動物に学ぶ、サラリーマンの生存術 第2回 世界最大級のフジツボ「ピコロコ」のコミュ力


この連載では、動物たちの生態を通して彼らの「生存術」を紹介します。生存テクニックを学び、会社生活をサバイブしましょう。

今や20代のビジネスパーソンの2人に1人は転職を考えているそうですね。たしかに、転職のイメージもネガティブなものからポジティブなものへと変化しています。

「縁あって入った会社で仕事にも慣れてきたけれど、現状のままでいいのだろうか?」という悩みの渦中にいる人!海の中に答えがあるかもしれませんよ!
○葛西臨海水族園の不思議な生き物

1回目に続き、今回も舞台は葛西臨海水族園。まだあまり知られていない、不思議な生き物「ピコロコ」を見に行きましょう! 教育普及係・堀田桃子さんが案内してくれました

ピコロコは、世界最大級のフジツボ(の仲間)。フジツボというと、船の底や岩場などにビッシリ張りついた小さなツブツブ状の生き物を想像するかもしれませんが、原産地の南米チリの海では、殻の高さは牛乳びんぐらいにもなるそうです。

堀田さん:ピコロコは、葛西臨海水族園では「世界の海」エリア内の「チリ沿岸」水槽に展示しています。クロマグロやサメなどのダイナミックな水槽に比べると、あまり動きがなく目立たないため、素通りしてしまうお客様も少なくありません。でも、ぜひじっくり見てほしいです。

水槽を見ると、たしかによく見知っているフジツボの数倍大きい特大サイズ! 頑丈そうな殻にしっかりと守られています。こんなにしっかりとした殻があるから、これは貝の仲間なのでしょうか?
○仲間を感じるメカニズム

堀田さん:フジツボは、実はカニやエビの仲間なんですよ。現地では海産物としてポピュラーな存在で、塩茹でやスープにして食べるそうです。イメージとしては、エビが逆立ちしているように殻に納まっている感じです。かたい殻は、自分で石灰質を出して形成するんですよ。えさは、殻から脚を伸ばし、熊手のように広げて魚の卵やプランクトンを引っかけるように捕らえます。脚をオイデオイデ……という感じで手(脚)招きするようなしぐさもおもしろいですよ。殻の口には頑丈なフタがついていて、えさを食べない時は閉じて身を守ることができます。

そして、ピコロコは個体が何体か仲良く並んで、がっちりと水槽の底に張りついています。まさに、フジツボの仲間らしいですね。

ところで、えさを求めて動いたり、気分転換にスイーっと泳いだりはしないんでしょうか(笑)。

堀田さん:幼生の時は、非常に小さくてプランクトンのような状態なので、フワフワ泳ぐことができます。その後、何度か脱皮を繰り返しながら、仲間のそばに近寄ります。最終的には、岩肌などにくっつき、そこでもさらに脱皮してフジツボの形になります。ここぞという場所を決めたら、そこに張りつき殻を形成してその場を動くことはありません。
※水族館では展示の都合上、水槽に接着していません

本当に、最初に決めた場所で一生過ごすんですね。周りに全然仲間がいなかったり、えさが少ない場所だったりすると生きていくのは厳しそうですが……。

堀田さん:着地する場所を失敗しないように、仲間のいる場所を感じ取るメカニズムがあるようです。ピコロコは、一つの体にオスとメスの機能を持ち合わせる雌雄同体ですが、子孫繁栄のためにほかの個体と交尾し、他者と遺伝情報を交換した方が有利なので、周りの仲間と一緒にいることは重要です。すでにピコロコがいるところは、えさが十分にある可能性、潮の流れなどの環境がピコロコの生育に合っている可能性も高いのだと思います。

今回も、なんとも驚きの生態を知ることができました。

最初に決めた場所から動くことなく、そこを終の棲家として一生を過ごすピコロコ。さらに、雌雄同体のため自分だけで生きていけるし、他者と交わる必要性がなさそうですが、そうではありません。
○仲間を見つけて成長

人間を含めすべての生き物は、限られた環境の中でも他者と交わることで、刺激を受けて成長することができます。一人では難しいことでも、仲間の協力を仰いだりしながら実現することはできます。

最近は、社内だけでなく社外での交流も活発なので、成長の機会を外に求めるのもいいでしょう。「自宅と職場の往復だけの生活だし……」というあなた! 異業種交流会や勉強会などのサード・プレイスに出かけるのもよい刺激になるはずですよ。情報収集のアンテナは常に感度良好に保ちましょう。

さて、ピコロコが寿命をまっとうすると、空になった殻には「カチュディート」という魚がやってくるそうです。あれ、これは……何かの寓話?

もしかして、あなたの職場、それほど悪くない可能性もありますよ。居心地が悪いと感じているのは思い違いで、よそからみれば意外と恵まれた環境なのかもしれません。

いざ転職してみたら、前の職場がよくて、戻りたいと思っても、ポストが空いていないなんてことのなきように……。

●取材協力
葛西臨海水族園
東京都江戸川区臨海町6-2-3
03-3869-5152(代)

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