新庄剛志の「人生を超ポジティブに生きる」仕事術~アスリート本から学び倒す社会人超サバイバル術【コラム】

SPICE

2018/10/11 14:33

結果がすべてのプロ野球で、記録を超えたスター選手


ここでいきなり問題です。日本人選手初のメジャー4番打者は誰でしょう?

ヒントはニューヨーク。ハイッ松井秀喜と即答したくなるけど、正解は「01年8月3日のダイヤモンドバックス戦で4番スタメン出場のメッツ新庄剛志」である。

2000年オフにFA宣言すると、阪神から5年12億円の大型契約が提示され、ヤクルト、横浜も巻き込んだ争奪戦に……と思ったら、新庄は突然「やっと自分に合った野球をできる環境が見つかりました。その球団はニューヨーク・メッツです!」なんて電撃発表。契約書に記載されている年俸は2億2000万円、まあこんなもんかな……と思ってよく数えてみたら0の数が一個少ねぇ! マジかよ2200万円じゃねえかと自分でも驚くが、うまくいかない事があると逆に燃える性格にスイッチが入る。よしこの逆風こそオレが求めていた環境だと。いくぞ、アメリカンドリーム。

そんなエピソードの数々が紹介されているのが、先日発売された新庄の著書『わいたこら。――人生を超ポジティブに生きる僕の方法 』(Gakken)である。最近、平成プロ野球史を振り返る連載コラムのため、この30年間の新聞や雑誌を調べる作業を図書館で定期的にやっているのだが、あらゆる媒体でやたらと「新庄剛志」の名前が登場する。日米通算1524安打、225本塁打。失礼な書き方になるが、記録では新庄を大きく上回る選手は他にたくさんいるにもかかわらずだ。

だが、新庄の凄さは、結果がすべてのプロ野球で、ある意味記録を凌駕する存在になった事だ。“SHINJO”というジャンルであり、中村紀洋というブランド。そんな平成プロ野球のリアル。時に宇宙人とまで呼ばれた男は現在バリ島に住み、時々テレビ出演のため日本に帰ってくる。いったい彼は何を考えているのか? これまでの発言や行動の真意とは?

仕事の努力は人に見せないのが新庄流 


最初に断っておくと、元野球選手の本には大きく分けて2通りある。まずノーマルな自伝本、もうひとつは最近多い自己啓発本の作りだ。新庄の『わいたこら。』はこの二つをあわせて構成されているのだが、なにせ元の考え方が一般的な社会常識とはかけ離れているので完全にエンタメ本として成立している。はっきり言って人生の役には立たないが面白い。新庄本人もプロローグで「僕が話すことがブッ飛んだことばかりなのは自分でもわかっている」と断りを入れているくらいだ。

何でも好きな物が買えるセレブ生活時代の話、信頼していた人に20億円をだまし取られた話、CM撮影で訪れたバリ島が気に入り離婚して突然移住を決断した話、ちょっとオカルトテイストの話まで。正直、そのほとんどにまったく共感はできない。でも、世の中にこんな人もいるんだなという面白さはある。以前、石井一久の著書を読んだ時の感覚に近いかもしれない。石井はマイペースに「オトコ気を出す人はケガをしやすい」「体育会的な挨拶は気持ちワルい」「ナンバー3くらいがちょうどいい」なんて日本的な価値観を笑い飛ばしていた。

新庄と石井は似ているところがある。彼らは天然に見えて、実はしっかり計算と準備をして臨んでいる。新庄は現役時代、練習なんかしていないふりをして、実際はチーム練習後に室内練習場で猛烈な筋トレに励んでいた。何もやっていないフリをして試合では簡単にホームランを打っているように見せるのが、本物のスターだと考えていたからだ。

日本ハム時代に何かパフォーマンスをやる試合では絶対負けられないと、事前に対戦ピッチャーのデータと真剣に対峙する。だって、「パフォーマンスをした試合で負けるのはダサすぎる」から。だが、一方は楽天の新GMとなり、もう一人はバリ島で自由気ままに生きているのだから人生は分からない。72年生まれの新庄や73年生まれの石井の世代あたりから、メジャー経験者も増え、引退後の過ごし方も多様化している。いわば彼らは日本球界から自由になった(そこに頼らずとも食える)最初の世代と言えるだろう。

明るく笑って……46歳・新庄のバリ島生活


野球ファン的には95年オフの引退騒動の裏側が書かれていることも見逃せない。チームの顔とも言える看板外野手で、圧倒的な人気を誇るプロ6年目の23歳が前代未聞の引退宣言。例えば、2018年に広島カープの鈴木誠也が唐突に引退宣言したらと想像してみてほしい。しかも「センスがない」というなんだかよく分からない理由で。なぜ、あの言葉が出てきたのか? 平成プロ野球を追ってきたファンには興味深い歴史の証言は本書で確認してほしい。

で、新庄はバリ島でなにをやってるのか? 一時期エアブラシアートにハマったり、モトクロスバイクに熱中していたらしい。要は、誰かから指さされる事なく街を歩き、自分が楽しいと思う生活をしているわけだ。収入は日本時代よりもちろん減ったが、「明るく笑って行動した方がいいことが起きる」という人生観のもと日々を生きる。モトクロスにハマった時期、新庄はバイクの乗り方について送られたあるアドバイスに、自身の生き方を重ねている。

「バイクってさ、こけそうになるとき、思わずブレーキをかけたくなるだろ? それが間違いなんだ。こけそうなときこそ、むしろ加速してバランスを取ったほうが安全なんだ」

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