いろんな人と出会う夜中の25分…オンライン英会話が楽しい――鴻上尚史

日刊SPA!

2018/10/11 15:50



― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

◆使える英語のために一念発起 始めたスカイプ英会話

以前、週刊SPA!の連載で、この英語の本はすごい! と紹介したのが『難しいことはわかりませんが、英語が話せる方法を教えてください!』(スティーブ・ソレイシィ 大橋弘祐著/文響社)でした。

この本では、使える英語を身につけるためには二つの方法しかないと断言しています。

ひとつは、「スピーキング・テスト」。英検にもTOEICにもありますが、とにかく話すことに特化した試験です。スピーキングの試験のない通常の英検やTOEIC受けても、使える英語は身につかないとスティーブ先生は言います。

じつは僕も賛成です。TOEICで800点以上取っても、英語でまったくビジネスができない日本人が山ほどいます。TOEICの点数は、知識としての英語の目安になっても、使える武器としての英語の指標にはならないのです。

スティーブ先生が言う、使える英語を身につけるもうひとつの方法は、「スカイプ英会話」です。

いくつかの会社が運営していますが、スカイプを使っての個人レッスンです。

外人さんと一対一ですからね。いくらスカイプ越しとは言え、ハードルは高いなあとビビりました。

んがっ! 使える英語のためだと、決心しましたよ。一日一回、ネイティブと英語を話すことができれば、間違いなく英語力は向上するでしょうからね。

僕の申し込んだのは、一日一回25分間の会話です。たったの25分だと思いましたか? いやいやいや。

その昔、イギリスの演劇学校に留学した時、帰りの地下鉄が一緒になった相手との10分間の会話がどれだけしんどかったか。食堂で目の前に座られて、20分間、話しかけられることがどれだけ辛かったか。

大勢いれば、なんとかなるのですよ。授業もそうですが、数人いれば、みんなでわいわいしてるフリしながら、会話から逃げることも可能です。

でも、一対一になったら、もうどこにも逃げられないのですよ。なおかつ、意味が分かんないのにふんふんうなずいていたら、間違いなく途中で「~いうことをどう思う?」なんて聞かれて「ふぎゃあ!」という目にあいます。三人ならもう一人に任せられるんですけどね。

ですから、25分間っては、じつは大変なのです。

◆いろんな人と出会う夜中の25分

英語の先生は性別、国籍、年齢が選べるシステムでした。迷うことなく女性ですね。男性に怒られたりしたら哀しい気持ちになりますからね。

申し込んで、スカイプの画面に現れたのは、リスボンに住む30代のイギリス人女性でした。

登録している人達は、みんな、英語教師の自覚があるので、ちゃんと話をつないでくれました。なおかつ、会話が終わった後、五段階で生徒が評価しますから、気を抜くこともできないんですね。

でね、終わってみれば、なんだか楽しいのですよ。

25分間といえ、イギリス人女性と一対一で喋るなんて経験はなかなかないですからね。

なおかつ、スカイプですから、みんな自宅でやっているのです。僕は夜中の11時半からでしたが、リスボンは時差で夕方の3時半で、窓から午後の日差しが差し込む室内が背景で、なんだか、いきなりプライベートを見るようでドキドキしました。

気がつけば、僕ははまっていました。授業料としては、月会費で毎日やれば、一回25分が数百円の計算になります。もちろん、サボって月に一回だけだと、バカ高い25分になります。なんか、スポーツクラブの月会費システムに近いですね。

毎日は無理ですが、週に何回か、本当にいろんな人と僕は話しています。

元気がないのでどうしたのと聞くと「三日前にボーイフレンドと別れたの」と突然言い出した女性や「タイに旅行に来て、タイ人と恋に落ちたので今、彼とタイの南の島に住んでるの」と微笑む女性や「生活のために国の世論調査の仕事もしているの。今、『EUから本当に抜けることをどう思う?』というアンケートを取っているの」という中年女性や「夫の仕事のためにコロンビアに来ているの。夫の仕事は~と説明してくれた女性など、さまざまな人と夜中、25分間出会います。

これ、なんだか楽しいのです。

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