大病で弱った愛犬が、また元気に走り出した。「思い出」の力に驚き

女子SPA!

2018/10/11 08:45



<16歳の愛犬を亡くした心理カウンセラーが考えるペットロス Vol.19>

心理カウンセラーの木附千晶さんは、16年一緒に暮らしたゴールデン・レトリーバー「ケフィ」を2017年4月に亡くしました。ケフィはメニエール病などと闘い、最後は肝臓がんのために息を引き取ったのです。前後して3匹の猫も亡くし、木附さんは深刻なペットロスに陥ってしまいます。自分の体験を、心理カウンセラーとして見つめ、ペットロスについて考えます(以下、木附さんの寄稿)。

◆「高齢犬だから」という思い込みは、病気の発見を遅らせる

心臓の膜に水が溜まって、心臓の動きが障害された心タンポナーデを起こし、「死んでいてもおかしくなかった」(獣医師)とケフィが言われたこと。それは本当に命が縮む経験でした。

でもこの苦い経験と2度目の大病を乗り越えたケフィを見ていて、口が利けない動物と暮らすための教訓や、先の見えない介護や看護をしていくときの支えを得たような思いもありました。

まずなんと言っても大切なことは「『もう高齢犬だから』を理由にしないこと」です。大病の発見が遅れてしまった主な原因は、ケフィが散歩を嫌がったり、食欲が落ちたりという病気から来ていた症状を「老化のせい」にしようとしたことでした。

ちょうど皮膚の投薬治療をしていたため、ケフィが薬を飲まされるシチュエーションを避けようとしていたこともありましたが、いちばんの要因は、やはり私がケフィの老化を理由に沸いてくる不安を回避しようとしたことだったと言えるでしょう。

不安を回避しようとせず、現実を見るということは本当に難しいことです。でも、いつも一緒に暮らしている飼い主が「どこかが違う」「なんとなく変」と感じるということは、やはり何か不調があるのです。

たとえ平均寿命を超えている子だとしても、「高齢だから」を逃げ場にしてしまうと、後々、後悔することにもなりかねません。

◆大病を乗り越えて知った、運動と食事・体重管理の大切さ

言わずもがな、ではありますが日々の運動と食事の大切さも確認しました。

ケフィはずっと朝晩最低40分以上の散歩をしてきました。2014年のメニエール発症までは、週に数回ロングリードを付けて公園でボール投げやフリスビーをし、休日には自然のなかで走らせたり泳がせたりしてきました。

前年の特発性メニエール病に続き、心タンポナーデを乗り越えられたのは、そうやって“いざ”というときの体力や筋力を養い、かつ旺盛な食欲を維持してきたからからだと感じました。

人間と同じで食欲や肥満は、健康のバロメーターです。子犬のときトレーニングを受けた訓練士さんに「ご飯があればあるだけ、死ぬまで食べ続けますよ」と言われたほど食いしん坊のケフィの食事にはことのほか気を遣ってきました。

いちばん頑張ったのは、どんなに見つめられても心を鬼にして、むやみに食べ物を与えないようにすることです。足下に座って「おいしいでしょ?」とつぶらな瞳で見つめるケフィを無視することは、かなり大変なことでした。

ケフィも心得ていて、複数人間がいると“落としやすい人”に目星を付け、おねだりします。しかもたいていは、私の対角線上に座った人……つまり、私からいちばん遠い位置に座っている人を狙ったりします。

そんな大食漢のケフィの食欲を抑えつけるのではなく、低カロリーでも満腹感がある食事になるよう工夫してきました。毎食、野菜とお肉を煮込んだ“おかず”をドッグフードにかけるようにしたのです。旅行の時は、自炊ができれば現地でつくり、難しい場合には冷凍の“おかず”を持参しました。“おかず”の材料はもちろん、ドッグフードやおやつも、できるだけ無添加や自然素材を選びました。

こうした工夫がケフィの体を健康に保ち、この後発覚するがんの進行も遅らせる効果があったのではないかと考えています。

◆「人(犬)生は楽しい!」がケフィの生命力の源

それから、何よりも重要だと感じたのは、「とにかく、たくさんたくさん楽しい経験をさせてあげること」です。死の淵をさまよった直後に泊まったなじみの宿で、テニスコートを走り回るケフィを見ていて、本当にそう思いました。

確かにその走りっぷりや速さは、“風のように”走っていた頃とは違います。後ろ足が弱ってしまったのでジャンプはできなくなりましたし、つまづいたり、転んだりもよくします。倒れ込むようにして爆睡するまで、はしゃぐこともなくなりました。

けれども宿に着いたとたんにケフィの目はキラキラと輝きはじめ、自分からテニスコートに向かって走り出しました。人間がラケットでボールを打つと変わらずボール・ガールを務め、ボールをベンチの周りに集めては得意げにくわえてみせます。それはまるで、全盛期の自分に戻って楽しんでいるかのようでした。

おそらく「旅行のたびに嬉しいことがいっぱいあった」という思い出や、「人間と一緒に何かをする」という喜び、「非日常を楽しもう」という好奇心……そんな長い時間をかけて積み上げてきたポジティブな感情や感覚は、老犬になってもずーっとケフィの中にあったのです。その「人(犬)生は楽しいことに溢れている!」という思いが、ケフィの生命力の源のような感じがしました。

たとえ体は思うように動かなくなっても、その思いがあればケフィの心はいつでも“あの頃”に戻れるのです。そして“あの頃”の感覚そのままに、喜んだり、楽しんだり命を躍動させたりすることが、いくつになってもできるのです。そんな「もっと生きたい!」という思いが、ケフィの命を支えていることは間違いなさそうでした。

<文/木附千晶>

【木附千晶プロフィール】

臨床心理士。IFF CIAP相談室セラピスト。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。少人数の「ペットロス」セミナーを開催しています(港区東麻布、カウンセリングルーム「IFF」相談室内)。次回は2018年10月13日(土曜日)13時~16時です。

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