災害で自宅や家財に多額の損失、払う所得税が全額免除される方法!


 今回は災害減免法による軽減免除について、女性公認会計士コンビ、先輩の亮子と税務に強い後輩の啓子が解説していきます。

亮子「災害で財産を失うことも、他人事ではないよね」

啓子「実際に、そういう方もたくさんおられます」

亮子「保険などで対策しておくと同時に、税金などでも救済措置がないか、少しでも知っておいてほしいですね」

啓子「今回は、前回説明した雑損控除と比べて有利なほうを選べる、災害減免法による軽減免除について触れていきます」

●災害によっては所得税がゼロになることも

自然災害により住宅や家財などに損害を受けた場合にも、前回説明した雑損控除を利用した税金の軽減が可能です。また、一定の条件にあてはまる場合には災害減免法による軽減免除も適用可能で、いずれか有利なほうを選択することができます。

雑損控除は所得から損害による控除額を差し引いて税金を軽減する制度であるのに対し、災害減免法による軽減免除は、負担する税金を直接減らすことで税金を軽減・免除する制度(税額控除)です。

400万円の財産が災害によって240万円分失い、原状回復のための修繕などに60万円かかってしまった場合を考えてみましょう。その年の年収が650万円(総所得金額等466万円)の会社員であれば、所得税は約23万円となりますが、雑損控除を適用した場合と災害減免法を適用した場合とを比較してみます。
なお、雑損控除以外の所得控除は、社会保険料(収入×15%で計算)、基礎控除38万円のみ想定しています。個々の事情によって計算結果が異なりますのでご留意ください。

<雑損控除を適用する場合>
損失額 :損害金額240万円 + 災害等に関連した支出金額60万円 =300万円
雑損控除:1.と2.の大きい方
1.損失額 300万円 - 総所得金額等466万円 × 10% =253.4万円
2.災害関連支出額60万円 - 5万円 = 55万円
所得控除:雑損控除253.4万円+社会保険料97.5万円+基礎控除38万円=388.9万円
税金:(総所得金額等466万円-所得控除388.9万円)×所得税率5% = 約3.8万円

適用しなかった場合の税額約23万円に対し、雑損控除を適用すれば約3.8万円ですむということになります。

<災害減免法を適用する場合>
条件を満たせば次の所得に応じた減免割合で、所得税が減免されます。たとえば、所得が500万円以下であれば、所得税は100%免除されるということです。

その年の所得金額の合計額    所得税の減免割合
500万円以下         100%
500万円超750万円以下   50%
750万円超1000万円以下  25%

上記は所得による区分ですが、会社員の場合の税込年収に換算すると所得500万円は年収約688万円、所得750万円は年収約966万円、所得1000万円は年収約1220万円となります。今回のケースでは所得金額が466万円なので、100%減免を受けることができ、約23万円かかるはずだった税金が0円となるというわけです。

結局、雑損控除を適用すると約3.8万円の所得税、災害減免法を適用した場合は0円となりますので、今回のケースでは災害減免法を適用するほうが有利となります。

ただし、災害減免法による軽減免除は損失を繰り越すことができない制度なので、もしも損害金額が多額の場合には、所得から差し引ききれなかった損失を翌期以降3年間繰り越することができる雑損控除のほうが有利となる可能性もあります。

なお、国税庁の確定申告作成サイトでは、必要事項を入力すると自動的に有利不利を判断してくれますので活用してみてはいかがでしょうか。いずれを適用する場合でも確定申告が必要となります。

●災害減免法の3つの要件

雑損控除と災害減免法による軽減免除は、適用条件や対象となる資産などに異なる点があります。災害減免法による軽減免除の適用を受ける場合には次の3つの要件を満たしている必要があります。

(1)住宅や家財の所有者が納税者本人か生計をともにする総所得38万円以下の家族であること
(2)差し引き損失額が住宅や家財の時価の50%以上であること
(3)納税者本人のその年の所得(税込年収ではない)金額の合計額が1000万円以下であること

また、雑損控除であれば確定申告をすることで自動的に住民税も税金負担を軽減することができましたが、災害減免法による軽減免除の方法は、地域によって住民税の取扱いが異なりますので注意してください。

そのほか、以下に違いをまとめましたので参考にしてください。

●給与所得者や公的年金受給者の源泉徴収の猶予も

会社員や年金受給者が災害を受けたときには、雑損控除や災害減免法の適用を受ける以外にも、一定の手続をすることで所得税などの徴収猶予または還付を受けることができます。前述の災害減免法による軽減免除の3つの要件を満たしている人であれば、次に示した申請書を提出することで、給与や年金から税金を源泉徴収されるのを猶予してもらったり、最終的に還付を受けたりすることができます。

この申請書は給与・年金の支払者を経由して税務署へ提出します。つまり、会社員であれば勤務先に提出してもらうことになります。そして、申請が承認・却下されたときは申請者と勤務先にその旨が通知されることになっています。

通常、会社が給与を支払うときは給与から所得税などを源泉徴収して、従業員に給与を支払うルールとなっていますが、この申請書を提出した後に支払う給与にかかる所得税などの源泉徴収はしなくてもいいことになっています。また、会社員であれば会社が行う年末調整で税金の計算・納付の手続が完了しますが、この申請書を提出した場合には最終的に確定申告で税金の精算を完了させることになります。

税金そのものが減免される制度ではありませんが、源泉徴収による手取りの減少をなくし、確定申告による還付を待たずして手元資金を確保できるという点は重要です。その年の所得などによって猶予される期間などが異なります。具体的な徴収猶予や還付の内容を次の表にまとめましたので参考にしてください。

亮子「盗難も災害も振込詐欺も、遭わずにすむならそれが一番」

啓子「でも、どんなに注意していても、人の力ではどうにもならないこともあります」

亮子「実際に被害に遭った場合には、税金も含めて、少しでも軽減や救済される方法がないか探してみてほしいですね」

啓子「はい。雑損控除等は振込詐欺には適用できずとても残念なのですが……。専門家として、そういう情報を積極的に発信していけたら、と思います」
(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士)

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