エア相撲に“泥の怪人”……個性あふれる離島の祭りの記録書『ニッポン離島の祭り』

日刊サイゾー

2018/10/11 00:00


 うわー、こんなお祭りがまだ残ってるんだ!

そんな驚きに満ちた離島の祭りを紹介するフォトエッセイ『ニッポン 離島の祭り』(グラフィック社)が発売された。著者はこれまでに340もの有人の離島を訪れたという写真家の箭内博行氏。

本書にみっちりと詰まっているのは「日本」の原風景。春は豊作を祈り、夏は台風や干ばつの猛威にさらされるので、豊穣平安や無病息災を祈る。秋になると収穫の時期で豊作を感謝し、冬は歳神さまを迎え、正月を祝う。四季に合わせて、祈ったり、踊ったり、歌ったり。ものすごくざっくりと見れば、日本中で同じことをしているのだが、離島の場合は島ごとに強烈な個性があふれ出ている。

愛媛県今治市の大三島の「大山祇神社」では、御田植祭で力士と“稲の精霊”が真剣勝負を繰り広げ豊作を占う“エア相撲”のような「一人角力」の人気神事がある。沖縄の宮古島では、まっ黒な見た目の“泥の怪人”のような神が現れ、異臭を放つ真っ黒なヘドロを人、車、家屋などに塗りたくって厄払いをする「パーントゥ」といった衝撃的な伝統行事もある。

どの写真も「なんでこんなことを始めたんだ!?」「昔のお祭りはどんな様子だったんだろう?」と妄想が止まらなくなる。

祭りって不思議だ。多くの伝統的な祭りは100年、200年とざらに続いていて、ものすごく歴史のあるものだと1000年続いたりもする。暮らしは大きく変わっているのに、ほぼ同じことを続けている。写真を眺めていると、ほとんど自然にあるものしか出てこなくて、白黒にして「100年前の写真です」と言われても、なんの違和感もない。

けれど、その存続はひとえに島民たちの「守っていかねば。自分たちの代で途切れさせるワケにはいかない!」という想いでしかなく、少子高齢化の今、継続はどう考えても困難だ。実は「一人角力」も後継者不足で一時休止していた時があったり、「パーントゥ」は、なんと観光客から「泥で汚れた」と苦情が入るようになったりもしている。

本書は、なんとか続いてきた離島の祭りの記録書として、重要な役割を果たしている。近頃、地方のロードサイドはどこへ行っても同じ風景が続いてしまいがちだが、島はやっぱりまったく違って、面白い。祭りを目的に島に訪れてみたくなる1冊だ。

(文=上浦未来)

●やない・ひろゆき

1973年生まれ、埼玉県育ち。國學院大学卒。今まで20年かけ、国内340の島へ。著書に、沖縄八重山諸島の祭りと人を写し描いた367ページのフォト紀行『約束の島、約束の祭』(情報センター出版局)、写真集『ニッポンとっておきの島風景』(パイインターナショナル)。雑誌『島へ。』(海風舎)にて島旅フォトエッセイ連載中。離島自治体のパンフレット制作にも携わる。ほかに「島」関連の撮影・執筆多数。島の自然・文化・人情に惹かれながら、国内の離島を活写し続けている。ヤナイフォトイメージ合同会社代表。(社)日本写真家協会(JPS)会員。

https://www.yanaihiroyuki.net/

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