カイワレハンマー 期待、不安、希望……彼らが明かした、いまの気持ち “インディーズラスト”アルバム『Sequel』インタビュー

SPICE

2018/10/10 17:00

カイワレハンマーが6thアルバム『Sequel』を本日・10月10日にリリースした。すでにアナウンスされている通り、同作はインディーズラストのアルバムとなる。今回のインタビューでは、収録曲の詳細を聞きつつ、“インディーズラスト作”に込めた想いも語ってもらった。そこで明かされた二人の共通の想いとは?


──6枚目のアルバム『Sequel』、通常盤は2枚組で全13曲が収録されていますけども、どれも個性が強い曲ばかりで、かつ、かなりエモい一枚になりましたね。

BEMA:ありがとうございます!

──そういう作品になったひとつの側面としてあるのが、これがインディーズラストアルバムになると。

BEMA・imiga:はい。

──これは、メジャーデビューがもう決定しているということですか?

BEMA:決定してますね。

──たとえば、ライブで「メジャーデビュー決定しました!」っていう報告をするパターンって結構多いじゃないですか。先に「これでラストです!」って発表するのって結構珍しいかもと思って。

BEMA:ああ……なんか、全然わかんないですよ、そういうことに関して(笑)。あとから「メジャーデビューします!」って言ったら、「あ、じゃあ前のやつでラストだったんだ……」ってなるし、それで寂しくなっちゃうのかなと思って。「メジャー」って結構マイナスに捉えられるじゃないですか。

──人によってはそうですね。

BEMA:だから、隠し事するよりも先に言っといたほうがいいなと思って。そうすれば自分たちもその気持ちをアルバムに乗せられるし、案の定ラストっぽいものが作れたので、言っといてよかったです。
カイワレハンマー
カイワレハンマー

──imigaさんも先に言っといたほうがいいなと思ってました?

imiga:そうですね。マホトが「インディーズラスト」って動画で出したときに、やっぱり結構インパクトがあったし、そっち方面での拡散されやすさ的にも、先に発表しちゃおうかなとは思ってました。

BEMA:まあ、YouTubeのネタにもなるんで(笑)、早く言いてえなと思って。

──確かに格好のネタではありますからね(笑)。インディーズラストであることを受けての制作は、筆が進みやすかったですか? それとも逆に考え込んでしまった?

BEMA:曲によりますね。今回、DISC1を“POPS”、DISC2を“HIPHOP”でわけてるんですけど、DISC2は俺が全部担当して、DISC1は全部imigaがやっていて。

──最初からそうしようと決めていたんですか?

BEMA:そうです。もっと個人の色を出したいなと思ってたんで、自分が担当しているほうはトラックもコンセプトも全部自分で決めて、それぞれがお互いのほうに乗っかる感じにしたんですけど。だから、自分のものに関しては速攻終わったんですけど、(imigaが)わりとファンタジーめなコンセプトを出してきてたりしてたんで、うーん……っていう感じになるときは結構ありました。

imiga:毎回制作するときはトラック先行なんですけど、ファンタジーめな曲が何曲かあって。何か1曲はそういう系をやりたいなと思っていたんですけど、気づいたら全体的にそうなっちゃって。

──imigaさんのなかで、POPS=ファンタジーみたいな認識があったり?

imiga:そういうわけでもないんですけど、制作に入る前にアニソンをずっと聴いていた時期があったんですよ。YouTubeとかにアニソンメドレーみたいなやつがあがってるじゃないですか。

BEMA:ああ、あるね。

imiga:あれの90年代とかゼロ年代のやつを聴いていて。俺、絵を描くのが好きなんですけど、作業BGMをアニソンにすると気分が高まってうまく描けるんですよ。それでずっと聴いてたんでこうなったのかもしれないです。

──リード曲の「grow up cycle」はDISC1に収録されていますが、アップテンポでアッパーな感じもあるんだけど、どこか切なさを感じさせるものになってますね。

imiga:インディーズラストなんで、これで解散かと思わせるぐらいの曲にしちゃおうと思って。歌詞を見た感じ、本当にこれが最後だぞっていうか、実際に「最後」っていうワードも多いと思うんですけど。でも、たとえばマホトのバースでは<エンドロール後2期発表>とか。

BEMAアニメの最終回で「あーもう終わっちゃうんだ」って思ってたら、第2期!みたいな。終わりと見せかけて終わんないよ、新しいことをまたやるよっていう。

imiga:だから、インディーズラストとメジャーデビューの境目みたいな感じの曲になってますね。

カイワレハンマー
カイワレハンマー

──この曲は4分28秒で、収録曲の中で一番長いんですよね。他は4分を切っていて、全体的に尺の短い曲が多いなと思って。

BEMA:なんか、曲が長いとライブしていて飽きるんですよ(笑)。「まだラスサビあんじゃん!」って。

imiga:確かに3分ぐらいがちょうどいいかも。

BEMA:うん。HIPHOPってそれぐらいの長さの曲もあるじゃないですか。最近のUSとかだと2分ぐらいのものも多いし。

──カニエ・ウエストが尺の短いアルバムを連続で出したりとか。

BEMA:そうっすよね。短いほうがお腹いっぱいにさせないから、俺的には聴くのもそっちのほうが好きなんですよ。7分の曲と2分の曲で、ループのされかたってちょっと違うと思うし。「あ、終わっちゃった、もう一回!」みたいな。DISC2のほうは、全体的に短めにしようかなとは思ってましたね。

imiga:俺も短いのは好きですけど、たとえば、Dメロから変化がついていく感じとかも結構好きで。そういう意味では「grow up cycle」みたいな4分ぐらいの曲もいいんですけど、やっぱ3分ぐらいがちょうどいいかな。DISC1のなかだったら「ToT~ハロウィン狂騒曲~」とかはいい感じですね。お互いのバースがあって、最後に掛け合いがあって、みたいな。

──ちなみに、コンポーザーの方に「こういう曲がやってみたいんすけど」って提案したりとかはしました?

BEMA:HIPHOPのほうは全部そうでしたね。「こういう感じで」ってお願いして、「もうちょっとこういう感じにしたいです」っていうやり取りを何回かしてました。

imiga:僕は来たトラックを聴いてコンセプトを考えてましたね。

──それぞれ性格が出てますね(笑)。いろいろやりとりした曲というと?

BEMA:「HATE」とかはそうでしたね。あと、「雨天決行」は、「BPMはこれぐらいでいいんですけど、周りの音をもうちょっと抜いてもらって、もっとMPCで叩いてますよっていう感じにしてください」とか。ベタベタなものにしたかったんで。

──HIPHOP盤として提示するのであれば、すごくわかりやすいものにしたかった。

BEMA:そうです。たとえばフェスに出たときに、ポップスな曲をやるのもすごく楽しいし、お客さんが楽しんでくれるのが一番なんですけど、なんか、自分ももっと楽しみたいなと思って。自分が本当にやりたい音楽っていうのはDISC2のほうなんですよ。だからもうベタで、クラシックっていわれる感じのビートに乗りたいなと思ってました。

カイワレハンマー・BEMA
カイワレハンマー・BEMA

カイワレハンマー・imiga
カイワレハンマー・imiga

──DISC2収録の「流酸の溜まった落とし穴」はAmaryllisBombがトラックを制作されていますけど、これはどういう経緯で?

BEMA:最初はやるつもりじゃなかったんですよ。あんまり好みじゃなかったんで(笑)。でも、メジャーに行っちゃうと、仲間内で「トラック作ったからやってよ」っていうように作った曲をアルバムに入れることもできなくなるのかなって。わかんないですけどね、まだ行ったことないんで。だったら、せっかく仲間が作ってくれたんだし入れてみるかって。ただ、全編トラップな感じだったんで、俺らやったことないのにどうしようって(笑)。こいつはまったくトラップに乗ってないし。

imiga:本当にわかんなかったんですよ(苦笑)。トラップはKOHHをちょっと聴いたぐらいだったんで。だからいつも通りな感じでやってますね。

BEMA:ちょっと楽しみにしてたのに(笑)。なんか、トラップってパワーワードが命というか。どう韻を踏むかよりも、どれだけ耳につくフレーズを入れるかみたいなところが日本のトラップなのかなと思っていたので、そんな感じで作ってましたね。あと、タイトルも某カードゲームに出てくるトラップカードから持って来ていて。

──なるほど(笑)。そこもトラップにかけていて。

BEMA:でも、全部同じだったらまずいかなと思って、「流酸」の「流」だけ文字を変えてますね。

──そして、DISC1の最後は「GOOD BYE」、DISC2の最後は「ラストソング」という曲で締めくくる形になっていますが、これもインディーズラストということを受けて?

BEMA:「ラストソング」は最後だからこれにしたんですけど、「GOOD BYE」は終わりっぽいけど、コンセプトは違うんですよね。自分の嫌いなところにさようならっていう意味なんで。

imiga:まあ、ちょっとかけてる感じですね。

──「GOOD BYE」では、自分の過去やこれからのことをそれぞれのバースで書いていますけど、imigaさんは<病み期が多かった>と。

imiga:多かったですね。

BEMA:そうなの? 知らなかった。

imiga:社畜してるとなるんだよ。

──あ、まだ会社勤めだった頃のことを。

BEMA:ネジ工場ね。

imiga:うん。仕事のミスでいろいろ言われて病んでた時期があって。

BEMA:工場でミスって結構やばくない?

imiga:やばい。一回ミスったら品物全部ダメになるから。だからもう本当に歌詞の通りで、もしかしたら俺も<消えたアイツみたいに成り得た>のかなって。ちょっと重い感じではあるんですけどね(苦笑)。でも、そうやって考え込んじゃうメンタルにグッバイってことですね。

カイワレハンマー・BEMA
カイワレハンマー・BEMA

カイワレハンマー・imiga
カイワレハンマー・imiga

──BEMAさんは<正解不正解なのかはいらない/と強がった過去にサヨナラバイバイ>と書いてますね。

BEMA:わりとずっと強がってましたからね。今はこうなったからいいんだけど、こうなってなかったら本当にちょっとやばいなっていう感じだったし、こういう立場になっても不安は結構あるんで、それを思いっきり歌詞にしました。

──それこそ歌詞にもある<カメラマイク持った二足の草鞋>というスタイルで大丈夫なのか、とか?

BEMA:最初の頃はそうでしたね。ヒップホップ畑で育ってきた人たちには、「いやいや、それはないっしょ?」って言われることもあるんで、う~ん……と思うこともありましたけど。あとは<この年で手に入れた物が怖いだろ>とかも、この年じゃ普通手に入らないものまで手に入っちゃってることって、よくよく考えると結構恐怖だなと思って。自分は25歳で豊洲PITでワンマンやって埋めましたけど、それは40じゃ無理だし、動画っていう商売も40、50じゃ絶対に無理だし。今のファンも言ってみれば一応手に入ったものではあるんですけど、自分がおっさんになったときにはたぶんもういないと思うんで。年をとってこれ以上のことってあるのかなとか。

──かなりリアルな……。

BEMA:そうっすね。今まではわりと詮索させるのが好きだったんですけど、これは一回聴けばわかるぐらいの感じで書きました。

──そして「ラストソング」は、まさにインディーズラストメッセージという感じですが、imigaさんは<ちょっぴり寂しい感覚さ>、BEMAさんは<本音を言えば少し寂しいんだ>とそれぞれ書いていて。これは事前にそうしようと話していたりとか?

BEMA:いや、全然(笑)。自然とこうなってました。

imiga:うん。

──2人ともそういう感情があると。

BEMA:やっぱちょっと寂しいっすよね(笑)。

imiga:はははは(笑)。そうだね。

BEMA:なんかいろいろ考えちゃって。俺、メジャーの話が決まったときに、話がデカすぎて「ちょっと一日休むわ」って本当に一日休んだんですよ。「え、これから俺らどうなっちゃうの?」と思って。いい意味で遊び感覚でやっていたものが、そうじゃなくなっちゃうのかなとか。でも、みかん箱の上でライブしたときもあったから、そう考えると嬉しいし、それでもやっぱ寂しいし。

カイワレハンマー
カイワレハンマー

──なるほど。

BEMA:だから、これでメジャーに行って、失敗して、自分がおっさんになったときに「アーティストになりたい!」ってインディーズで頑張ってる人に、ドヤ顏で「いやあ、メジャー行くのはやめたほうがいいよ」って。

──はははははは(笑)。

BEMA:「俺、昔(メジャーに)行ったんだけどさ、ダメだったんだよねえ~」って言いたいっす。

──なんで失敗すること前提なんすか(笑)。

BEMA:はははははは! いや、どっちにしろドヤれるからいいなと思って。

──ああ、成功しようが失敗しようが。

BEMA:そうそう。孫とかできたら「おじいちゃんは昔メジャーでやってたんだよ」って言いたいっす。

──imigaさんもちょっぴり寂しい感覚があると。

imiga:まあそうですね。寂しいっていうのはあるし、メジャーデビューして成功するか失敗するかわかんないですけど、結局は好きなら続くんですよね。どうなってもやめはしないと思うんで、自分は。なので「安心してちょ」って感じで。

──メジャーデビューは「安心してちょ」ぐらいのポップさで捉えてほしいと。そして、東名阪のZeppで『カイワレハンマー ツアー2018 ~第一章完結~』を行われますが、どんなライブになりそうですか? 初回限定盤のDVDに収録されている、2月18日に行なわれた豊洲PIT公演(全国ツアー31箇所のツファーファイナル)は、かなり演出を盛り込んでいましたけど。

BEMA:今回も演出は盛り込みたいなと思っていて。豊洲で完全にネタが尽きたんですけど、あれもできる、これもできるっていうのが結構あったんですよ。だからエンターテイメント寄りな方向でやりたいなとは思ってますね。あと、3ヶ所全部バンドで廻るんで、そこも期待していてもらいたいなって。

──なんか、演出のハードルどんどんあがっていきそうですね。この前の豊洲PITを拝見してましたけど、正直「マジで!?」って思うぐらいの量でしたし。

BEMA:そうなんすよね(笑)。バンドの人達も「そんなに入れる!?」って言ってたし。あと、友達のお母さんが初めて観に来てくれたんですけど、「生でYouTubeの画面見ているみたいだった」って言ってて。それいいなと思ったんで、そういう演出も入れようかなと思ってます。

imiga:俺も、自分が担当した曲の演出は自分でいろいろ考えたんですけど。

BEMA:俺じゃ考えつかなかった演出もあるんですよ。結構バッチリハマってて。

imiga:まあ、彼がエンターテイメント大好きなんで(笑)、そこにあわせて自分もがんばろうと思います。

カイワレハンマー
カイワレハンマー

──あと、今後の気になることとして、メジャーデビューの具体的な発表はいつになるのか、というのがあるんですが。

BEMA:そこはちょっと今考えていて。発表の仕方もちょっとおもしろい感じでやりたいなと思ってますね。

──そちらも要注目ということで。今の心境としては、不安とワクワク半分半分みたいな感じですか?

BEMA:そうっすねえ……でも不安なほうが多いっすよ(苦笑)。

──なんか今日のBEMAさん、珍しくネガティブ発言が多いんですけど(笑)。

BEMA:だって不安っすもん(笑)。マジでどうなるんだろうと思って。

imiga:制作面とかね。

BEMA:そうそう。メジャーのやり方も試してみたいけど、あっちのやり方をどこまで自分たちが飲めるのかっていうところはあるし、あっちもあっちで俺たちのやり方をどこまで飲めるんだろうっていうのもあるし。不安ですよ。

──ワクワクはない?

BEMA:もちろんそこもありますよ。ウチらだけだったら(タイアップは)深夜枠が限界でしたけど、そういうところでワクワクしてたりはしますね。

imiga:何かの主題歌になるとかね。身内にも自慢できるし(笑)。

BEMA:それはある。あと、契約するときの条件で、他のアーティストに作詞させてくれるなら入るっていう話をしたんですよ。俺、作詞家のおじさんになりたいなと思って。やっと将来の夢が決まったんで、ちょっと頑張ってみようかなって思ってます。

文=山口哲生 撮影=大橋祐希
カイワレハンマー
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