少女VS巨人「バーバラと心の巨人」は激エモグラフィックノベル映画だった、ゲーゲー泣いた

エキレビ!

2018/10/12 09:45

1人の少女の孤独な戦いを描いた激エモ作品である『バーバラと心の巨人」。心の巨人ってなんのこっちゃというタイトルだが、しっとりとした絵作りと風変わりな少女の死闘にゲーゲー泣いてしまう一作だ。


名作グラフィックノベルが映画化! 風変わりな少女による"巨人殺し”とは
『バーバラと心の巨人』の原作は、2008年に原作ジョー・ケリー、作画ケン・ニイムラというチームが発表したグラフィックノベル『I Kill Giants』。2012年には邦訳版も出版されている。元が海外コミック、それもいわゆるスーパーヒーローものではないオルタナティブ・コミックが映画になったということで、『バーバラと心の巨人』はどちらかというと『ゴーストワールド』とかの仲間と言える作品かもしれない。

ザクザクとした描線で描かれたキャラのかわいさと終盤に連発される大胆な構図が魅力的だった原作コミックに比べると、叙情的な雰囲気の映像でまとめられた『バーバラと心の巨人』はずっとしっとりした印象だ。気温と彩度の低いロングアイランドの風景と、荒涼とした海岸に立つ奇妙な服装の少女バーバラの姿は妙に馴染んでいる。国籍は違うが、スウェーデンのイラストレーターであるシモン・ストーレンハーグの絵のような雰囲気だ。

主人公バーバラは風変わりな少女である。頭にウサギの耳の被り物をつけた少女バーバラは、人類を脅かす"巨人"と戦っているのだ。毎日のように巨人をおびき出す罠となる腐った食べ物を電柱にくくりつけ、森に入っては痕跡を探す。いつも身につけているハート形のポシェットには巨人殺しの巨大なハンマー"コヴレスキー"が封印されている。面倒を見てくれる姉の言うことも嫌いな教師の言うことも聞かず、学校でも友達はいない。しかし、バーバラにはそんなことを気にかけている暇はない。なんせ彼女は巨人と戦わなくてはならないのだ。

しかしそんなバーバラに、イギリスからやってきた転校生ソフィアという友人ができる。また、スクールカウンセラーのモル先生も、周囲と関係を持とうとしないバーバラのことを気にかける。いじめっ子の同級生テイラーと揉め、ソフィアとの友情の中で揺れ動くバーバラ。しかし町には不吉な兆候が広がり始め、巨人との対決の時は間近に迫ってくる。

日本版ポスターが発表された際、本国版とデザインが全然違うということで若干話題になった『バーバラと心の巨人』。しかし、前述のようにこの映画は『ゴーストワールド』とかに近い立ち位置の作品であり、個人的には「まあああいうビジュアルになるよな……」という感じだった。というか、割とあのポスターで妥当な内容の映画なんですよこれ! ここで詳しくは書かないが、見終わった後には改変されたポスターを見て「なるほどな」となること請け合いである。

全ての会話と感情がないまぜになった巨人との戦闘シーン、おれは泣いた
なんせ「巨人殺し」という主題がテーブルトークRPGや海外のハイファンタジー(ムキムキのおっさんとかえげつない怪物とかがゴロゴロ出てくる血なまぐさめの『スカイリム』みたいなやつ)を念頭に置いているため、日本人にはバーバラの言動がなんだかよくわからないところもあると思う。が、多分バーバラの言動は、周囲の人々には「知らない人間には全然わからないモビルスーツの名前を連呼しながら喋るオタク」みたいに見えている。オタクをいじめるのは良くないが、周囲が理解できないのも無理はない。

周りからはただの空想とされ、問題児として扱われる原因になっていたバーバラの"巨人殺し"。その背後の事情はちゃんと明らかになるのだが、『バーバラと心の巨人』の何がすごいって、実際にバーバラが巨人と壮絶なバトルを繰り広げる点である。大嵐に見舞われたロングアイランドに、バーバラが警告した巨人がやってくる。結局巨人と戦うのか戦わないのかどっちやねんと思っていた人も安心してほしい。戦います。

巨人とのバトルには、作中で積み重ねられた全てのやりとりや文脈が全て乗っかってくる。ゆえに戦闘シーンはもう始まった瞬間から激エモであり、おれは見ながらウーウー言って泣いてしまった。なにより、バーバラの空想だと周囲に勝手に思われていた"巨人"が空想の枠を完全に踏み越えた、原作でも鳥肌ものだったあの瞬間が、こんなにちゃんと映像になってくれたことが嬉しい。コミックは割とラフ(下手という意味ではない)な絵だから成立してるけど、実写の絵面があまりにもリアルというかシビアな雰囲気だったから「うまくいくのかな」って不安だったんですよおれは! 成立してたよ! おめでとうございます!

『バーバラと心の巨人』は1人の少女の戦いと友情を描いた映画であると同時に、「人はどのような時に"ここじゃないどこか"を必要とするか、そしてそこからいかにして帰ってくるか」という点に迫った作品でもある。そして、その極めて個人的な"どこか"が、境界線を超えて他者の目の前にも現れる瞬間をめちゃくちゃかっこよく描いた作品だ。映画を見慣れている人なら途中である程度オチは読めると思うが、たとえオチが読めたとしてもこの映画のエモ度合いは目減りしないだろう。必見である。
(しげる)

【作品データ】
「バーバラと心の巨人」公式サイト
監督 アンダース・ウォルター
出演 マディソン・ウルフ ゾーイ・サルダナ イモージェン・プーツ シドニー・ウェイド ほか
10月12日より全国ロードショー

STORY
ウサギの耳を頭につけた風変わりな少女バーバラ。自分と人々を脅かす"巨人"と戦うことを自らの使命と信じる彼女は町のあちこちに罠を仕掛けるが、周囲の人々からはただの奇行と見なされていた。しかしそんなバーバラにも友達ができ、周囲の人々との関係も徐々に変化していく

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