シュレッダー“自壊”で価値上がる? バンクシーとアート資本主義のジレンマ

AbemaTIMES

2018/10/10 07:00


 5日、イギリス・ロンドンで行われたオークションで、バンクシーの「赤い風船に手を伸ばす少女」が約1億5000万円で落札された直後、額縁に仕込まれたシュレッダーで細断され話題になっている。

バンクシーはロンドンを中心に覆面で活動する芸術家で、世界各地に神出鬼没で作品を描くこと、その社会風刺的な作品から「芸術テロリスト」と呼ばれている。2005年にニューヨークの美術館と大英博物館に勝手に自身の作品を展示して注目を浴び、2015年には「dismal(陰鬱な)」と「land」を合わせたテーマパーク「dismaland(陰鬱な国)」を手がけ、事故死したお姫様に群がるパパラッチや難民を乗せたボートを操縦するアトラクションなどをつくった。


そうした作品の過激さやゲリラ的な手法に注目が集まるが、バンクシーは作品を通じて人々の目を社会問題に向けてきた。海外メディアによるとバンクシーは過去「販売用に作られたもの以外、作品は買わないで」とコメントしており、自身の作品が取引の材料にされることに批判的であることも知られている。それを行動に移したのが2013年、ニューヨークのセントラルパークに突然露店を出し、フェンスにくくりつけて絵画を販売した時。普段は数十万ドル(数千万円)の値が付く作品を、露店では60ドル(約7000円)で販売。絵画は1日で8枚しか売れなかった。


ニューヨーク・タイムズによると、バンクシーはかつて「ストリートアートはそのままの状態で残したい」との思いも語っている。しかし、その思いとは裏腹にあることが起こる。2014年、パレスチナ自治区ガザでの紛争で、イスラエルの空爆により街が壊滅した翌年、バンクシーはガザ地区に入り現地の瓦礫に多くの作品を残していく。そんな中、爆撃で破壊された家で唯一残った扉に描いた、右手で頭をかかえるギリシャの女神の画は、その後現地に表れた芸術家を称する人物が2万円でドアごと買い取り、持ち去ってしまう。


作品に込めた意思から離れたところで作品が取引の材料になる――その積み重ねへの批判が、今回作品に仕込んだシュレッダーに表れているのか。バンクシーはInstagramで、ピカソの言葉を引用した「破壊は創造だ」とも綴っている。

■作品の“破壊”がバンクシー反するアート資本主義化を助長?
 そんなバンクシー作品は日本でも見ることができる。AbemaTV『けやきヒルズ』では、港区・台場の「GALLERY21」に飾られている作品を前に、現代アーティストの中島晴矢さんとバンクシーの意図を読み解いた。


バンクシーが自身の作品をシュレッダーにかけた意図について、「資本主義化したアートというものに対する批判だったと思う。オークションなどでアート作品、ただの絵画とかが数億~数百億円という金額で取引されることに対して、『アートってそういうものだっけ?』『投資対象になっていいのか』という意図での批判。1億5000万円の値が付いたものをシュレッダーでズタズタにするという、ユーモアをはらんだ行動だったのでは」との見方を示す中島さん。

一方、今回の件で「バンクシー」という名前が世界で知られたことには、「『痛快だ』『素晴らしい』という声も多いが、いくつか問題がある」と指摘。「数年前に仕掛けを作って作動させたといっているがそんなことが実際に可能なのか、サザビーズはセキュリティでその仕掛けがわからなかったのかという問題がある。逆に共謀していたのであれば、バンクシーの主張は180度違うものになるし、価値がないものになってしまう」と述べた。

さらに中島さんは、「反資本主義であるバンクシーが、資本主義を助長している部分があるのではないか」と問題提起。「シュレッダーでズタズタにするという事件があったゆえに、紙くずが2倍、3倍の値段になる可能性がある。そうなってしまうと、むしろ攻撃するというよりはアートの資本主義化に与してしまうジレンマがあるのではないか」と指摘した。


また、歴史学者で東京大学史料編纂所の本郷和人教授は文化財の面から言及。「文化財という美が、お金にまみれていろいろなところで売買される状況を見ると(バンクシーの)気持ちはわかる」とし、「運慶の作品がサザビーズに出て、数十億円の値段が付いたこともあった。お金と美がどういう関係になるのか、今回のように細断したことで作品の価値が上がる可能性があるというのは、非常に難しい問題」と述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

▶︎ バンクシーの1.5億円絵画、シュレッダーで細断の瞬間

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