『SUITS』は『東京ラブストーリー』への冒涜だ…織田と鈴木、ただのオジサン&オバサン


 今クールの連続テレビドラマ、“フジ月9”『SUITS』(フジテレビ系)の第1話が8日、放送された。

幸村・上杉法律事務所の弁護士、甲斐正午(織田裕二)は、勝つためなら違法スレスレの行為も厭わないヤリ手弁護士だが、事務所のシニアパートナーに昇格する条件として、所長の幸村チカ(鈴木保奈美)からアソシエイト弁護士を一人雇うことを約束させられる。仕事は一人でこなす主義である甲斐が渋々、ホテルで候補者の面接を行っていると、友人に騙されて麻薬取引のために現金がつまったカバンを運ぶフリーター・鈴木大貴(中島裕翔)が偶然、面接会場の部屋に紛れ込む。大貴は現金を運ぶ途中で、自身が警察のおとり捜査の対象になっていることを知り、その部屋に逃げ込んだのだった。

そこで甲斐は、実は鈴木は天才的な記憶力の持ち主であり、高校2年生のときに司法試験予備試験に合格するなど、完璧な法律知識を持っていることを知り、甲斐の顧問先で弁護士資格を持っているものの現在はIT企業社長である「鈴木大輔」になりすましをさせ、アソシエイト弁護士として雇うことを画策する。一方の大貴も、自分を育ててくれた祖母を介護施設に入所させるお金欲しさで、甲斐の申し出を受ける。

しかし、甲斐がある案件で証拠メールの捏造を行っていたことが、相手弁護士の木次谷にバレ、事務所をクビにかりかねない危機に陥る。これ以上、違法案件を抱えるわけにはいかなくなった甲斐は大貴を“解雇”するが、実は大貴が司法試験予備試験で木次谷の息子の“替え玉”を務めていたという情報を入手し、それをネタに木次谷をゆすり、被害主張を撤回させる。そして無事、大貴は事務所に雇われるところまでが放送された。

●『SUITS』と『東京ラブストーリー』

同ドラマは、1991年に放送され社会現象になるほど大ヒットしたフジ月9『東京ラブストーリー』以来、織田と鈴木が27年ぶりに共演するということで、放送前から注目を集めていた。

第1話を見て、かなりの期待外れだったというのが正直な感想である。フジ月9といえば、ここ数年は視聴率低迷が叫ばれていたが、前クールの『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』、そして前々クールの『コンフィデンスマンJP』が好評を得て、“月9復活”が叫ばれ始めていたが、ここへきて一気にトーンダウンしてしまったのが残念だ。

いったいどこが悪いのかを説明するのは難しいのだが、たとえば『絶対零度』や『コンフィデンスマンJP』が兼ね備えていた、視聴者をぐっと物語に集中させる緊迫感やスリリングなストーリー展開が、『SUITS』では微塵も感じられない。ところどこで妙な“間”が空いてしまい、そのたびに見ている側は白けてしまうのだ。

ドラマのつくりというか空気感が、昨年大コケした月9の『突然ですが、明日結婚します』や『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』と同じなのだ(そういえば、『突然ですが』に出演していた中村アンが画面に出るたびに、その大コケを視聴者に思い出させてしまうのも、なんかとっても悪いほうに影響しているような気がする)。

また、敏腕弁護士が、天才的な頭脳を持つフリーターを偽の弁護士に仕立て上げ、タッグを組んで暴れ回るという設定自体は非常に面白いと思うのだが、そのハチャメチャな設定がまったく生かされておらず、極めてフツーで中途半端、生煮え感が否めない。もっと振り幅を大きくして、『コンフィデンスマンJP』くらいハチャメチャな展開にすることもできただろうに、「えっ? これだけ?」と肩透かしをくらった気分に陥ってしまう。今後、もっと“ブッ飛んだ”ドラマになっていけるかが、カギを握っているのではないか(ちなみに『コンフィデンスマンJP』は一見するとハチャメチャなのだが、毎回ラストでしっかりと散らばった物語が整理整頓されて、見事なオチにつながっていたのだなと、改めて気付かされた。その『コンフィデンスマンJP』でブレイク(?)した小手伸也だが、今回『SUITS』では登場が多いのは嬉しいね)。

第1話でも、敵対する相手弁護士の息子が大貴が司法試験で替え玉を務めたことを知り、それによって甲斐が間一髪のところで救われるというオチも、ただの偶然頼みだし、そもそもメールの捏造が簡単にバレて窮地に立たされるなんて、弁護士としてはあまりにダメダメ過ぎて全然“敏腕”に見えないのも難点だろう(織田の演技がとにかく“クサい”のも気になるし)。

そして何より同ドラマの最大の欠点は、織田と鈴木が27年ぶりに共演するということで話題を呼んでいるにもかかわらず、“2人が共演する必然性”がまったく感じられないということだろう。『東京ラブストーリー』では、織田と鈴木は“お互いに愛し合いながらも一緒になれない男女”という役回りで、そのラブラブぶりやすれ違い、そして迎える破局に日本中の若者が一喜一憂したわけだが、今回は“ただの上司と部下”。せっかく共演させるのであれば、もう少し『東京ラブストーリー』の要素を使うなり、なんなりがあるのではないか。

そう、「なんで、共演させたの?」という大いなる疑問が、ドラマを見ている間ずっと頭から払拭できないのだ。また、『東京ラブストーリー』での若くて輝きまくっていた2人の印象が強烈に残っているだけに、余計に織田は“ただのオジサン”、鈴木も“ただのオバサン”に見えてしまうのも残酷だ……。

そもそも、ドラマの持つ熱量や脚本の巧妙さ、手に汗握る展開、心に響く一つひとつのセリフのやりとりの絶妙さなど、どれをとっても『SUITS』は『東京ラブストーリー』の足元にも及ばない。『東京ラブストーリー』への冒涜でしかないように感じる『SUITS』なのだが、せっかくの“カンチとリカの27年ぶりの共演”にもかかわらず視聴率が大コケしてしまったら、こんなに悲しいことはない。
(文=米倉奈津子/ライター)

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