャンピオンとチャレンジャーがネタで対決し面白かったほうに審査員が投票し、多かったほうがチャンピオンとして勝ち残っていくという勝ち抜き方式も、それなりに公平な相対評価となる。ただ、限られた決勝進出者のなかでこのシステムを採用すると、最後にネタを披露したグループが1回だけ勝って優勝してしまうというケースもあり得るため、ネタ順による影響が強いというデメリットがあるため、2時間程度で行われるお笑いコンテストの決勝戦には適切ではないといえる。

結局のところ「トーナメント方式」がほぼ完全な相対評価となり、もっともお笑いコンテストに適しているということになるが、ここ数年のなかでこの方式もっとも近い審査方法を採用していたのが、2011年から2014年まで4回にわたって行われたTHE MANZAIだ。4組ずつのブロックに分かれ、審査員が一番面白かった組に1票を投じ、さらに視聴者投票で1位だった組に1票が入るというシステム。視聴者投票の扱いは難しいところだが、意味のない採点を行っていないという点では、もっとも公平なコンテストだったといえるだろう。

そもそも、M-1グランプリの審査員だった島田紳助氏が1組目のネタを見て「これが基準となる」などとコメントするなど、審査員本人たちも結局のところ相対評価しかできていないのである。それを自分たちでもわかっているのに、採点評価がどういうものなのかを理解することなく、ただただ審査ごっこを続けているだけだ。

わざわざ大々的にお笑いコンテストを開催するのであれば、できるだけ公平なものとする必要があるだろう。それは未来を懸けて賞レースに参加している芸人のためでもあるし、「誰が一番面白いのか」という難題に対する答えを期待するお笑いファンもためでもある。お笑いを愛する者たちが、お笑いと真摯に向かい合っているからこそ、いつまでも適当な審査をしていてはならない。お笑いコンテストは、いち早く採点評価を廃止し、相対評価を採用すべきなのだ。

(文/青野ヒロミ)

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