発達障害の当事者が苦しむ「職場での“あるある”パニック」15項目

日刊SPA!

2018/10/12 08:54



昨年から大きな話題になっている「大人の発達障害」。SPA!で特集を組んだところ「自分もそうかもしれない」「知人が驚くほど当てはまる」と反響があった。

◆電話対応一つとっても当事者には複雑な作業に

発達障害の当事者たちは、その特性から職場でさまざまな困難に直面している。彼らが経験してきた仕事上のトラブルを聞いたなかで、代表的な要素をチェックリストにしたのが下の一覧だ。

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◆<当事者たちの声からまとめた「職場での“特徴”診断リスト15」>

□ 毎日のように忘れ物をしてしまう

「忘れ物が異常に多くて会社に傘が5本も置いてある。社外での打ち合わせでも資料を忘れることが何度もあった」

□ 遅刻や集合場所の間違いを頻繁に起こす

「時間通りに出ても、地図と周囲の景色を照らし合わせることが難しくて、遅刻してしまうことが多々ある」

□ 他人に仕事をどう依頼すべきかわからない

「仕事をどうお願いしていいのかわからず、ダラダラ悩んでいるうちに、いつも納期ギリギリになって他人に迷惑をかけてしまう」

□「あれ」や「適当に」などの指示がわからない

「あいまいな指示でまったく理解できなくても、聞き返して怒られるのが怖くて、つい『わかりました』と返事をしてしまう」

□ イレギュラーな業務が入るとパニックになる

「急に会議資料作成を頼まれて、15分ほどでできるコピーと冊子を作成することができず、会議ができなくなったことがある」

□ 業務を同時進行できず中途半端になる

「1時間内にいくつかの仕事を与えられて時間ごとに切り替える場合、今、何をやっていたのかわからなくなることがありミスをしてしまう」

□ じっと席に座っていられない

「会社で事務作業をしているときでも、1時間も椅子に座っていられず、共有スペースをウロウロしてしまう」

□ 電話でのコミュニケーションが苦手

「電話で相手の話を聞きながらメモを取るといつもグチャグチャに。聞きながら手を動かすことができない」

□ 仕事への集中力が極端に変わる

「食事も水も取らずに倒れる寸前まで何かに没頭するときがあれば、逆に上司と話をしていても、相手の話が面白くないとガチで寝てしまう」

□ デスクや個人スペースが整理できない

「小まめに整理できなくて、忙しいときは机に物が溢れ返っている。隣の席の人からよく舌打ちをされる」

□ 大勢が話している場所だと重要な情報が聞き取れない

「目の前で話している人の声と周りの雑音とか話し声が、僕には全部同じボリュームで聞こえる。そのせいで話に集中できない」

□ 会話中によく他人の言葉をさえぎる

「理解したということを主張したいがために、人の話を最後まで聞かず、つい言葉をかぶせてしまう」

□ 衝動的に周りが驚く行動をとってしまう

「仕事がうまくいかず、ついキーボードを思いっきり叩いてしまう。大きな音で周りが騒然となった」

□ 独自ルールへのこだわりが強い

「いつも決まった道、スケジュール、家事、食べ物、家での過ごし方など、決まったことを繰り返さないと気持ち悪くて仕事に取り掛かれない」

□ 駅など騒がしい場所が極端に苦手

「電話の着信、子供の泣き声、雷など苦手な音が多い。突然、大きな音を聞くとパニック発作が起こる」

※当てはまる項目が多い場合は、専門機関にかかるなど各人で対処をしてください

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◆当事者たちに共通する仕事の“あるある”ミスは……

悩みのタネとして特に多かったのは、「マルチタスクがまったくできない」という声だった。

「一度にいろいろ指示されるとパニックになる。結局ろくに進まないまま一日が終わるし、ミスも一気に増える」(32歳・製造)

「パソコンのソフトを複数同時に使えない。ウィンドウが3つ開いていると頭が混乱してフリーズしてしまう」(36歳・商社)

定型発達者(健常者)でもマルチタスクが苦手な人はいるだろうが、彼らはなぜここまで極端になってしまうのか。発達障害特性に悩むグレーゾーンの人のための自助会「グレーゾーンの会(ぐれ会!)」を主宰するオム氏が解説する。

「発達障害の人は、『何を優先させるべきか』という優先順位の組み立てが苦手な人が多い。僕らはよく『ワーキングメモリーが低い』と表現するのですが、一度に情報が流れ込んでくると、処理が追いつかずに硬直してしまうんです」

オム氏自身も発達障害の特性を持ちながら一般企業で働く会社員。これまで自助会を通じて300人以上の同じような悩みを抱える人の声を聞いてきたという。

「すると、参加者に共通する“あるある”のようなミスがあるんです。特に多いのが、『耳からの情報に弱い』というケース。メールならわかるけど、口頭だと何が重要なのかわからない。だったらメモを取れば?という話なんですが、『そもそも重要な言葉が何かピックアップできないので、メモすら取れない』と苦しむ人がかなりいます」

まるで情報の波が横一列で襲ってくるような感覚だろうか。当事者もいろいろと努力しているが、「重要そうな情報を付箋に書いてデスクに貼りまくるけど、それが増え続けて いつも“カニ”みたいになる」(31歳・商社)という。

ほかに電話対応が苦手という声も多く聞かれたが、オム氏いわく「発達障害の人にとって電話応対はマルチタスクになる」という。

「業務を中断して電話に出て(①)、相手の話を聞き(②)、それをメモする(③)。この3つの作業を同時並行するのが電話対応なんです。定型発達の人なら問題なくこなせることも、発達障害の人にはすごいハードルになることがある」

さらに、急な指示やトラブルなどイレギュラーな事態にも弱い。

「いつもの自分のやり方が崩れた瞬間、どう仕事を進めたらいいのかわからなくなる。結局、何も手につかなくなって長いことフリーズしてしまう」(35歳・事務)

このような状態になる背景を、神田東クリニック副院長で精神保健福祉士の佐藤恵美氏が解説する。

「発達障害の人には臨機応変や適当に加減するといった曖昧な判断が苦手で、思い込みが強かったり、前にやった通りの“自分で決めたルール”を変えられなくて、周囲からは頑固とか完璧主義と思われるケースがあります。こういった特性が相手の立場や状況と折り合いをつけながらやっていくことを阻害し、ときに職場の人間関係の軋轢を生んでしまうんです」

こだわりや不注意、衝動性などの特性が周りの人には理解できず、さまざまな対人トラブルが起きる。

「メールを読み飛ばすなどミスが多くていつも上司に怒られている。以前、叱責されてパニックになりかんしゃくを起こしてしまい、それ以来、仕事の相談ができる人が会社にいない」(28歳・派遣)

「自分が知っていることは他人も知っているはずと思い込んで、いつも業務連絡でトラブルが起きる。社内ではもう“使えないヤツ”扱いになってしまった」(33歳・食品)

一体、どれだけの人が障害のせいだと気づいているのだろうか。

【オム】「OMgray事務局」代表

昨年、軽度の発達障害特性に悩む人の自助会「グレーゾーンの会」を立ち上げ、300人以上が参加。現在は講演活動も行う

【佐藤恵美】精神保健福祉士

神田東クリニック副院長。職場のメンタルヘルスが専門で多くのビジネスパーソンと向き合う。著書に『もし部下が発達障害だったら』

― 大人の発達障害診断リスト ―

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