のんびりした街ののんびりした店で楽しむ『地獄のジンジャエール』と『偽りのオムライス』

日刊サイゾー

2018/10/10 19:00

■チラ見えしているのは、黒い何か……


 小春日和の秋の某日、外国人にも人気の“谷根千”に、珍級なオムライスがあると聞いて向かうことにした。

JR日暮里駅から谷中墓地の中の路地を歩いていると、向こうから観光客らしき白人カップルが歩いてくるのが見えた。

近づくほどに、金髪の女のコが着ていたTシャツの胸元が、ありえないくらい大きく開いているのがわかった。下着までチラ見えしてしまっているのだが、ひょっとしてこれは、新しいファッションなのだろうか?

日本人にはできない大胆な着こなしに、墓の中のジイさんたちも、さぞやびっくりニヤニヤしているのではなかろうか(笑)。そうほくそ笑みつつ、墓を抜けて路地を抜け、やって来たのは古民家風のカフェだった。

店の前には黒板風の小さな看板がある。のぞき込むと、そこにある人気メニューのトップには、「No.1オムライス(黒)850円」と書かれているのだった。

そう、今日はこれを食べに来たのだ。

黒いオムライスとは、いったいどんな見た目なのか? 卵に竹墨かイカ墨でも入れたのだろうか? それとも海苔で覆った? 興味は尽きない。

通りに面した席には、夫婦らしき2人と、ロマンスグレーのおじさまが、日向ぼっこしながらお茶を楽しんでいる。筆者が座ったのは、おじさまの後ろの席だった。

メニューを見るまでもなく、とっくに注文するものは決まっている。しかし、うやうやしくメニューを覗き込み、そして、ショートヘアのかわいいスタッフさんにお願いしたのは、もちろんオムライスの(黒)。それと、ジンジャエールの辛口だった。

まもなくやって来たジンジャエールをひと口飲んで驚いた! 舌が痺れるほど辛いのだ。さらに、炭酸の泡がそこに突き刺さる!

もし、子どもが飲もうものなら泣き叫び、谷中の静かな店内は地獄絵図と化すに違いないくらい刺激的なのだ。このジンジャエールは、R指定すべきだろう、ハァハァ……。

ジンジャエールの辛味に舌が慣れ、刺激が風味に変わって来たころ、とうとう「オムライス(黒)」がやって来た、はずだった……。

黒くない。

予想を覆して、オムライスは黄色い。まるで普通のオムライスじゃないか。

その、「だまされた感」に驚く客が多いのか、ショートヘアのかわいいスタッフは、筆者の反応を見ようと視界の端っこで、若干顔を覗き込んでいるのだ。

ならば、あえて普通の表情をしてやろうと、ひねくれ者の筆者は驚きの表情をこらえ、「これくらいフツー」という、能面のような無表情でオムライス(黒)を、逆に傍観してやるのだった。

どうだ、かわいいスタッフ、まいったか。

スタッフが悲しみに暮れ、奥に消えたところで黒いはずの黄色いオムライスを、筆者ひとりで楽しむ。

「ふむふむ、レアな薄焼き卵のオムライスのてっぺんにきざみネギとは珍しいな。それにこの赤いパウダーはカイエンペッパーか?」

さらに辛味で追い討ちをかけるつもりかと、粉だけ舐めてみたが、辛くはなかったのでパプリカパウダーだろうか。

それにしても(黒)の意味は?

こんもり膨らんだオムライスの小山の裾をめくってみると、ハハーン……。よく見ると、卵焼きの薄い部分からもチラ見えしている。さっきすれ違った金髪美女と同じではないか(笑)。

サムネイルで見ると、ひじきかと思ってしまう黒いライスは、普通のオムライスのライスよりテカテカで、固めのリゾット風だ。具は何が入っているのが探ってみたが、まるで闇鍋のよう。イカっぽい食感はあったのだが、果たして……。

卵焼きの味もプレーンで、ライスが(黒)って以外は、ただのおいしいオムライスなのだった。となると、あと気になるのは、「スーパーマリオフライ」と「JOJOの奇妙なポテサラ」か。

にしても、この店の古さよ。築年数100年近くで、昔は酒屋と子どもの運動靴などを売る文房具屋だったそうな。大人と子ども、両方を相手に商売繁昌だったそうな……。

店名のとおり、のんびりするにはうってつけのカフェである。オムライス(黒)、うもうございました。

谷中 散ポタカフェ のんびりや「オムライス【黒】」850円

SNS映え  ☆☆
味     ☆☆☆
珍級度   ☆☆

(写真・文=よしよし)

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