「一つの強みに頼るだけでは淘汰される時代…」実力派音大出身ユニット【NormCore】トレンドに自らの感性をあわせていく<前編>

テレビアニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマとなった曲「カウントダウン」(※)は、初回オンエア直後から大きな反響を獲得。Yahoo! 検索トレンドで1位になり、ツイッターでも抜群の歌唱力や演奏力が大きな話題になった。シンフォニックロックユニットNormCore(ノームコア)は、メンバー全員が音大出身。ボーカルのFümi、ヴァイオリンのTatsu、クラシックギターのNatsuの3人からなる異色のユニットだ。

向かって左:ヴァイオリンのTatsu、ボーカルのFümi、クラシックギターのNatsu

芸能ではなく、芸術というくくりで新しい音楽を

――ボーカルのFümiさんはYouTubeでの投稿が話題になり、2015年にメジャーデビューされていたわけですが、今回3人で新たにユニットを組まれた理由とは?

Fümi:ミュージシャンだからと渋谷で路上ライブをやっても聴いてもらえるわけでもなく、動画を投稿したほうが賢い選択、という時代ですよね。特技があれば、動画コンテンツを配信してユーザーを獲得することができる。自分の場合、人より優れているのは歌だと思ったので、それでチャレンジをしてみたわけです。

海外でライブをやったり、イベントMCをやったり、コスプレをやったり、マルチに芸能のいろんな仕事をさせてもらっていたんですが、せっかく音大も出ていたので、芸能ではなく、芸術というくくりで新しい音楽を始められないか、と思って2人に声をかけて始めたのが、今回のプロジェクトです。

――TatsuさんとNatsuさんは、東京音楽大学でFümiさんの後輩だったんですね?

Tatsu:はい、電話がかかってきて、一緒にバンドを組まないか、と。大学1年のときは、もうFümiくんは卒業していましたけど、3人で演奏したり、遊んだりすることもありました。その延長なのかな、と。メジャーデビューしたFümiくんのサポートメンバーをしていた経験もあったんですが、今度は一緒に、と言われたので、はい、と。

Fümi:なんだか、嫌そうやん(笑)。

Tatsu:いやいや、そんなことはないですよ(笑)。先輩ですけど、仲良しでしたし(笑)。

Natsu:私は去年の夏に急に電話がかかってきたんです。LINE電話だったんですけど、違う名前で登録されていたので、最初は誰だかわからなくて(笑)。この3人なら楽しくやれるだろうと思いました。


――TatsuさんとNatsuさんは音大を卒業された後、どうしておられたんですか?

Tatsu:ソロのヴァイオリニストとして活動していました。演奏の依頼をいただいて動いたり、自分でプロデュースをしたり。

Natsu:私も基本、一人で活動していました。クラシックギターは独奏楽器ですから、自分で仕事を取って来たり、大学時代の同級生や先輩に声をかけてもらったり。

――先輩のFümiさんがメジャーデビューされたのは、驚かれたのでは?

Tatsu:デビューはうれしかったですね。最初のお披露目イベントのとき、ストリングスに入れてもらっているんです。

Natsu:私はそれを眺めていたので、ああ、2人頑張ってるなぁ、と思っていました。

Fümi:なんか、どこかのオバチャンみたいなコメントだぞ(笑)。

Natsu:いろいろ苦労して、ここまで来てるんだな、といろいろ聞いたりしていたので。それがあってのFümiくんの活躍は、すごいな、と。

一番大事だったのは、一緒に仕事がやれる人間性

――どんな苦労があったんですか。

Fümi:みなさん社会人になって、悩んで戦っていくじゃないですか。それと同じです。よく歌えていいなぁ、曲が作れていいなぁ、なんて言われますが、僕からすれば、例えば美容師さんは髪が切れていいなぁ、と思うわけです。どんな職業もやっぱり悩みます。

一人でやっていたときに一番大変だったのは、やりたいこととやるべきことをどうバランスさせるか、でした。そのときどきにタイミングがあって、ここはこれをやらないといけない、というときがある。でも、そうするとやりたいことができなくて、フラストレーションがたまったりする。心と相談しながら、舵を切っていましたが、そのバランスをとっていくのが、この一番のポイントだと思いました。

しかも、銀座に大きなラーメン屋を作って待っているのではなく、おいしいカップラーメンを作って全国のコンビニで流通させるのが、今のビジネスだと思っていました。いかに多くの人に見てもらうか。依頼やニーズにどう応えていくか、が極めて重要ですから。

――そして今度はユニットですが、どうして3人で新しいユニットを?

Fümi:なんなんでしょうね(笑)。

――しかも、ヴァイオリンとクラシックギターって、見たことのない構成です。

Fümi:僕は2人とバンドがやりたかっただけなんです。一番大事だったのは、パーソナリティであり、一緒に仕事がやれる人間性です。2人は人格者ですから。

Tatsu:いえいえ、単純にセッションをしても、普通にしゃべっていても、ストレスフリーなんです。先輩ですけど、意見言わせてもらえますし。僕自身がファンの一人でもあるので、一緒に音楽作れるのが楽しい。

Fümi:このあいだ、帰りのタクシーで「ぶん殴りたい」って言ってなかった?

Tatsu:いやいや、そんな言い方はしてないですよ(笑)。もうちょっと優しい言い方で(笑)。

Natsu:私はこの3人なら、自分らしさが自然に出せると思いました。実はそれまでユニットって、ほとんどやったことがなかったんです。ここから何が生まれるか、不安もありましたが、このメンバーなら何かできるんじゃないかという予感がありました。

Fümi:なので、たまたま楽器がヴァイオリンとクラシックギターだったというだけで。

Tatsu:クラシックギターがバンドにいるって、世界初じゃない。

Fümi:実はユニットを組むときにも、どうするか明確にありませんでした。2人とも何でもできるし。これから音楽はジャンルがなくなっていく。その意味では大事なのは、いかに心地良く、ストレスなく一緒にやれる人を選ぶか、でした。そのほうが生産性も上がる。

何も考えなくていいくらい、夢中になれるのは素晴らしい

――そもそもどうして音楽の道に進んだんですか?

Fümi:歌とかPCでの作曲で生きていきたいと高校時代から思っていました。ただ、声は出るんですが、制御できていなくて。大学の先生とポップスのボイストレーニングの先生の2人に教わって確立していきました。最初はバリトンだったんですが、大学の先生にテノールの曲を勧められたらいけることに気づいて、カウンターテナーもやって。

Tatsu:母が地元で、ピアノや歌やフルートを教えていました。小学校5年のときに連れられていった音楽教室で、年上の人が楽しそうにヴァイオリンを弾いていたのがきっかけです。基本、楽しくがコンセプトなので、クラシックに限らずポップスでも何でもやれるマルチプレーヤーをイメージしていました。

Natsu:両親がギターが好きで、11歳のときにギター教室でクラシックギターに出会いました。ギターって、コードを弾いて歌うものだと思っていたら、クラシックギターではメロディも伴奏もする。楽しそうでした。以来、いろんな人が応援してくれて。クラシックギターはマイナーな楽器なので、これを広めていきたい気持ちも強いです。

――ただ、音楽で食べて行く、ということ自体、大変ですよね?

Fümi:音楽大学を出て、音楽の道に進む人は1割くらいです。成功できる人、ということになると、0.3%とか0.4%になってしまうと思います。

Tatsu:卒業したら音楽の世界が紹介されるわけではないですから、音楽で生きていこうとしたら、自分で行動が必要ですよね。在学中から人のつながりを作ったり。

Natsu:つながり大事ですよね。4年間が就活みたいだった気がします。

Tatsu:得意なことと好きなことが一致するのが理想ですが、楽しいから続けていける、というのもあります。聞き手に喜んでもらえることもそうです。

Natsu:それは一番の楽しみ。

Tatsu:続けるのも才能だと思うんです。芽が出ないかもしれないけど。それだけ長くやっているのは尊敬しますよね。

Natsu:私はそういうことは考えてこなかったかも(笑)。

Fümi:何も考えなくていいくらい、夢中になれるものがあるのは素晴らしいと思う。


――Fümiさんは一足先にソロデビューを果たされていますが、どんなことを意識されていたのでしょうか?

Fümi:僕はガジェット含め最先端のものが好きなんです。最先端でないと感性が鈍っていくから。そして最も豊かな感性を持っていて、カルチャーを作っているのは若い人たちです(そこからカタチを変え20代、30代以上に派生していく)。どんな時代でもそうなのではないでしょうか。だから、若い人のマインドがわかる大人でいたいんです。彼らがやっていることを体験しておきたい。それはライフテーマですね。間違っても昔の武勇伝を語るようにはなりたくない。今は、トレンドを作り出す時代からトレンドに合わせていく時代になったと「持論」ですが、思ってます。「これが正解」と導き出せる時代ではなくなった、難しい時です。

 

(※)9月末までの「名探偵コナン」オープニング曲「カウントダウン」を見逃してしまった方は、
こちら→ 圧巻のパフォーマンスは必見です!
後編では「名探偵コナン」のオープニング曲に決定したときの率直な気落ちや彼ら流の仕事の質を高める秘策、今後の展望についてお伺いします。


文:上阪 徹 写真:平山 諭

編集:丸山香奈枝

 



 

あなたにおすすめ