少食・偏食でも“子どもの味覚”は育てられる!フードアナリストに聞いた「味覚が育つ絶好のチャンス」とは

ウレぴあ総研

2018/10/10 17:23

体を作る基礎でもあり、乳幼児期の子育ての核ともなる「食」。好き嫌いが多い、量を食べない、食べることに集中してくれない…など子どもの食に日々四苦八苦しているママも少なくないはず。

『子どもの頭がよくなる食事』を上梓した、とけいじ千絵さんは著書や講座を通して、子どもの味覚の育て方を伝えている人気フードアナリスト。

まだ思うように食べてくれなくても、今からでもできる食育はある?食でつまずいたとき、どのように解決していけばよい?と、とけいじさんに堅苦しくない食育のお話を伺いました。

■食育の基本は“薄味”。口の中の食べ物に意識を向けることで味覚が育つ

――「子どもの頭がよくなる食事」を面白く読ませていただきました。我が家も来年から小学生なのですごく興味深かったです。

ただ、実際、周囲の親御さんを見てみると、子どもが食事をまともに「食べない」「好き嫌いが多い」で困っている方が本当に多いので、そんなお子さんたちにも今日からできる食育について伺いたいと思っています。とけいじさんが考える「子どもの食事でこれだけは気を遣ってほしい」ことから教えてほしいのですが…。

とけいじ千絵さん(以下、とけいじ):食育という意味で一番大事なのは“薄味”にすることですね。これはデータにもなっているのですが、小学生が実際取っている食事と、摂取基準の理想値で、一番かけ離れているものは油の多さでも野菜不足でもなくて、塩分の過多なんですよ。

――薄味にする。すでに、結構難しいことを言われている気がしますが…。

とけいじ:食育と聞くと栄養バランスや彩りのよいおかずを何品目も作って…というイメージがありませんか?

薄味にするっていうのは、たとえばお味噌汁や煮物なら水を少し足して薄めればいいってことなので実践するのは比較的簡単です。

濃い味に慣れてしまうことの何が問題なのというと、口に入った瞬間に「しょっぱい」など感じると、それ以上、食べ物の味について考えなくなってしまうんですね。

食べながら、口の中の食べ物に意識を向けること、「これは何の味かな?」と考えることが一番味覚を育てる方法なので、薄味を意識してほしいと講座や著書でも伝えています。

ただし、濃い味に慣れるっていうのもたった一食で慣れてしまうわけないので、外食したら、その次の食事を薄味にして調整するという工夫ができると良いですね。

幼児期は好き嫌いがあっても構わないし、たとえ完食できなくても「一口食べてみる」っていうプロセスがすごく大事なんですよ。

なんだったら口に入れたものをペッと出しちゃっても平気です。口に入れて味わった時点で、味覚情報は脳にインプットされますから。

幼児期にストックしておいた味覚情報をもって大人になるので食経験は豊富であればあるほどいいんです。

たとえ今の時点でピーマンが嫌い、青魚が嫌い、と思っても一口食べた経験があれば、成人するころには好きになっているかもしれない。

そうしたら残り50~60年の人生はその素材を楽しめますから。

■好き嫌いが生じるのは当たり前。食わず嫌いにしないためにはとりあえず一口食べてみること

――うーん、確かに子どもの時点で好き嫌いされると落ち込みますけど、自分自身の経験も振り返ると味覚も好みも変わりますもんね…。

「最悪、口から出しちゃってもいい」はもっと周知されたら偏食や、食べないで困っているパパママもすごく楽になりそうです。

とけいじ:好き嫌いは2,3歳で出て当然ということももっと知られていくといいなと思います。

咀嚼して飲み込む、ことまでは重要ではなくて、一口でも食べる、を積み重ねていけば、後々好き嫌いが減って、結果的に栄養をまんべんなくとれるような体になっていきます。

だけど、将来的に食わず嫌いが続いてしまって、食べられるものが限られていたら、そもそも食事が楽しくないだろうし、海外旅行に行ったときに現地のものが何も食べられなかった!なんて結果になると少しさみしいですよね。そういう状況を避けるために、幼児期に食に対するポジティブな記憶や豊かな経験を育むことを大事にしていけたらいいなと思います。

私が取り組んでいるのは、何品目も摂取して、という栄養面の食育とはまた切り口が違います。

栄養バランスが、とかおかずは何品作って、ってことばかり考えていると苦しくなるし、外食でそこをフォローするのは難しいですよね。

■外食、中食は母親以外の味を知る、味覚を育てる絶好のチャンス

――外食の捉え方についても気になっていたんです。著書の中では、中食(お惣菜などを買ってきて食べること)や外食について罪悪感を感じる必要はないと仰っていますよね。これは「味覚を育てるために、薄味を心がける」とは反するような気がするのですが…。

とけいじ:確かに、外食や市販のお惣菜は味が濃くなりがちですよね。中食の場合は、”和え衣”のというのですが、たとえばお惣菜の野菜炒めに大根おろしを入れてみる、ポテトサラダにヨーグルトを混ぜてみる、など素材を1品足して塩味を中和させる、外食するときはメニューが偏らないように…と、気配りすることは必要です。

ただ、外食や中食自体は独自のメリットもあるということを覚えてもらえると嬉しいです。

実は好き嫌いの多い子って、お母さんの味しか知らないために、他で食わず嫌いをしているっていうパターンもすごく多いんですよね。

色んなものを食べて食経験を豊富にすることが味覚を育てる方法だとお話しましたが、外食や中食も、家庭では食べない味に挑戦する、お母さんとは違う作り手の味を味わうという意味で非常に有意義なんです。

仕事や家事育児で疲れているときに、お惣菜を買ってくるだけでも気が楽になりますよね。それを無理に「手作りしなきゃ」って思って作っても、食卓に料理を並べるころには親が疲れ切ってもう試合終了という状態だったら、食事を楽しむ余裕すらなくなってしまいます。

そんなとき、お惣菜を買ってきたら、作る負担が減った分、「いま、食べているものは何かな?」とか「どんな味がする?」など子どもに話しかける余裕も生まれるかもしれませんよ。

■これからの時代、親が子どもに伝えたいのは「いかに食事から楽しみを得るか」

――その視点はすごく新鮮ですね。外食や中食の選択肢も増えている中、「子どもの食事は手作りじゃなきゃダメ」って罪悪感を持っている人たちにぜひ知ってもらいたいです。

とけいじ:食の未来を考えてみたとき、これから先、お母さんが栄養バランスを考えて食事を作る、という機会はどんどん減っていくと思うんです。

外食だって発達しているし、栄養バランスの取れた料理が作れるような材料がすべて入ったキットだって発売されているし、将来的には子ども用のサプリも充実していくと思います。

栄養や健康はアプリが管理してくれるでしょうし、バータイプの完全栄養食品で1日の栄養が賄える時代も来ている中で、親が子どもに伝えてあげられるのは、「いかに食事から楽しみを得るか」という文化的な側面なんじゃないかと思っているので、私は心をはぐくむものとして食育を捉えています。

――娯楽としての食、という印象ですね。

とけいじ:大人だって、お弁当をオフィスで食べるか、天気のいい公園で食べるかで心持ちが変わることがありますよね。

特に子どものうちは家でお母さんと二人のときはあまり食べないけど、公園に行ったら食べた、おばあちゃんの家なら食べた、ということもありますよね、それは食事の”味”より雰囲気や環境で楽しんでいるという証拠。

家でお母さんと二人で食べる状況を退屈に感じているなら、お弁当箱につめて外でたべてみたりシチュエーションを変えてみるだけでもいいかもしれません。食の記憶を楽しいものにするためにも、あまり気負わないでいられればなと思います。

■ まとめ

この日のお話で最も興味深かったのが「食の未来」について。母親が料理を作る機会が減っていく、と聞いて、楽になっていくならその流れに乗りたい!と思ったものの、サプリやバーで栄養を賄う、という点については抵抗を感じていることに気づきました。

子育ての常識は時代によって変遷することは理解しているものの、「自分はサプリを飲んだことがないから、子どもにも必要ないだろう」と、栄養面での常識についてはアップデートできていなかったように感じます。

一方で、外食を活用すれば味覚を育てることができるというのは、嬉しい発見。食育を柔軟に考えられるきっかけになりそうですね。

【取材協力】とけいじ千絵さん

フードアナリスト/食育スペシャリスト

1級フードアナリストR。協会認定講師であり、「審食美眼(=食に対する審美眼)を磨き、彩りある食生活を」をモットーに、『審食美眼塾』を主宰する食のスペシャリスト。

企業の商品開発、飲食店コンサル業務を経て、「味覚」に特化した新しい食育に取り組む。セミナー講師、保育施設給食監修をはじめ、各種メディアで活躍中。

著書『0~5歳 子どもの味覚の育て方』『子どもの頭がよくなる食事』が好評発売中。

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