Kバレエカンパニー芸術監督 熊川哲也、『ロミオとジュリエット』を大いに語る~「コスパに厳しい大阪の人にこそ観て欲しい」

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2018/10/10 18:00



設立20周年イヤーに突入した熊川哲也率いるKバレエカンパニーが、ドラマチック・バレエの最高傑作「ロミオとジュリエット」を引っ提げ、大阪のフェスティバルホールで公演をおこなう(他に、東京、名古屋、広島)。この作品は設立10周年に誕生したバレエで、15周年にも上演しているKバレエカンパニーを代表する作品の一つ。公演本番に先駆け、自身が大好きで特別なホールと語るフェスティバルホールで、芸術監督 熊川哲也の会見が行われた。

―― 設立から20年が経過しようとしています。花形ダンサーとしてカンパニーを牽引されてきた熊川さんも現在は芸術監督として専任されています。

長いようであっと言う間の20年でした。僕が舞台に立たなくなって3年が経過しました。現在のKバレエカンパニーは、熊川ブームだった頃のように僕のバレエを見に来るお客様ではありません。その間、ダンサー達は成長し、世代交代は上手くいっています。良いダンサーがたくさんいるから、作品力で勝負したいと思っています。

そんな中、ここ大阪では、昨年の「クレオパトラ」はおかげさまでチケットは完売しましたし、その前の「海賊」も券売はたいへん好調でした。来年、設立20周年を迎えるにあたり、シリーズのオープニングに選んだ「ロミオとジュリエット」は絶対の自信作。今日はその魅力を語りにやって参りました。


―― フェスティバルホールは、熊川さんにとっても特別な会場だそうですね。

はい。旧ホールの時代から大変お世話になっています。新しくなっても、カラヤンはじめ世界の一流アーチストの歴史や伝統が今なお息づく素晴らしいホールです。新しいホールのこけら落としのシリーズで、ベートーヴェンの「第九」をやらせて頂いたことは忘れる事はないでしょう。多くのお客さまにこの素晴らしい劇場で踊るKバレエカンパニーを見て頂きたいと思います! フェスティバルホールは、大阪の皆さんが誇りに思うべき最高の劇場です。
フェスティバルホール3階席より見るステージ
フェスティバルホール3階席より見るステージ

―― 「ロミオとジュリエット」の魅力を教えてください。

「ロミオとジュリエット」の事もシェークスピアの事も、今さらここで説明する必要はないと思いますが、映画や演劇、クラシックバレエ、オペラといろいろな芸術の世界でシェークスピアは人気の題材として使われています。

誰もが多少なりとも経験はあると思いますが、障害のある恋というのは燃えるものですよね。いつの時代、どの世界でもリーチ出来そうで出来ない恋人、もしくは、そういった心の片隅に置いているモノを奪いに行くというのは永遠のテーマであり行為だと思うのです。

バレエの「ロミオとジュリエット」は、そういったテーマをはらんだシェークスピアの作品という事に加え、プロコフィエフという偉大な作曲家が曲を作っている点がポイントです。プロコフィエフや、同時代のストラヴィンスキーの音楽は、綺麗なだけでなく、雑音にしか聞こえないような哲学的な感情表現を有していて、まさに狂気。これを作品にすることは実に大変でした。

特に、1980年代の後半から1998年まで10年間を英国ロイヤル・バレエ団で過ごし、ケネス・マクミラン先生の振り付けで「ロミオとジュリエット」を踊って来た僕には、越えられない壁のようなものがあります。常に先生の振付を頭の片隅に置きながら制作しました。


ーー マクミラン版の「ロミオとジュリエット」と熊川版のそれとの違いはどんなところでしょうか。

まず振り付けが違います。たとえば1小節の中にステップをいくつ入れるのかなどは意識しました。マクミラン先生が4つ入れるところ僕は8つ入れるとか、この部分は先生が5つだったら僕は1つで行こうといったように、テイストの差はありますね。

僕は現役時代、超絶技巧者だったので、僕が振り付けるステップはとても難しいと思います。振り付けていて、後輩たちが踊りづらそうにしているのを見ると、うーんと思いますが、それこそがKバレエカンパニーの生命線だと思っています。他では、セットや衣裳のディテールやテイストの違いではないでしょうか。一言でいうと“豪華絢爛さ”という事になるのでしょうか。ここまでセットや衣装に予算をかけている団体はないと思います。
Kバレエカンパニー「ロミオとジュリエット」 (C)Toru Hiraiwa
Kバレエカンパニー「ロミオとジュリエット」 (C)Toru Hiraiwa

―― 今回主役には若手を起用されています。ロミオ役とジュリエット役のお二人を紹介してください。

バレエの世界でスターと言える地位に辿り着ける人は極々僅かです。人より踊りが綺麗だとか、人よりジャンプが高いだけではスターにはなれません。世論を味方に付けないといけないし、自身の歩んできたプロフィールも味方に付けないといけない。色々な要素がかみ合ってスターは誕生します。二人は、その事を知り尽くしている僕が認めたダンサーです。

ジュリエット役の矢内千夏は、18歳でうちのバレエスクールに入学して、翌年入団。19歳でソリストに昇格して以降、順調にキャリアを重ね今年プリンシパル・ソリストになりました。将来が楽しみな、うちのカンパニーを代表するダンサーです。
ジュリエット役の矢内千夏
ジュリエット役の矢内千夏

ロミオ役の堀内將平は、ルーマニアでキャリアを積んで日本に活躍の場を求めて帰って来たダンサーです。ここ最近、こういう傾向が増えていますが、新国立劇場や東京バレエ団なども含めて、ようやく日本でプロのダンサーが活躍できる環境が整って来たと言えるんじゃないでしょうか。彼は今年ファースト・ソリストに昇格した期待のダンサーです。
ロミオ役の堀内將平
ロミオ役の堀内將平

この二人が今回の「ロミオとジュリエット」大阪公演で主役を演じます。パートナーを組む上で、身体のサイズ感がぴったり合いますし、堀内の持つフェミニン(中性的)な雰囲気と、矢内の若さと表現力が絶妙な調和を見せ、大阪のファンの皆様にきっと満足していただける事と確信いたしております。

―― 熊川さんが考えるバレエそのものの持つ魅力とは何でしょうか。

本当の意味で総合芸術ってバレエだけだと思うのです。バレエには、音楽や絵画、建築などの要素も含まれていますし、「こんな事まで出来るの?」と思わず叫んでしまうような超人的なテクニックもあります。映画が始まる前の高揚感や、オーケストラのチューニングを聴くドキドキ感なんかも素晴らしいですし、僕もたまにオペラも観るので、その魅力もよく知っていますが、じゃあ、どっちが優れているの?と聞かれれば、必ずバレエが勝つと思っています(笑)。


―― 最後に大阪のお客様にメッセージをお願いします。

大阪の人って感情表現が豊かでラテン系ですよね。ここ20年大阪で踊っていますが、イエスかノーかみたいに結構はっきりと言う方が多いです。東京の人って面白くないと思っても、これはこれでいいんですよって言う物分かりの良い方が多いように思うのですが、大阪は真逆(笑)!費用対効果がまず頭にある。これだけ払ったから、これ位は返してもらわないと。

そんなシビアな大阪で、Kバレエカンパニーのチケットが売れているのは本当に嬉しいのです。何といっても、まずセットや衣装にかけている金額が半端ないんで、その点はまず幕が開いた時点で納得していただけるのではないでしょうか。その上でうちのカンパニーのバレエをご覧になっていただければ、絶対に喜んで頂けるはずです。10月20日、皆様のお越しをお待ちしています。
Kバレエカンパニーをよろしくお願いします!
Kバレエカンパニーをよろしくお願いします!

取材・文=磯島浩彰

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