画廊巡りビギナー向け『2018東美アートフェア』入門 美術商に聞いた、自分だけの“いいね”の見つけ方

SPICE

2018/10/9 17:17


一流の美術商が一堂に会す『2018東美アートフェア』が、2018年10月12日(金)~14日(日)まで開催される。テーマは、「110年の伝統と信頼」。創立111年の東京美術倶楽部から、今年は102軒の画廊がブースを構えるという。

開幕に先駆け、東京美術商協同組合理事の小山健二さん(渋谷区広尾「青龍堂」代表)と、東京美術商協同組合監事、東美アートフェア実行委員の櫻井美穂子さん(中央区銀座「村越画廊」代表)にお話を伺った。

「画廊って、なんだか謎が多くて入りづらい!」という相談から、『東美アートフェア』の楽しみ方まで、画廊巡りビギナーにぜひ読んでほしいインタビューをお届けする。

画廊・ギャラリーには、一見さんも入っていいの?



ーー初歩の初歩の質問となりますが、「画廊」と「ギャラリー」は同じですか? 美術館のような画廊、イベントスペースのようなギャラリーなど、さまざまなので、呼び名から判断できる役割の違いがあるのか、気になっていました。

小山:「ギャラリー」と言った方が、現代風でかっこいいかもしれませんが、「画廊」も「ギャラリー」も同じと考えていいと思います。美術館との違いをあげるならば、作品を買えるということ。中には、美術館で展示するクラスの美術品を販売する画廊もあります。

また、画廊には「貸し画廊」と「企画画廊」があるんです。貸し画廊は、存命の作家さんの個展などに使われることが多い。貸し画廊をイベントスペースとするならば、東京美術倶楽部の組合に入っているような古いものも扱う画廊は、セレクトショップのイメージに近いです。店主が店主の趣味で、良いと思い集めたものを扱っています。うちの画廊も櫻井さんの画廊も、こちらのタイプです。

ーーお客さんは、どのような方が多いのですか? 青山や銀座など、ガラス越しに気になる美術品が見えても、正直なかなか入りにくいです。

櫻井:たしかに看板だけだと、そこに画商がいて商売をしている画廊なのか、何を扱っている店なのかも、わかりにくいかもしれないですよね。実際に、お客さんは一見さんよりも常連さんが中心です。昔からお付き合いがある方も多く、3代目、4代目も珍しくありません。

小山:これはなにも、新規の方を遠ざけているわけではありません。美術商の仕事は、良いものをみつけ、買い取り、良いものをお客さんに売ること。昔からそれをしているので、歴史のあるお宅からは、良い美術品が出てくる。何世代にもわたるお付き合いのある常連さんがお客さんの中心になるのは、良い美術品を見つけるためでもあるんです。

アートフェアは、気の合う画廊と出会う場所



ーー新規でも良いお客さんには、なれますか?

小山・櫻井:はい。……(ほぼ同時に)買っていただければ(笑)。

ーーお店ですもの、そうですよね(笑)。

櫻井:とはいえ、「最初の一軒に入りにくい」「どこの画廊が自分に合うかわからない」と感じる方もいらっしゃいますよね。そのような初心者のための玄関口として、『東美アートフェア』があるんです。

ーー『東美アートフェア』には、今年は102軒の画廊が出展されると伺いました。一軒の画廊におじゃまする勇気がないのに、102軒も結集されると、ビギナーにはますます扉が重いような気がします。

小山:たしかに伝統のあるお店が多いです。会場には、古美術から近現代、茶道具から刀剣まで、多彩なジャンルのエキスパートがそろいます。でも、会場はオープンな状態のブース展示。たくさんの画廊の雰囲気を、気軽にのぞくことができるんです。

櫻井:それぞれの画廊が個性を全面に出してブースを構えますし、102軒もあれば、「この店いいな」「自分とセンスが合うな」という画廊が見つかるはず。

小山:その中から、後日「アートフェアで見たのですが……」と画廊を訪ねてくださる方がいたら、うれしいですね!

ーー『東美アートフェア』は初心者にも開かれたイベントだったのですね。会場でのマナーや注意点はありますか?

小山:基本的なことですが、美術品はオープンな状態で展示されています。ぶつかったりしないようにだけ、注意をしていただければ問題ありません。会場にはクロークがありますので、お手荷物などは預けていただければ安心です。

楽しみ方のアドバイスとしては、全ブースをはじめから真剣に見るのではなく、気楽に見ること。102軒もあると、後半は疲れてしまいます。アートフェアの会場についたら、まずはサーッと見て、今度は反対回りで見てみるのもおすすめです。人間って、右回りと左回りで違って見えるといいますから。中でも「これだ」と感じたものは、じっくりと真剣に観る。気になったことは、美術商に質問をしてみる。

櫻井:『東美アートフェア』にブースを構える美術商さんは、自分の専門分野については本当によくご存知です。逆に、専門外のことについては、「それなら〇〇画廊さんが詳しいよ」などと教えてくれるはずです。どんな質問にも誠実に答えてくれるようならば、その画廊とのお付き合いが始まるきっかけにもなるでしょう。その意味では、美術商の側が試される場でもあります。

「これ!」という美術品に出会ったら



ーーもしアートフェアで、初めて「ほしい!」と思える美術品に出会えた時は、どのような基準で購入を決めると良いでしょうか。

小山:初めて買う時は、非常にむずかしいですよね。『東美アートフェア』では、数万円で購入できるものから出品されているので、予算が合うならば、まず気になることはなんでも質問する。あとは「かわいいな」「かっこいいな」という基準でいいと思います。「自分の家のあそこに置こう」などのイメージがわくものも、いいですね。

櫻井:予算に関して言えば、手持ちの予算で買えるもの。クレジットカードの分割払いに応じてくれるお店もありますが、初めての美術品購入ならば、まずは、すぐに支払える範囲で購入されるのが良いと思います。あとはキャンセルをしないこと。「売約済み」となった後は、他にいいなと思った方に、諦めていただいているわけですから。

ーーそこは基本的なマナーとして、守りたいですね。

本物を見て、自分の“いいね”と出会う場所


ーー今年の『東美アートフェア』で、おすすめのブースはありますか?

櫻井:それもむずかしい質問ですね。何がいいかは、見る方によって違いますから。

小山:みんながいいというものは、たしかにわかりやすいです。でも、たとえば一昔前まで、誰も見向きもしなかった作家をマスコミが一度「いい」と言ったら、途端にみんながこぞって「いい」と言う。そのくらい、人って意外と見る目がないんですよね。

そんな時代だからこそ、自分の感性は自分で養うことが大事。そのためには、誰かのおすすめを見るのではなく、本物をたくさん見て、自分の目で、自分でいいと思えるものを見つける作業が必要だと思うんです。

櫻井:『東美アートフェア』に参加する画廊は、東京美術商協同組合の組合員です。このアートフェアに出品されるものは、一定のグレードが保証されているんじゃないでしょうか。本物があり、その横に値札もついています。

小山:「これ、いいな」と思ったものを見つけて、その値段に「こんなにするのか! 俺もなかなか見る目があるな!」と(笑)。

ーーそのような楽しみ方もありますね! 感性は人それぞれ、となると、友だちやご夫婦で来るものもおもしろいかもしれませんね。

小山:男性と女性で見方がだいぶ違いますから、面白いでしょうね。コレクターって、世界的に見ても男性の数の方が圧倒的に多いんです。男性は「これとこれを持っているから、次はこれがほしい」とピースを埋めるような集め方をする。一方、女性は感性でパッと惚れ込んでパッと買う。本質を見抜いているな、よくわかってるな、と思わされることがしばしばあります。

櫻井:たしかに、「パン!」とかっこよく買われるのは、女性の方が多いですね。ただ。女性の方が集めたものを全部並べて見直すと、意外とコレクションに脈絡がなかったりもして(笑)。

小山:わかります(一同、笑)。でもそれでいいんです。皆がいいというものではなく、自分の「いいな」を見つけていただければ。そして新しいアートだけでなく、古美術の良さにも触れていただければ。

櫻井:それにはまず、作品と向き合い対話していただく。『東美アートフェア』が、その機会になればうれしいですね。


取材・文=塚田史香 撮影=SPICE編集部

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