HAMIDASYSTEMだけの”物語”がある唯一無二のワンマンに圧倒【写真17枚】

EXweb

2018/10/9 17:00



2018年9月29日、東京キネマ倶楽部でHAMIDASYSTEMのセカンドワンマンライブ「歪んだ鉛筆は誰かに折られないために」が開催された。「メロディック・エレクトロニカ」と称したエレクトロニカやポストロックを基調とした、現在のアイドルライブ的な“沸き”からは遠く離れたサウンドを武器に、4人の、時に鋭く、時に情感たっぷりに見せるパフォーマンスは見る者を圧倒する。

もはやどんな音楽があっても驚かない今のアイドル界だが、デビューわずか2年にして作り上げた世界の完成度は有数のもの。元グランドキャバレーである東京キネマ倶楽部のクラシックな空気と相まってどんなステージを見せるかを楽しみに、台風が間近なのにも関わらず多くのファンが訪れた。

MITSUI AMEBA、YOSHIDA SODA、HASEGAWA BEET、KOYAMA FLAMEの4人がステージに登場し、ワンマンの幕を開ける一曲目は『S』。その激しくドラマティックでありつつ繊細なサウンドと、4人が絡み合う緊張感あるダンス。それに加えてこの日はライティングがメンバーの魅力を最大限に引き上げる。続けて浮遊感ある前半から宇宙から落下していくような疾走感が心地よい『焦がれてプラネット』へ。

ライブはMCどころかあいさつすら挟むことなく、『蝉の声』『夢うつつにキスをして』『恋のさきっぽ』とミニアルバム『DERO X』の曲を中心に披露されていく。先に書いたとおりアイドルソングらしい騒げる曲ではないが、その4人の眼差しから指先まで芯の通った緊張感とともに見せつけられるダンスと歌声は、まるでバンドのジャムセッションのよう。

『抜けない根無し草』が終わるとメンバーは一旦ステージから消え、制服に衣装替えして再びステージに戻ってきた。今回のワンマン「歪んだ鉛筆は誰かに折られないために」は、HAMIDASYSTEMが「物語プロジェクト」と称して4月から紡いできた、楽曲・ライブ・CD・MV、そして小説を通して作り上げてきた集大成。小説ではミツイ・ヨシダ・ハセガワ・コヤマという女子高生4人があるアイドルグループのライブを見終えたところで終わる。キネマ倶楽部のステージの上で、小説とライブの世界が重なり合った。

『夜の箱庭』『インビジブル・ムービー』『水槽標本』『舞台に溶かされて』とMV・小説にそれぞれのメンバーの世界が描かれた楽曲で踊る制服の4人。アイドルとしては“ベタ”ともいえる制服だが、それだけに前半のアイドルとして完成していたHAMIDASYSTEMとは違った、日常と憧れの狭間のような存在に見えた。それは小説の中に描かれた、日常から一歩を踏み出した4人の姿とも重なる。

最後に、繰り返される「こっちじゃない」のフレーズが印象的な、今回のテーマソングともいえるこの日初披露の『行方』を歌い終え、新曲『物語のおしまいに』がゆったりと流れる中、ひとりずつステージに向けて頭を下げる4人。開演から約1時間20分、ここでメンバーは初めて素の笑顔をこぼした。

「キネマ倶楽部で今の曲をできるのがうれしくて、ずっと楽しみだったんですけど思った通りできるか不安で……曲の世界感が伝わったらよかったです」(AMEBA)

「今日が来るまでいろんなことを考えてきて、初めて来てくれる人にもすごいって思わせたいし、いつも来てくれてる人には成長した姿を見せたくて、いろんな事考えてワガママとかも言っちゃったんですけど、自分がしたいことは全部できた」(SODA)

「(直前で加入した)前回のワンマンは途中参加感が自分の中にあったんですけど、今回は演出とか、サブステージを使ったりとか、いろんなことをみんなで意見出し合いながら作ってて。ずっとボイトレの先生に『自信もってやれば大丈夫』って言われてきたんですが、皆の顔みたら安心してできました」(FLAME)

「私『ごめんなさい』と『ありがとう』が昔から言えない子どもだったんですけど、ワンマン練習期間で人に感謝できるようになりました。成長した!」(BEET)

アンコールでは本編の最初にやった『S』『焦がれてプラネット』を衣装替えしてもう一度披露。小説で描かれた制服姿の彼女たちのステージを挟み込むことで、再びアイドルの彼女たちとしてのタイムラインに戻ったのか。それぞれの想像に委ねられるところもまた楽しい。

ワンマンライブというと時間が長かったり曲が多かったり、初披露や発表事を売りにしがちで、それはそれで満足感あるものがある。しかしそれらよりもっと大きな“物語”をHAMIDASYSTEMはワンマンで描ききった。

(取材・文=大坪ケムタ、写真=須藤しぐま)

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