カレー沢薫のほがらか家庭生活 第111回 コンビニ


今回のテーマは「コンビニ」だ。
皆さんはコンビニが好きだろうか、私は大好きだ、2カ月ぐらいなら住んでもいいと思っている。まず、入りやすく出やすい、そして24時間開いている。

おらが村ぐらいの田舎になると「閉まっているコンビニ」という怪現象を目にすることもあるが、それは20時に閉店しているからである、それ以降開けても蛾しか来ないからだ。

また、品揃えも意外なほど充実している、人間生きていれば午前2時の繁華街で突然パンツが必要になることも、一度や二度はある。

少年少女が、望遠鏡を担いで踏み切りに集合している間、俺は何をやっているのかという気持ちになるが、そんな時でもコンビニは優しく迎えてくれるのだ。

もちろんスーパーなどに比べれば品揃えは劣る、だが逆にそれが良いのだ。
何故ならスーパーというものは広すぎるのである、途中で歩けなくなり座り込んでしまいそうになることもしばしばだし、パンツが何故か必要な状態で広いフロアを歩きたくない。

また、その広さゆえに目的物がなかなか見つからないこともある、店員に聞けばいいと思うかもしれないが、私のようなコミュ症は一手でも人間との会話を減らしたいし、店員に話しかけるだけでも1リットルの勇気がいるのだ、よって延々探しまくって結局見つからず撤退、ということもよくあるのだ。

その点、コンビニはそのコンパクトさゆえ「ない」ということもすぐわかり、撤退もスピーディにできる。

とにかく便利なのでよく使うのだが、「コンビニをよく使う」と言うと、金銭的にだらしない人間と思われることがある。

コンビニの商品は、同じ物でもスーパーより割高なことが多い、よって便利だからと言って、スーパーに行く手間を惜しんでコンビニで済ますような女と結婚したら大変なことになるという理屈である。

私の夫が大変なことになっているのは否定できないが、それはコンビニのせいではない。私だって、夫の口に入るものなどはちゃんとスーパーで買っている。

それに、私がコンビニを利用するのは便利だからという理由だけではない、単純にスーパーの品よりコンビニで売っている物のほうが好きだからだったりもするのだ。

コンビニ商品、特に食べ物は、時々突出しているのである。

今年の夏はコンビニの「飲むヨーグルト」にはまった。
以前からコンビニの飲むヨーの美味さは知っていたが、特に今年の猛暑の中では「染みた」。

このコンビニの飲むヨーという奴は、正直言ってスーパーで売っている奴とは次元が違う、好みもあるだろうが、私は圧倒的にコンビニのほうが美味いと思っている。

ただ、美味すぎて15秒ぐらいで飲み切ってしまうため、レビューサイトに投稿するなら「コスパ最悪リピ確定」といったところだろう。

しかし、この飲むヨーが値段も突出しているかというと否である、多少の差はあるが130円ぐらいで買える。もちろん、同じような形の飲むヨーはスーパーにもあるし、そちらのほうが安い。

しかし私にとっては、コンビニの飲むヨーに130円出すのをケチって、スーパーの98円の飲むヨーを買うというほうが大損なのである。

これは「ダイエットコーラ」みたいなもので、体重が気になるなら最初からコーラなど飲むなと言うのと同じように、数十円惜しんでスーパーの飲むヨーを飲むぐらいなら、最初から水道水をロックで飲んだほうがマシであり、逆に98円損していると言える。

そもそも水分が摂りたいなら、公園の水でも飲んでおけばいいわけで、「飲むヨーを買う」という時点でもう無駄遣いなのだ。その無駄遣いの中で節約しようという発想自体が無駄である、叙々苑に来ておいて、サンチェしか頼まないような往生際の悪さだ。

損とは、出ていった金の大小だけではない、数円の金を惜しんで人生のクオリティが3億円下がることだってあるのだ。

コンビニには、飲むヨーや甘いパンなど、スーパーより数十円多く出すだけで「これがクオリティ・オブ・ライフ(QOL)ってやつですよ」と、ろくろを回すポーズで言えるような商品が数多く存在するのである。

しかし残念なことに、QOLを向上させてくれるような商品ばかりを選ぶと破産してしまい、クオリティ以前に衣食住という生命の根幹に関わる部分が脅かされるので、便所紙など何でもいい部分はできるだけ安い物を購入している。

一方で、人によってはこの便所紙こそがQOLの象徴という場合もあるだろう、極論を申せば、パンツにウンコが付かなければそれでいいはずのものだが、そこをあえて「ケツセレブ」的な高級品を使っている人も存在するはずだ。

そして、そういう人からすれば、飲むヨーなんて別になんでもいいのかもしれない。

どこに金をかけるか、というのは人それぞれなのだ、たとえ万札でケツを拭いている人がいても、他人の金の使い方に対し、おいそれ「無駄遣い」などと言ってはいけないのである。

○筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。

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